19話「共に悔しさを」
「獲得したアイテムを山分けするからお互い撤退しろ……?」
あくあ、シオンと対峙していたポルカ達の前に現れた大神ミオの目的は交渉だった。
「このままじゃお互い大ダメージだよ。悪い話じゃないでしょ?」
「…………その前に、なんでここに?白上フブキの仲間じゃなかったの?」
「そうだよ?でのウチだってフブキなしで優勝は正直きついもん。君たちと一緒だよ。この子達はちゃんと強いけど…………こう、頭がいないっていうか……とにかく一歩足りなそうな友達を優勝させてあげたいだけ」
「…………じゃあミッションを完了したのは」
「うん、ウチが裏でやってた」
「なるほど、やられた。……で、何で痛み分けと?」
「うーん……作戦かな。ちょっとまずいことが起こってて、ここのボーナスアイテムに加えて
この子達4人が万全の状態で居てほしいの」
「まずいこと?」
「…………昨日、特殊エリアで幻想種2人が手を組んだ」
ミオの言葉にポルカとフレアが震え上がる。
「しかもただの幻想種じゃないよ。才能に溺れず努力と挫折を経験できた、『本物の最強種』だ」
話を聞いていたあくあには1人の友人の顔を思い浮かべていた。
「ならこのままポルカ達を沈めていけばいい。ただでさえ絶体絶命の上そっちに増援が来たんだぜ?勝ち目はないのになー?」
「…………冗談」
ヘラヘラするポルカ相手にミオは強い警戒心を持っていた。
「君ってすごく色々考えてる人じゃん。さっきだって『ただじゃ終わらない』って顔してた。勝つのは無理でもあくあちゃんかシオンちゃんを落としていくつもりだったでしょ」
「…………まいったな」
ミオにはポルカの狙いを見抜かれていた。
「わかった。条件を飲ませて」
「フレア!」
そこにフレアが割って話に入る。
「あたし達的にも今ポルカを失えないよ。というか1人で片付けようとするの禁止ね」
高レートミッション
ホログラム式魔獣スポーン
破壊ミッション終了
参加者の内、私立二宮高校異能部(4名)と、不知火牽制同盟(5名)、そして大神ミオの3勢力により達成される。
大神ミオ以外の2グループが1人ずつ回収することで和平となった。
「シオンちゃん、もういいよ」
「あ、うん」
ミオがそういうと耳元に彷徨っていたボーナスアイテムが消える。
「ふうっ!」
「……疲れたでしょ。『千里眼』の並行遠隔発動、おかげでミッションの装置を楽に見つけられたよ」
シオンは戦闘中に本来仲間の状況を確認できるだけのボーナスアイテムに魔法を用途することでミオのサポートもしていた。
「まぁ、右手と左手で違う文章を書くかんじかな。慣れたら結構いけるよ、大丈夫」
「シオンちゃん強がり〜結構辛そうだったくせに〜」
するとあくあが茶々を入れるように煽る。
「うるさいなぁ!シオンの百倍辛そうだったくせに!」
シオンとあくあの取っ組み合いにミオが「まぁまぁ」と止めに入る。
「あくあちゃんこそ……ちゃんと隠してるよね?トワちゃんとはあくあちゃんが戦るんだよ?」
シオンが表情を一変させ真剣に聞く
「…………わかってるし。てゆーか、隠してたんじゃなくって今の人には使えなかったんですー」
「じゃーいーけど。」
2人はそう言いながら指で突き合う。
「おーい!大丈夫か!スバルは大丈夫!!!」
そこにあやめを抱えたスバルが駆けつける。
――――――――――――――
「……ってことだから、フレアとポルカは準備してたアイテムで非戦闘区域に帰るって。だんちょはまだ結構元気だから2人を送るよ」
交渉後ノエルがみこち、星街と合流し話していた。
「だって、帰るよすいちゃん。…………すいちゃん?」
星街は1人黙り込んでいた。
「…………勝てなかった。……百鬼あやめ、みこちがいなかったら負けてた。確かに連戦だったけど……悔しい。疲れてたからって相手が弱くなるわけじゃないし……みこちに……」
「おい星街」
みこちが星街にかぶせるように呼びかける。
「みこに頼るのがだめみたいに考えてんじゃねーだろーな。久しぶりに負けそうになってビビってんの?」
「なっ…………!」
「私が私がって……いいけど、そればっかだと昔のすいちゃんと変わってない。そうじゃなくて――――――
――――――すいちゃんは1人でもたくさん努力できるけどさ、『強くなるからついてこい』の方がかっこいいんじゃないかな」
星街はその言葉に『ときのそら』の姿をみこちと重ねる。
「みこだって悔しい、みこも強くなるから!置いていけると思うな!」
みこちが言い放つと星街は少し微笑む。
「ついてこれると思うな」
「はぁー?むしろ置いてくし」
「早く帰るよ!いつまでいちゃついてんだ!」
『ついてません』
――――――――――――――――――――
10月13日 14:10
外周結界
脱落者専用自由エリア
「あー、ヒヤヒヤしたー!」
「結果は50点って感じだけどみんな無事で良かった」
一つのテーブルで大会状況を見ながら話していたのはフブキ、まつりに加え西と海原だった。
「フブキは超新星ペアとミオのどっち応援してたの?」
「そ、それは…………どっちも?だからとりあえず痛み分けで良かった……かな?」
まつりが聞くとフブキが答えづらそうに答える。
「しかしなるほど、大神くんは他のお友達の支援に回ったのか。……あの地域ミッションは……簡易結界系のアイテムのパターンが多いね」
西がポルカ達が狙っていたアイテムについて触れる。
「結界…………何か思惑あっての行動のようですし、作戦のために狙って取得しに行ったみたいですね。結界は分断・幽閉と対格上性能が高いですから」
「……さて、気になる戦闘も終了したし本題に入っていいかな」
すると西がフブキとまつりに声かける。
「本題?」
「そう、本当は大神くんにもご協力願いたかったが……まぁ、海原くんに白上くんと夏色くんが加わってくれれば文句はないだろう。まぁまずは、君たちが運営の話を聞いて考えてほしい」
西が目線を向けた先から大会運営組織「holoX」運営総監督『鷹嶺ルイ』が姿を見せる。




