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第四章 scene6 アイリス初めての選択

伯爵奪還作戦の気配は、アイリスの耳にも届いた。

屋敷の情報網は、母イリスによって完璧に掌握されている。

つまり普通なら絶対に彼女が気づくはず。

けれど、その途中に必ず通る人物がいた。


情報整理を任され、各情報の「価値」を仕分ける役目。


それが――アイリス。


夜。

静かな書斎。

机の上に置かれた紙。


「伯爵、奪還計画の動きあり」


指先が止まる。

胸が――静かに波打つ。


(母様に渡せば、計画は潰される)


分かっている。

これは裏切りになる。


けれど同時に

(……あの人は、戻らなければいけない)


伯爵は母の「玩具」でも、政治の「駒」でもない。


“誰かの家族”だ。

アイリスは唇を噛んだ。

(わたしの父だわ)


そこへノック。

「アイリス様、報告資料の分類は……」


家臣が入ってくる。

アイリスは振り返り、微笑む。

完璧な、いつもの笑顔で。


「不要資料として破棄を。

価値判定B以下のものは、母様へは回さなくてよろしいわ」


「かしこまりました」

書類が手から離れる瞬間。

胸の鼓動が一瞬跳ねる。


(……これでいいの?)


罪悪感。

恐怖。

そして――小さな解放感。


書類が火にくべられる。

◆ scene6 補足


― 「母には知らせない」


アイリス、最初の“選択”


伯爵奪還作戦の気配は、すぐにアイリスの耳にも届いた。


屋敷の情報網は、母イリスによって完璧に掌握されている。

つまり――

普通なら絶対に彼女が気づくはず。


けれど、その途中に必ず通る人物がいた。


情報整理を任され、

各情報の「価値」を仕分ける役目。


それが――アイリス。



夜。

静かな書斎。

机の上に置かれた紙。


「伯爵、奪還計画の動きあり」


指先が止まる。


胸が――静かに波打つ。


(母様に渡せば、計画は潰される)


分かっている。

これは裏切りになる。


けれど同時に――


(……あの人は、戻らなければいけない)


伯爵は母の「玩具」でも。

政治の「駒」でもない。


“誰かの家族”だ。


アイリスは唇を噛んだ。



そこへノック。


「アイリス様、報告資料の分類は……」


家臣が入ってくる。


アイリスは振り返り、微笑む。


完璧な、いつもの笑顔で。


「不要資料として破棄を。

価値判定B以下のものは――母様へは回さなくてよろしいわ」


「かしこまりました」


書類が手から離れる瞬間。


胸の鼓動が一瞬跳ねる。


(……これでいいの?)


罪悪感。

恐怖。

そして――**


小さな解放感。**



書類が火にくべられる。

紙が燃える音だけが響く。


それは、母と娘の関係に最初に刻まれた “ひび割れ”。



そしてアイリスは静かに呟く。


「……ごめんなさい、母様。

でも――“あなたの正しさ”だけが、世界じゃないの」


誰にも聞こえない声。


けれど。


確かに、娘は母の神殿から一歩外へ出た紙が燃える音だけが響く。


それは、母と娘の関係に最初に刻まれた “ひび割れ”。


そしてアイリスは静かに呟く。


「……ごめんなさい、母様。

でも“あなたの正しさ”だけが、世界じゃないの。あなたの唯一の娘は、もうあなたに支配されないわ」


誰にも聞こえない声。

けれど。


確かに、娘は母の神殿から一歩外へ出た

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