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33話「Re:オンステージ」


 2022年10月17日 13:00

 ときのそらとの通話から二日後

 大会8日目


「みこち、できた?」

「とりあえず!すいちゃんは?」

「6割ってとこかな」

「みこ7割!」

「うっせ」

「………じゃあ、行きますか」

「うん!」


 大会8日目 15:00

 後半が開始された14日時点で公開された高レート4組。

 そのいずれもが脱落者を出していない点から戦況膠着状態と判断。

 4組各々の居場所が運営より全参加者に共有される。

 また断片的にしか行われない大会外部へのリアルタイム配信でも情報がまとまり始め、ネットに公開された情報から派手に戦闘を行った者の能力は割れ始めている。

 強チームを倒すために協力した参加者や息を潜めていた者による高レート狩りが始まる。

 

「……多くの人は幻想種二人組、もしくは幻想種を下した『王様』を内包するチームを下しに行きます。しかし我々はそうしなかった。こうしてあなた方の前に現れた。なぜか?答えは単純。あなた方『不知火牽制同盟』を最初に倒すべきと判断したからですよ」

 フレア・みこち・ねねちの前に現れたのは一般参加の黄灯蘭(こうとうらん)だった。

「そしてその判断もまたなぜか………ぼたん(彼女)たちの脅威は『個』ですが、あなた方の最大の脅威は『数』だ。今までの戦闘を見ればわかります。注意すべきはその聡明な戦闘指揮と相性を補完する手札数。あなた方なりに幻想種や『王様』に対抗するための術だったのでしょうが考えはしませんでしたか?数さえ覆せば、あなた方が『最も狩りやすい』と」

 すると蘭の後ろに参加者(プレイヤー)が集まる。

「人数…………1・2・3………5人?負けてんじゃん」

 ねねちが人数を数えると不知火牽制同盟よりも少ないことに気づく。

「なるほど」

 フレアが勘付くと眉間にしわを寄せる。

「『まずは脅威4組を倒すこと』、それに同意した者たちです。()()()後4人、合計9人による大同盟ですよ」

「それに一番のレート的にも『星街すいせい』でしょ?ソイツと別れて行動してるなんて危機感たりてないんじゃ………」

「御託ァいい!!!」

 その瞬間参加者(プレイヤー)の一人が飛び出す。

「どうせヤんだろ!アタシにいかせろ!!!!」

 そう叫びながらみこちに勢いよく近づく。

「『龍牙雷帝(りゅうがらいてい)』!!!!」

 みこちが雷を纏う炎に襲われる。

「………!」

 しかしみこちがバリアで守り傷一つ付かなかった。

「二人とも下がって、みこがやる!」

 みこちが5人を相手に前に出る。

「バリア!白上一派を倒したさくらみこか!」

「葉蜂さん、レインさん畳み掛けてください。天藤さん残り二人の分断を。まずはさくらみこからやります」

 蘭が他の参加者(プレイヤー)に指示を出す。

「イイなお前!!!」

「………牙院さんの龍牙雷帝で削れないとは、大したバリアですね。しかし彼女は攻撃に転じる時に大きな隙が生まれる………数で勝ってしまえば脅威ではない」

 牙院の絶え間ない攻撃に防戦一方のみこちの背後に葉蜂とレインが回り込む。

 みこちはその時そらとの会話を思い出す。



――――――――――――――――


「まだみこちは私に倣おうとしてるよ」


「へ……?」


「私の戦い方は基本を大切にしてる。けどみこちの固有(ユニーク)スキルはもっと自由なんじゃないかな」


「そらちゃんに……そう……かも。そらちゃんの戦い方がなんか綺麗でかっこよかったから」


「みこちはさ、一度自分で戦い方を導き出せた。ってことは一つの道を見つけられたんだ。もうちょっと進んでみてもいいんじゃないかな」


――――――――――――――――


 

 すると牙院が押し飛ばされる。

盾で弾いて(シールドバッシュ)……!?)

 みこちがバリアを持ち上げる。


 ――――『花月ノ夢:神刃(かみきり)』――――


 みこちが牙院を背後の敵諸共一掃する。

(防御からそのまま攻撃に…………!?)

 蘭がその光景を見て驚愕する。


 牙院レオ、レイン・ランクス、葉蜂鮊

 計3名 脱落


(そんな馬鹿な……後半を警戒して温存していた……!?いや、彼女の戦闘はどれも辛勝だったはず……いや、それすらも演技(ブラフ)……!?)

「っ……!!!天藤さん!一度退きます!」

 蘭がそう言うと天藤を連れて逃亡する。

「逃げた……リーダーは飛行系能力者か……」

「ねね追っかける!?」

「いや……いいよ。みこちの初見殺しで倒せたけど流石に結構やる奴らだ、別隊もいるらしいし深追いは危ない」




「ぐっ……まさか最初に落とそうとしたやつがあんな隠し玉を……」

「どうするリーダー」

「仕方ありません、まずは別隊と合流します。通信を……」

 蘭が天藤を抱えながら別隊と合流しようと向かう。

「………!前方……あれは……!」

 蘭が前方にあるものが目に入る。


――――――――――――


「二人にヒントを出せたところで私たちはここまでね。あとはみこちとすいちゃん二人で見つけるんだよ」

「うん!ありがと!そらちゃん、そらちゃん」

 星街とみこちはそらとあずきに相談をし終わった時だった。

「……とは言ってもなぁ、幻想種みたいにするには私の魔力が少ない。神人と違って私の魔力は邪魔……か」

「……………………邪魔ならすいちゃんの魔力を空っぽにするとかできないの?」

「は?」

 みこちが思いつきに言うと星街が困惑する。

「いやいやみこち、いくら亜人種の魔力が少ないからって。そんなことしたらそもそも能力も使えなく……いや……できないことも……?そんな事……」


 ――――――――「昨日と同じことだけやってたら…………お前は新しいことできる人間でしょ」――――――――


 星街がトワに言われた言葉を思い出す。

「すいちゃん?」

「………そうだね」


――――――――――――


 10月16日 8:03


「結局服買ったんだ」

「うん昨日オーダーした」

 ポルカを迎えるのは衣装を変えた星街だった。

「で、見せたいものって?」

 すると星街は深呼吸して集中する。

「…………!」

 するとポルカが驚く。

(深呼吸と同時に魔力が抜けていく……いや、自分本来の魔力を排出して代わりに星の魔力を補給してる……?本来の魔力を全て星の魔力で代用するつもり?理論上不可能じゃないけど……)

「やろうと思うかね」


―――――――――――――


「すいちゃん、うまくできるかな」

「……………本来持つべきでない力、『固有(ユニーク)スキル』は自分の意思では決められないもの」

 早朝、あずきとそらが寝起きながらも話し合う。

「『才能』だね。でも、それによって自分を害されてしまったなら……それは才能無いどころか才能マイナス。嬉しくない固有(ユニーク)スキルに苦しむ子って珍しくないしね。すいちゃんはこれまではプラスだった。でも今壁に当たって……より上に行こうとするのは自分の固有(ユニーク)スキルがマイナスになってしまっている。これから『自分の身体に合っていない』をマイナスにしたまま終わるのかな。それとも『他と違うこと』をプラスにしていくのかな。合ってないを合ってないで終わらせるかは、すいちゃん次第。……すいちゃんならきっと大丈夫」


―――――――――――――


 星街が星の魔力を自分のものにし周りに光が飛び交う。

「……そのまま動けそう?」

「今日中には……なんとか……!」


―――――――――――――


「……………居た」

 蘭たちの目の前に現れたのは星街だった。

「星街すいせい!!!飛行能力なんて聞いてな………」

 蘭は瞬きをする間もなく蹴り飛ばされる。

「だろうね、言ってないもん」

 蹴り飛ばされ蘭が建物の屋上に突っ込む。

「クソっ!」

(こっちも情報にない能力だと!……けど、速度もパワーも聞いてたほどじゃない!これなら!)

 星街が蘭たちの元に追いつく。

「総員!来てください!ここで星街すいせいを叩きます!」

 その場に他の参加者(プレイヤー)が現れる。

「さっさと合流しに行けばよかったものを!!!!!終わりです!!!!!!!!」

 その場の人間が目撃する。一線の光を


 ――――『星夜観盤ディスク・オブ・ミッドナイト』――――


 参加者(プレイヤー)たちは一斉に倒れる。

(同時と錯覚するほど……速く、受けきれないほど重い……!だけじゃない、()()()急所を……!)


 黄灯蘭含む 計6名


 脱落

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