39話「破面のピエロ」
ビルの屋上には激しい衝撃が起こっていた。
ポルカはさくらみこの変身をを解き体勢を整える。
(直撃は避けられた……が、武器は砕いた!)
「ねね!」
ポルカがねねちの元に向かおうとした瞬間ぼたんの手が目に映る。
ポルカは勢いよく他のビルへと投げ飛ばされる。
その先にぼたんが回り込み再び攻撃を加える。
「っ……!」
(わかってた………わかってはいたが……獅白!!!反応がまず遥か速い!能力を使う暇すら……!)
ポルカが落とされた先にぼたんも降りてくる。怯んでいたポルカは敗北の文字が頭をよぎる。
「はぁーーーーー……とあっ!」
ねねちが遠心力を利用し勢いよく飛び蹴りを喰らわす。
攻撃を受けたぼたんはすかさず銃で射撃するも虫の甲羅で防がれる。
防いだことによって生まれた隙を見てぼたんがねねちを投げ飛ばす。
「そりゃ……そうだ……」
その場に取り残されたポルカが一人嘆く。
(『武器を解除させれば』『有利な空中なら』『あぁすれば勝てる』『こうすればいい』そういう机上の理論はある程度同格の相手にだけ意味のあるお話だ。獅白はポルカ達のために最強になったんだから……)
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「異能使いは相性とか状況とか色々で……」
「これが最強みたいなのは無い……なるほど!……でもさぽぅぽぅ、じゃあなんでぼたんちゃんのことは『最強』なの?」
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違う
そうだ
『最強になった』
違う
ポルカ達が最強にさせたんだ
だから獅白に勝てないって、今もどこか諦めたまま
――――――ちゃんと口に出した方がいいよ
今更それにたどり着いたんだ
今のポルカ達には死ぬほど話し合うことがある
この戦いに勝っても負けてもそれだけじゃ何も解決しない
ただ
お前と話すために
追いつかないと
勝って……お前の強さに追いつかないと
ぼたんがポルカの方に目をやる。
ポルカは影のようなマントを纏っていた。
(おまるん……?様相が違う。普段の衣装で纏ってるマント、あれは中のピエロ衣装も合わせて派手な色合いで非変身時の素顔から意識を逸らせるためだ。でもそれはさっき捨ててたし、じゃああのマントは……?変身……いや体はそのまま……なら)
――――――『写仮面・破面』――――――
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「ストックを二つ同時に引き出す感覚ねぇ……」
「ねねの能力はストックしたものを発露させるって意味でポルカに近いからな。アドバイス求む」
「ふーむ……なんか新しいこと?珍しいじゃん」
「まぁそうだけど……なんか新しいことしなきゃって気になるんだよ。あの子ら見てると」
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ぼたんは一瞬にしてポルカに吹き飛ばされる。
(これは……)
『写仮面・破面』
その真価はストックした模倣の2つ同時使用
姿の模倣を禁止することによる即席の条件付けによって二つの模倣を同時使用するメモリを空け、ストックした異能を組み合わせて『自らが』振るう。人真似の先にたどり着いた『究極の自己』
ポルカが攻撃の構えを取る。
(来る……)
ポルカが飛び上がった瞬間にぼたんが殴りかかるもものすごい反応速度で避けられる。
「…………!?」
現在の配合は
手札中最速を誇る星街すいせいの
『星空を君に』+
速すぎる動きを制御するための獅白ぼたんの
『野生』
ぼたんの攻撃を避けたポルカはそのまま強烈な一撃を喰らわす。
まともに攻撃を受けたぼたんはビルの壁に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
ポルカが追い打ちに近づくとぼたんが銃で攻撃する。
ポルカの前にバリアが現れ攻撃から身を守る。
――――さくらみこ『花月ノ夢』+雪花ラミィ『天花詞経』――――
「ラ………」
ぼたんが氷結攻撃に追われる。
その先に待ち受けるのはムカデの尻尾を4本身につけたねねちだった。
ねねちは手数で勝つもぼたんに対応され投げ飛ばされる。するとぼたんの上からネットのようなものが降りかかる。
(蜘蛛の糸……ねねちの模倣か)
「この程度」
「どの程度?」
――――桃鈴ねね『転霊接続』+不知火フレア『不知火』――――
炎が糸をたどって燃え広がり爆発を起こす。
――――――『蜘不知火』――――――
炎の中からぼたんが出てくる。
(凌がれた!!!ならもう一撃!今の手札でできる最高火力……)
――――星街すいせい『星空を君に』+白銀ノエル『銀騎士勲章』――――
ポルカが瓦礫を操り岩の弾丸を作り出す。
――――――『流星混槌』――――――
獅子は、ネコ科で唯一群れを作る。
仲間意識の高い動物である。
感情の問題とは無関係に、一度群れを成した友達相手にはリミッターがかかってしまう。
だが友達の本気を垣間見た王は、その返礼として本来の力を取り戻す。
海を割り 星を砕いた
親友にでなく外敵へ向ける本来の王たる力を
二人の本気が衝突する。
「おまるん!」
ねねちが駆けつけるとポルカが膝をついていた。
「一瞬で……」
「いや、あたしは攻撃を捌いただけだよ」
そこにぼたんが歩いてくる。
「倒れたのは反動のせいだろおまるん。無茶な模倣の……反動だよ。学生時代からおまるんが戦闘に出てバテてない試合はなかったよね。体力を消耗する能力だったから。それを2個も併用したんだ、そりゃ体力も魔力も保たなくなる。見た目に変化がなかったのはメモリを空けるため?」
「………そう……あわよくば消耗を抑えられるかと思ったけど……そんな上手くはいかないな。くっそ……カッコ悪い……」
倒れかけるポルカを支える星が現れる。
「いや、かっこいいよ」
「すいちゃ……」
その場に現れたのは『星街すいせい』だった。
「おかげで間に合った」




