表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/90

第五章 scene4 光の会議 王国の剣

老将軍の言葉が落ちた時、円卓の全員が無言で理解した。


これはもう、ただの“内部問題”ではない。


王弟は静かに席へ戻り、深く腰掛ける。

背もたれに体を預けてから――


強く、短く、机を叩いた。

音が響く。

「――決めよう」

その声が“開始の合図”だった。


 


宰相補佐官が立ち、淡々と声を上げる。

「現在確認されている事象を整理する」


書類が配られ、視線が走る。


・複数領地での“効率化”による急速な統治改変

・財務改善の裏で増える“無表情な民衆”

・医療切り捨て

・不自然に統制された兵士たち

・イリス派の貴族ネットワークの拡大

・そして――洗脳薬の存在


老薬学官が手を挙げる。


「報告にあった薬物だが、“記憶を消す薬”ではない。

“感情を鈍くする薬”だ」


マリアナを見る。


「君の母上の症状で説明がつく」


円卓にざわめき。


エリーゼ。

ルミナ。

伯爵。


それはつまり誰でも壊され得る、ということだった。


公爵が重く言う。


「放置すれば、

“考えない国民”

“従うだけの兵”

“疑問を持たない貴族”

が生まれる」


「つまり――」


王弟の言葉が鋭く空気を切る。


「“国が死ぬ”。」


沈黙。


言葉は誇張ではなかった。


侯爵が立つ。


「私見ではあるが対応はこうあるべきだ」


円卓が彼を見る。

マリアナは、ただ黙って聞いた。


 

「ルミナ夫人、エリーゼ嬢の行動は王命“以前”に動いているが」


王弟が静かに笑う。

「問題ない。“結果が王国を救うなら”それは――」


“先んじた忠義だ”


この瞬間。

伯爵奪還作戦は“非公式”から“国家公認の裏任務”に昇格した。


王弟の声が低く冷たい。


「イリスを“王直轄監査対象”とする」


文官が一斉にペンを走らせる。


「彼女はただの未亡人ではない。

組織を作り、思想で縛り、薬で心を奪った」


老将軍が続けた。

「“国家敵性思想指導者”と認定してよかろう」


この言葉は暗に “いつでも討てる相手” へと格付けされたことを意味した。


 

公爵が言う。


「レーヴァントの……灯火ともしびの噂、聞いている」


夫人。

子爵。

護衛副隊長。

領民。


誰もが消えぬ灯を守る抵抗の火。

「守らねばならん」

国がそれを正式に認識した瞬間。


ただの民の抵抗は“国家の希望” に変わった。


 

会議室の視線が王弟へ集まる。


王弟ははっきり言った。

「兄王は今、政務と国境問題で動けない。」


マリアナを見る。


「私が、君の剣になろう。そして、“王への道”は必ず開く。」


文官が確認する。

「議題まとめます」


✔ 伯爵奪還作戦=黙認どころか保護対象

✔ イリス=監査+敵性思想認定

✔ レーヴァント領支援=極秘開始

✔ 王弟主導で王族レベルの行動へ


最後に老将軍が言う。


「ならば決めは一つだ」


王弟を見る。


王弟は目を閉じ、そして宣言した。


 

「――王国は、“闇会議”への対抗を正式表明する」


灯火が揺れる。

その炎が、大きく見えた。


マリアナは、そっと拳を握る。


(ここまで来た……

でも――まだ、勝ってない)


王弟が微笑む。


「少女。

今日から君は――」



“ただの被害者ではない”

“王国の同志だ”


 侯爵が小さく笑う。

「これで、もう後戻りはできなくなったね」


マリアナも笑った。


ほんの少しだけ。


「最初から、戻るつもりなんてなかったわ」


こうして。


――王国は、正式に“戦う側”へ踏み出した。


光の会議は終わらない。

今まさに、始まったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ