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35話「強豪衝突」


「ししろんの能力は固有(ユニーク)スキル『牡丹獅児(ぼたんすいびょうじ)』、野生を強化・拡張する能力です。使い方は2種類。野生をさらに限定して強化した戦闘モードと野生の範囲を広く伸ばした索敵モード、加えて視認性の悪い森林エリアに潜伏してるので……これがある限り先手を取られることはないです」

 場所は森林エリア、ラミィたちは4人で話し合っていた。

「こっちにおまるんほどの作戦を立てられる人材はいない。けどずっとおまるんと一緒に戦ってきたラミィたちなら、おまるんの作戦を逆算して逆手に取ることができるかも」

「分断用のトラップは読まれるだろうって言ってたけど、読まれたところでどうすんの?結局向こうはこっちに向かってくるしかないぺこじゃん」

「それはそう。だからおまるんなら……多分初手でこっちの待ち伏せ体制を乱しに来るはずです」

「どうやって?」

「……………………おまるんは間違いなくししろんを一番に警戒してるから……どうにかしてししろんの能力を乱しにくる……かな」

「……炎」

 するとマリンが一つ提案をする。

「フレアの炎は?森一体を放火しながら接近されたら五感はどう?」

「焼け落ちる音・煙と光・焦げる臭い……確かにあたしの感知は死にますね。でもそう来ると分かっていれば大丈夫。寒地内に入れば放火前にわかりますし、感知外から放火し始めるなら目視でわかる」

「向こうも模倣の能力で同じように感知できるんじゃないの?」

「おまるんの模倣は完全再現はできないから感知対決ならししろんの勝ちですよ」

 ラミィがポルカについて詳しく話す。

「向こうが攻めにくい森の中心で全方位均等に感知を広げるね。目視もできるよう高い位置で監視、みんなはあたしがすぐ飛べる範囲で準備しておいて」

 ぼたんに続いてマリンが話し始める。

「『強制転送トラップ』、戦闘状態でも使用できる道連れ転送のアイテム。非戦闘エリアへの転送と同じようにいくつかのアイテムと交換で入手できるから、あっちも存在は知ってるでしょーね。ただし、仕掛けるためには120秒の時間が必要で戦闘中に新しく仕掛けるのはまず不可能。待ち伏せスタイルで予め仕掛けておくから使えるアイテムってわけ。誘い込みオーケー?分断する時のチーム分けは転送の方にししろん、ここにマリン達3人。まぁ要するに、ししろんに相手の要注意メンバーを引き離してもらおうってコトなんだケド」

「ししろん……」

「まぁまぁあたしもこれがベストだと思うな」

 心配するラミィにぼたんがそう言う。

「ラミちゃんは船長さんとの連携が強力。逆にあたしは船長さんの大技と相性が悪いから、バラバラにしてくれた方が動きやすい」

 ラミィはぼたんの言葉に納得させられ複雑な気持ちになる。

「要注意は……

 ・ラミィちゃん特攻の『みこち』

 ・『みこち』と同じことができる可能性のある『おまるん』

 ・並の反応速度だと相手にならない『星街すいせい』

 ここから最低2人あわよくば3人とも分断したいけど……1対3で行けそう?」

「星街すいせいを捕まえられるかは微妙だけど、多分いけますよ」

 マリンの提案にぼたんが余裕げに受ける。

「ヒュウ!生意気〜!」

「まぁ特に……『みこち』ってのはマリンの能力にも天敵だから、確実に連れて行って欲しいぺこだな」



 さて、どう来る――――――――――――


 

 4人は指定の位置につき、不知火牽制同盟を迎え討とうとしていた。

 そしてその時、ぼたん以外もすぐにわかるほどの近くに炎が燃え広がる。

「なっ……!」

「ししろん!?」

 ラミィ達と同様ぼたんは困惑していた。

(完治には何も…………上か!?)

「ししろおおおおおおおおおおん!!!!」

 ぼたんが上空に目をやるとフレアを連れたねねちの姿があった。

(ねねちに捕まってあたしの感知し損ねた空から飛んできたのか……でもたった二人で!?感知範囲に他の仲間はいない。戦闘を開始してすぐに間に合う距離じゃない。まさか撹乱するために二人犠牲に……いやおまるんはそんなこと…………いやいい!!!)

「みんな上からだ!戦闘開始!」

(能力で地上を警戒しつつ一人ずつ落とす!)

 ぼたんが混乱しつつメンバーに声かける。

「ねねちゃん!!!」

 ぼたんがねねちの名を呼びながら迎え討つ。

 しかし、ぼたんは突如現れたノエルに殴り込まれる。

「久しぶりやね……ぼたんちゃん!!!」

「白っ……!」

(速い!?どこから……!!!)

 ぼたんは咄嗟にガードするも勢いそのまま吹き飛ばされる。

「ししろん!!!」

(監視体制を崩された!)

「『天花詞経(てんげののりと)』……」

 ラミィが氷を繰り出すと高火力の炎に相殺される。

「また会ったね、もう肩治った?」

 フレアとラミィが今一度対面する。

 一方マリンはノエルの頭にピストルで銃弾を撃つ。

「マリン!」

 命中したもののノエルは平然とマリンの方を見る。

「やっぱ効かねぇ!ふざけんじゃねぇ!!!」

 マリンは思わずそう叫ぶ。

 そのすぐ近くでぺこらとねねちが対峙していた。

 ぼたんはノエルに吹き飛ばされを離されていた。

「はぁ……!やられたなぁー……」

(こっちの想定のさらに先を読んでスタートを崩し、近くに火をつけて能力阻害。問題のおまるん達は姿を見せない。流石……でもいい、能力は索敵モードのまま奇襲を警戒してラミちゃんを見つつ……まずは飛行が厄介なねねちゃんから倒す!)

 ものすごいスピードでねねちに襲いかかるぼたんに蹴りを喰らわしたのは『星街すいせい』だった。

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