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5話「祭囃子に踊る少女」

 戦闘区域都市エリア

 13:40(星街サイド決着の数分前)

 

 みこちとまつりが攻防を繰り返していた。

「おっと」

 まつりが手をかざしスキルを発動する。

「太鼓!?」

 大太鼓が現れるとみこちに勢いよく突進する。みこちは咄嗟にバリアで防ぐ。

「〜〜〜〜〜っっ!!」

 すかさずまつりが掌印を結ぶと炎が現れみこちを襲う。

「あっちゅ!!」

 しかしみこちは炎をバリアで防いでいた。

「熱い!……っての!!」

 そう言いながらみこちは飛斬(かまいたち)を放つ。まつりはそれを軽くあしらう。

「今のまで防いじゃうか、やるじゃん。名前はなんていうの?」

 まつりは余裕そうな表情で名前を聞く。

「さくらみこ!」

(……なんだろ、この人の能力。さっきから火が飛んできたり何か飛んできたり……なんの能力かわかんねー!)

「さくらみこ、みこ…………あ、みこ→みこちゃん→『みこち』か!?」

 みこちが考察している時、まつりは名前について予想する。

(そーいうの予想すんの苦手なのにぃ〜……!あと基礎体術もすごいし今まで戦った人と別格!)

 みこちが冷や汗を流す。

「夏色まつりっていうんだ、よろしくみこち」

 名前を知ったまつりは早速『みこち』呼びをする。

「……まつり……ちゃん」

「はい!」

 みこちは戸惑いながらも名前で呼ぶと、まつりは元気よく返事する。

「……なんか、余裕だにぇ」

「ん?そーかな?そーかも。その能力、『相伝スキル』でしょ」

「……!知ってんの!?」

「やっぱり」

 みこちはまつりの口から意外な単語が出てきて驚く。

「どこの神社かまでは知らないけどね。神様の力を借りる『固有(ユニーク)スキル』、強い能力だね。でも……だからかな?戦い方が大雑把で分かり易い」

「にぇ!?」

 まつりに痛いところを突かれたみこちはショックを受ける。

「能力の強さは『才能(どんなスキルか)』×『発想(どんな使い方か)』が5割と5割、異能修行の鉄則だよ」

 そういうとまつりはいきなりみこちに殴りかかる。みこちは咄嗟に避ける。

「あぶっ!」

「例えば!」

 まつりはみこちに蹴りかかるとバリアで防がれる。すると、みこちは頭上から何かが降ってきて攻撃を受ける。

「い゛っ!?」

(また……!)

「複数方向同時の攻撃で簡単に崩せる。その上」

 みこちが反撃するもまつりは簡単に防ぐ。

「攻撃はただの体術頼りだから怖くない」

 まつりはそう言いスキルを発動する。

「うぉわ!?」

(水!?)

「魔力の身体強化は頑張ってるみたいだけど、それだけじゃ格上相手はちょーっとキツいよ?それ以上の魔力でガードされて終わりだからね」

 みこちはその場で倒れ込む。

「…………!……??んえ、あれ?なんかこの水……」

 みこちがまつりから受けた水に違和感を覚える。

「気づいた?」

「甘い!あとベタベタするにぇ!」

「でしょ♡水じゃなくて正確には『ラムネ』ね」

「ラムネ?なんで?」

 みこちが体勢を整える。

「……別にまつりはね『なんでも出せる能力』なんか持ってる訳じゃないんだよ。『固有(ユニーク)スキル』は持ってるけどみこちみたいに強いやつじゃないの」

 まつりは淡々と語り始める。

「『祭礼召法(さいれいしょうほう)』……特殊な祭具を呼び出す能力。祭具っていうのは昔のお祭りで使われるアイテムのことでさ、なーんかめちゃくちゃすごい物らしいんだけどそのせいでコスパ最悪!一回能力使うと疲れて気絶しちゃうの、弱いよね。みこちは神社の子だからなんとなく祭具のイメージつくよね」

「だ、だいたいにぇ……」

 みこちは目を逸らして答える。

「でもさ、現代のお祭りっていったらもっとイメージする物がない?」

「お祭り…………花火?…………とか焼きそば!」

「そうそう、そういうの!『冷やしたラムネ』『音頭の太鼓』『屋台の鉄板』そういう物って『現代のお祭り道具』じゃない?だからまつりはこれを『祭具』ってことにして能力の対象にしたの。こんな能力でも戦えるようにマニュアルな使い方を捨てて自分なりに工夫したんだ。みこちはさ……せっかく能力が強いのに、こういう工夫がまだ足りないんだよ……」

 そう言うとまつりは生み出したりんご飴をかじる。

「……!……ありがと、まつりちゃん。なんか……わかってきた!」

「……いーってことよぉ、こっからが本番だね」

 その時お互いみる目が変わる。先手を打ったのはまつりの方だった。

「『祭礼召法(さいれいしょうほう)屋台囃子(やたいばやし)』」

 まつりが掌印を結ぶと鉄串が数本顕現する。みこちはまつりに向かって走り出す。鉄串が降ってくるとみこちは滑り込んで避ける。するとまつりは射的の銃をみこちに向かって射つ。しかしその弾は魔力によって十分の威力になっていた。みこちは冷静にバリアで防ぐ。


 ――――――――イメージはあった。でも方法がなかった。


「すいちゃんはね」

 ある日の部活動で星街とみこちはボロボロになっていた。

「攻防バッチリだけど能力のせいでスタミナ不足!みこちゃんは動きは良くなってきたけど経験不足!」

「かひゅ……」

「しぬ…………」

 その理由はそらとの稽古が理由だった。

「2人とも頑張り賞!明日は一本取ろうね!」

「ふぇい……」

「あーい……」


 ―――――そらちゃんやすいちゃんとの特訓は基礎の体力作りと体術、あとはバリアを使いこなせるようになるのが精一杯だった


「あーしんど……」

「…………」

「ねぇみこち……」

「…………」

 みこちはぼーっとしていた。

「み〜こち!」

 星街はみこちの首にジュース缶を当てる。

「んひあっ!!ごめん何?」

「……いや…………悩みごと?カゼ引くぞ」

「え……あー…………まーにぇ」

 みこちが星街に悩みを話す。

「バリア貼れるだけじゃ攻撃ができないか。ま、確かに強いやつには通用しないよね」

「うん……」

「んー……でもさ、バリアって絶対壊れない壁じゃん」

「確かに?」

「それでぶん殴ったら強くね?」

「え」

 星街は何かを振り回す素振りをしながら提案する。

「発想が物騒すぎんだよおめーは!」


 ――――――――――――――


(あぁは言ったけどすいちゃんのアイデアは何かヒントになりそうでどうにかできないかずっと考えてた……)

 バリアで防いだみこちの背後にまつりが回り込む。


 ――――――――マニュアルな使い方を捨てて自分なりに工夫したんだ


『バリア貼れるだけじゃ』


『バリア』  じゃねぇっ!!


「……!?」

 みこちは自分のバリアを曲げ伸ばし背後からの攻撃を防いだ。

(バリアを曲げた?伸ばした!?)

 まつりは想定外の防御に戸惑う。

「今ので完全に!わがっだ!!」

(そもそもこの能力の説明をされる時神社の人は誰も『バリア』なんて言ってなかった!『神様の力』『絶対壊れない』それだけなのに、おかーたんが使ったとこを見た印象でみこが勝手にバリアにしてただけだった……だったら変形(かえ)られる!もっと……自由に!)

 みこちがバリアを剣の形に変える。みこちが剣を振り落とした瞬間バリアが崩壊する。

「……………………………………あれ?」

「………………………………わがんない!!!」

 みこちは反撃を受けて吹き飛ぶ。

「お、わ、わっ!」

「危ない危ない、不発かな?」

(できなかった!なんで!?さっき(曲げた時)はいけたのに!攻撃と言えば剣だ!って思ったけど……いつもの形から離れすぎたから難しいとか?)

 みこちはマンションのベランダに着地する。まつりははしごを出現させみこちのもとに行くと、そのままベランダからみこちを落とす。

「ちょおっ!?」

 高所へ移動させたのは技の発動条件に『高さ』があるため、使いやすさを意識したまつりの能力の中では破格の魔力消費と発動条件を持つ。一定高度の座標からさらに『打ち上げ』夏の大輪を咲かせる夏色まつりの『最大火力』。

「『昇式芯(のぼりしきしん)』……『彩色芯(さいしきしん)』……『菊三化群声(きくさんかぐんせい)』……」

 まつりが掌印を結び詠唱を唱える。

「お祭りのフィナーレはこれでしょ」


 ――――――『君眺夏花(ゆうちょうげっか)』――――――


 まつりなりの絶対防御への回答、四方半町(直径50M)に及ぶ火の花弁である。


 ――――――――――――――――――――――――


 巨大な花火による攻撃で辺りは煙に包まれていた。まつりが水の膜から出てくるとその場で膝をつく。

「ぷはっ!!ふー……やっぱしんどいなこれ、魔力がすっからかんだ」

(正直まつりの攻撃じゃあのバリアを破れない……だから防がせない。そのための炸裂玉、包み込むように必殺で埋め尽くした。……仮にみこちがバリアを変形させられるとしてもこの攻撃は衝撃を防がれても音と熱でしばらく戦闘不能にできる。だから叩く!今!残った体力で!)

 すると煙の中からみこちが現れる。

「マジか……!」

 まつりの笑みはひきずっていた。

「マジよ!!」

『君眺夏花』は指定座標で花火を顕現させる技。膨大な魔力を消費する他、その爆発に自身が巻き込まれないように水の防壁を同時展開する。そのため魔力の消耗が激しい。対するさくらみこの対応、バリアの変形を可能にしたみこちは自身の周りに囲うように能力を展開し全方位の攻撃を防御しきった。要は夏色まつりの想定は正しかった『仕方のない誤算』それは『花月ノ夢』の防御特性、花月ノ夢の能力は『概念防御』その防御対象はさくらみこにとって『無意識にでも』有害と判断されたもの『全て』。音や熱、更には空気まで防御可能。ただし、形状を変化させるほどに防御の性能は落ちる。『君眺夏花』のダメージを軽減こそしたが無効化には至っていない。みこちが現れるとまつりは飛び跳ね距離を置き大きく回り込む。

(防がれていた、けど削れてる。なら攻める!殴り合い(インファイト)ならみこちの攻撃は響かない!まだまつりに分がある!)

 みこちはその場で動けないでいた

「っそぉ……!うごけ……みこの体ぁ……っ!」


 ――――――――『負けんなよみこち!』


 みこちは星街の言葉を思い出す。

(勝ちたい。すいちゃんがみこのこと信じて任せたんだ。置いてかれたくない。やっと横の立てそうなんだ……あの時から今)

「にゃぁ…………ぁぁぁぁあああっ!!!!!!!!」

 みこちが気合いでバリアを再展開する。まつりがそれを見て警戒する。

バリア(これ)の形は変えられる!それは間違いない。でも成功したのは最初と花火(さっき)の2回だけ、完全にイメージを掴んでる『原型』!今はこれを崩しすぎずに『折り紙みたいに』変形させる)


 ――――――――――――発想(アイデア)は自由に


(まつりちゃんの能力はびっくりしたな、ラムネってなんだよって)


 ――――――――――――想像(イメージ)は具体的に


(先週食べたクレープは美味しかった、すいちゃん甘いもの苦手って超もったいねーよな……………………あ、これだ。原型(バリア)は『生地(きじ)』クレープみたいに縦に丸める。そのまま絞って尖らせる)

「『花月ノ夢』」

 みこちのバリアは鋭く尖り、回転し始める。

「『神槍(かんざし)』!!」

 光り輝く槍はまつりに向かって勢いよく突き進む。槍が通った場所は酷く抉れる。

「!?」

 まつりは直撃を避けるも大きくダメージを受ける。

(何っ……!!直撃は避けた……なのに!高エネルギーのバリアが圧縮されてとんでもない威力になってる!……ってかなんで、まだそんなに動けんの……!?)

「もらったあ!!飛斬(かまいたち)!!!!!」

 みこちが飛ばした斬撃はまつりに直撃した。


――――――――――――――


「あーあ……体動かないや……詰みかー」

 まつりは倒れ青空を見上げる。

「……まつりちゃん」

 見上げた青空にみこちが被せて話しかける。

「どうしてみこに色々教えてくれたの?あれがなかったらみこ、負けてたよ」

「…………あー…………みこちが一緒にいた水色の子さ」

「すいちゃん?」

「すいちゃんっていうんだ。ま、そうその人。あの子さ超強いでしょ」

「……うん」

「まつりもね、一緒にいたフブキがまぁ強くって。置いていかれないように頑張ったんだ、今のみこちみたいにさ…………だからかな、頑張ってるみこちをなんかほっとけなくて。そんだけよ!だから全く後悔とかはしてないから!正直負けるとは思ってなかったけど!」

「……………………ありがとにぇ、まつりちゃん」

 まつりの顔は少し微笑んでいるようだった。


 10月11日 14:01

 夏色まつり 脱落


「すいちゃん……みこ……勝ったよ……今………………そっち…………す…………」

 みこちはその場で倒れる。倒れたみこちの元に2人の影があった。


 ――――――――――――――


「限界まで削ってまだこれってめちゃくちゃ強いのではこの子?」

「いや正直白上より強いですよぉ全然」

「だよねぇ!?ウチ達もまだまだ鍛錬不足だね」

「だね!ちゃんと覚えとくよ『星街すいせい』……」

 フブキの元に駆けつけた仲間に星街は追い詰められていた。

「…………にゃろう…………っ」

夏色まつりの能力紹介


固有ユニークスキル:祭礼召法』


自身の魔力を用いて一時的に祭具を召喚する能力。

本来は神事行うを家系で継承される能力だが、遠縁で遺伝し一般家庭出身の夏色まつりに開花した。特殊な神器を召喚できる強力な能力だが、その分魔力の消耗が激しく気絶は免れない。

燃費の悪さを問題視した夏色まつりは一度能力の解釈を分解、理解することで自分流の能力に再解釈した。『祭具』を『お祭りの道具』と捉え直すことで条件付きの四次元ポケットのように扱うことができる。仮にも由緒ある固有(ユニーク)スキルであるため、『炎などの殺傷能力が高いものの召喚』と『完全召喚』には掌印を必要とする。


屋台囃子やたいばやし


夏色まつりが使用している『お祭り道具』を召喚する拡張能力のこと。本来戦闘能力を持たない物のため完全召喚しても消費魔力は少ない。召喚した物体を魔力で強化することで戦闘に用いている。

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