40話「ぶつかり合う想い」
「分断された時……やられたって思ったんです。ししろんは多分、ねねポルが相手だと本気を出せない。または出すのに時間がかかる。でもすいせいさんが救援に行くことになった。どの道ラミィじゃすいせいさんに追いつけなかったけど、行かせたって構わない。本気を出せずに二人を相手するより本気で三人を相手にした方が勝率が高いかもしれないので。それにラミィがこっちを確実に倒して助けに行けば、勝率はもっと高い。だから………終わりにしましょう」
みこちは木に氷で四肢を拘束されていた。
ラミィはみこちに手を伸ばす。そんな中みこちは先ほど星街との会話を思い出す。
――――――――――――――――――――みこち
「ヒントっていうか多分手がかり、ラミィの『第二層』が発動できる条件が多分制限されてる」
「どういうこと?」
「前回から時間制限を無くした代償かな、少なくともさっきのカウンター攻撃は普通の凍結だった。魔力の放熱で吹き飛ばされたから。だから一部の攻撃だけが第二層なんだよ。適用対象は多分……①掌での直接接触②氷塊もしくは過冷却状態の魔力に直接触れている状態」
――――――――――――――――――――――
お得意の広範囲や全方位への攻撃には第二層を適用できない
(だから……くらった!今みこを捕まえてるのはわざとくらいに行った普通の氷、めちゃめちゃ寒いけどこれならまだ能力も使える。ラミィちゃんは戦闘中、何度もみこに直接触ろうとしてきた。それは多分直接触る技が一番強いから!で………みこが手をかざしてバリアを張ることももう見破られてる。だから手足を捕まえたらきっと触りに行く)
――――――――――――――――――――――
「そらちゃん、あずちゃんもう一個聞きたいの」
「なぁに?」
「ぽぅぽぅはみこの能力のことを『なんでも防ぐ能力』って教えてくれた。でもみこ大会でさ『なんでも斬る能力』と『なんでも凍らせる能力』の人と戦ったの、同じ感じなのにみこのバリアは毎回負けちゃったんだよ。なんで?」
「………………………気合い?」
「え」
そらの回答にあずきが言葉を失う。
「ごめん正直それはわからないなぁ。わかったら高校時代に伝えてるし!」
「確かに…………」
「ただ、本来そういう『ルール能力』同士がぶつかった時は色々な要素の押し付け合いのなる。能力の練度とか本人の元気とか技の出力とか……それすら無しに負けるってことは、もしかしてみこちの能力に違う使い方があるとかじゃないかな?」
みこちは考えもしてなかったことを言われ目を見開く。
「バリアを出す以外に……?」
「みこちは2日目で『バリアを出す能力』じゃないことに気づいたんだよね。他の形でも扱える、そこから攻撃とかできるようになったんでしょ?だったら改めてよく探してみて、この大会で他に何か気づかなかったか」
不安が残るみこちの顔を見てそらは最後に『大丈夫』と声をかけ通話を終えた。
「みこちもすごい課題もらったねぇ」
「う〜………」
「実際ないの、なんか気づいたこと」
「…………まつりちゃん……まつりちゃんと戦った時の最後、バテてたのになんかすごい攻撃ができて。あれならなんとかできそうな気がするんだけどうまく行かなくて……」
「へぇ…………魔力不足ですごい攻撃なんて、私の能力みたい」
――――――――――――――――――――――――
「それじゃあみこちさん、終わりにしましょう」
ラミィがそういうとみこちの足元の氷が溶けていってることに気づく。
「そらちゃんはすごいんだよ……あんなにすごいのにいつもみこに付き合ってくれたの。すいちゃんもすごいんだ、前向いてどんどん先頭に走っていくからどんどん強くなるの。そんなすごい人たちがみこなら大丈夫だって、みこに任せるって。だから………負けない!!!」
――――『花月ノ夢』:『神成』――――
みこちは自身を拘束していた氷を蒸発していく。
その衝撃にラミィが怯む。
「っ…………!何っ……」
(凍結が甘かった!第二層の氷だけ上手く避けられてた?とにかくそれでも……触れれば決着!)
ラミィがみこちに触れると反発するかのように弾かれる。
(第二層の直接接触が弾かれた……!?)
――――――――――――――――――
「みこちは何したの?」
ロボ子がholoRoyalの中継を見ながらあずきに問う。
「……もう変わらないから見てきたけど、あれはスキルの出力先を変更した感じだね」
「出力先?」
「みこちのスキルは魔力の回路を引いて神社から神様の力を出力する能力。今まではその出力先が『手で示した先』で出力される形がバリアだった。正確には形はなんでもいいんだけどバリアを選択してて大会でそれを変形させるようになった。その出力先を自分の内側に変更、要するに自分の体から直にバリアが出てきてるような状態なんだよ」
「それでなんでラミィさんの能力が解けるようになったの?」
「矛盾したルール能力の押し付け合いは使用者の様々な要因で発生する。多分みこちが引いてる神様っていうのはそれ単体じゃ植物みたいなもので、ただ引っ張ってきただけじゃ押し合いは発生しなかった。それが今は一度みこちの内側を経由することで正式にみこちの力になった。それで押し合いができるようになって勝ったから弾けた!そんな感じかな」
「すごいねぇみこち!」
「本人はそんな理論的に考えてないだろうけどね」
――――――――――――――――――
みこちは天女の羽衣のようなものを身につけており、それには桜が点々と咲いている。
ラミィが足元から凍結攻撃を放つ。みこちは全身で受け止めるも肩が凍る。
(バリアを変形させた時と同じ感じだ!無理に全身守ると効果が薄くなる!)
みこちは攻撃を受けたことで冷や汗を流す。
(やっぱり……どういう理屈かわからないけど第二層と競り合えるようになってる。ただ……競り合えるだけ、無敵になったわけじゃない。なんで急に……)
――――――そんなすごい人がみこなら大丈夫ってみこに任せるって
「あぁ……そんなんわかるなぁ………」
その時ラミィが高校時代、そしてぼたんをふと思い出す。
「任されるのって、元気でるよね……すごく」
ラミィの表情は言葉とは裏腹に、辛そうでその感情を無理やり抑え込んだようだった。
その表情にみこちはどこか近親感を感じていた。
「でもラミィも勝ちたいな。あの時の、ししろんが選んだことを……否定したくないから」
――――最大出力『黄泉堕詞経』:『虚花倶龍伽羅』――――
ラミィの背後に巨大な龍が顕現する。
「いきますよ」
押し合いを制す至天した自然種の圧倒的最大出力
対する『神成』で祈祷の真髄に近づいたスキルは、全ての技が進化し始める。
(いつも通りこの技も、身体の中を一度通してから……外へ!)
――――『花月ノ夢』:『成神布』――――
みこちは手をかざした先にバリアを展開する。
龍の形をした凍結攻撃が襲いかかる。みこは一つのバリアで向かいうつ。
みこはね、すいちゃんのことずっとすごいと思ってる
初めて助けてくれた日から
別に完璧でも無敵でもないけど
頑張り屋さんなとこ
負けず嫌いで強がりなこと
そういうの全部ひっくるめて強いとこ
かっこいいな すごいなって
そういう人がいる方向に行けたら、みこもかっこよくなれると思ってた
でもそんな思い通りにいかなかったね
すいちゃんみたいにも そらちゃんみたいにもできないね
みこちのバリアは凍りつき砕けていく。
しかしみこちは2枚目のバリアを展開する。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
けどさ
いいんだよ
きっと大丈夫
今でも怖いけど
今でもこれでいいのかわかんないけど
思い通りにいかないけど
みこはみこで頑張るから見てて




