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9話「鳴り響く救いの鐘」

 戌神ころね、251秒間の能力発動。対する常闇トワ、自身の魔力が尽きる。

 常闇トワは星街すいせいと違い、外部から補充した力で自身の体を傷つけることはない。幻想種の持つ膨大な魔力でフレームを作り補充した魔力が暴れないよう制御できるためである。しかし今回の戦闘、最短チャージで魔弾を2度使用。闇と練り合わせるために多くの魔力を消費。さらに熟練の獣人種2人を捌くために魔力強化を常時全開にしていた。さらに致命傷を2度再生している。常闇トワの再生は魔力強化による自己治癒力強化と自身の魔力による体力の補填の合わせ技。魔力消費の激しさは回復系能力者の比ではない。

 ころねが殴りかかるもトワが寸前のところで避ける。その衝撃で壁が粉々になる。

「ッ……!」

 ころねは瓦礫を手に取りトワに向かって投げつける。

(ガン)!!!」

 トワが投げられた瓦礫を撃ち落とそうとするも指先から魔力が消え攻撃が直撃する。

 魔力が尽き、『闇』の制御はもうできない。つまり通常の戦闘も不可能。他の権能にもこの状態で戦闘に使えるものでは無い。

 『万策尽きる(打つ手なし)

(……負ける?……負け、負けかぁ……そっか……)

  

――――――――――――――

 

 久しぶりかも……昔は何度も負けてばっかだったのに。

 いつからだっけ『普通に勝てる』ようになったのは

 いつからだったかな、戦いの途中に相手に諦められるようになったのは

「すごい」「やっぱ勝てない」「強すぎ」「流石だなぁ」

 ――――――『幻想種』は――――――

 いつからかな、トワじゃなくて『幻想種』って呼ばれるようになったのは


―――――――――――――――


トワはたくさんの仲間たちの顔を思い出す。


(……あーごめん、そんなやつばっかりでもなかったか。ていうか…………そういえばトワ、お前らみたいな友達が欲しいんだった)


 その瞬間トワから大量の闇の魔力が溢れ出す。

「あぁぁぁー……!!!」

(本気でやるから楽しい……本気でやるから負けたくない)

「悔しい悔しい悔しい……!負けたくねぇ〜……!!負けねぇぞ!!『ころさん』!『おかゆちゃん』!」

 それは記憶の中、唐突に思い出した星街すいせいの戦闘を真似した『アドリブ(咄嗟の発想)』。星街すいせいの能力長時間使用及びブレイクチェーンは『はじめから制御できていない』

(痛い……痛い痛いクッッソ痛てぇ……!!エネルギー量とかだけで見たらすいちゃんはトワより弱かった。それでも『怖い』『強い』って思わされるのは……多分、『コレ』だ)

 トワところね両者は睨み合う。

 本気の『負けたくない(負けず嫌い)

 制御できない力を無理やり使うため魔力強化のように体に溜め流す使い方、故に星街すいせいは自身の能力で体を傷つける。戌神ころねの能力時間が終わるか、常闇トワの身体が限界を迎えるか。『戌刻亥刻(いつつがとき)』持続時間残り60秒、戌神ころねが勝負をかける。勝負の瀬戸際ギアが上がった戌神ころねに対し、常闇トワはパワーで大きく劣るためその分を機動力でカバーする。この状況における条件は五分、ここから25秒後頂上決戦は幕を閉じる。

 ころねが幾度と攻撃を繰り返すもトワが受け流していく。一瞬の隙を見てころねがトワを叩きつける。すかさずトワに攻撃を畳み掛けようとする。その瞬間、戌神ころねの『野生共鳴』が途切れる。体勢を崩したころねがトワの攻撃をまともに受ける。意図せず野生共鳴が中断されるということは単純に魔力が半減する上、急に視力や聴力が半分になるようなもの。その衝撃によって生まれた隙をトワは逃さなかった。視界共有が途切れる前猫又おかゆの視界に映った最後の映像、トワが被っていた帽子と酷似した式神だった。

 攻撃を受けたころねはその場で倒れ込む。

「……最初に被ってた帽子……帽子を使った式神……?」

「ま、そんなことかな……見えたんだ。どっちかっていうと式神が帽子になってるんだけど」

 その場にトワの式神が現れる。

「おかえり『ビビ』」

 ビビの上にはおかゆが乗せられていた。

「ごめーん、ころさーん……」

「おがゆう!?」

「ビビに戦闘能力はないんだけどね。でもさっきのおかゆちゃんはめっちゃ集中して、ギリギリ共鳴を使ってた。動けないおかゆちゃんの集中をちょっと切らすくらいはビビにもできるよ」

「そういうこと、ボクは今にも寝ちゃいそうだけどころさんは…………ダメそーだねぇ……負け、かぁ」

「うん……」


「ねぇトワちゃん、脱落前に聞かせてよ」

「ん?」

「なんでこの大会に参加したの?」

「……トワは」

(なんとなく自信があるから……だったけどもう違う)

「この大会でトワと戦えるやつを探して友達になりたいから!」

 おかゆは予想しない回答に少し驚くもふと笑顔になる。

「トワちゃん、日本最高峰に友達作りに来たの?」

「そう!誰がなんと言おーとそう!」

「あははっ、そっかぁ。じゃあ……そーだね、ボクところさんももう友達だね。ころさんも楽しかったでしょ?」

「うん!」

 トワはおかゆの言葉にきょとんとする。

「……あれ?嫌?トワちゃんは楽しくなかった?」

 するとトワが微笑む。

「そりゃあ……最高よ」


 10月12日 10:51

 戌神ころね

 猫又おかゆ 脱落


「ふー……もう歩くのもしんどいわ、ビビ帰りよろし……」

 その瞬間どこからかトワが攻撃を受ける。

「…………!!!」

 トワの前に3人の参加者(プレイヤー)が現れる。

「ごめんね幻想種さん、本当はこんな水を差す真似したくないんだけどね。でもあんな派手なの見せられたら今倒すしかないでしょ?」

(漁夫……忘れてた……!)

 トワが冷や汗を垂らす。

「そりゃ……ごもっとも……!」

「そんじゃあ恨まんで……」

 その時、辺りに鐘の音が鳴り響く。

「ん?なんや?……鐘の音?」

「どこから………………空?」

 トワは眉間にシワが寄る。

「こんな……時に…………!」

 割れる空    裂ける暗闇    鳴り響く鐘の音


 降臨   『3人目の幻想種』


――――――――――――――――


「……これが悪魔の幻想種、正直期待外れだな」

「常闇トワ、北高校3年異能部……実績はともかく強さ故に能力を活かせていないって言った感じかな」

2人の男がholoRoyalのライブ中継をスマホで見ていた。

「あぁ……自分の限界を定めてる節があるな。それより……」

「『さくらみこ』だね?」

「夏色まつりとの戦闘で『花月ノ夢』の解釈を広げた。案外、いい表情()が見れそうだな……ラプラス」

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