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2話「怪しい人」

 2022年10月10日 13:00

「ちょ、おいおいおいおいおいおい!」

「お わあああああああああ!!!」

 みこちと星街ははるか上空から落ちていた。

「落ちてる落ちてる!」

「だから言ったじゃんバカ!ばかち!」

「おめーもノってただろーがよお!」

 第10回『holoRoyal』開催から5秒経過。ただしこの状況に至るまでの過程を理解するには時間を遡る必要がある。


 ――――――――――――


 2022年8月20日

「え〜〜〜!星街先輩今年もでないんですかあ!?」

 高校の部活動の時間、教室からは少女たちの声が聞こえる。

「だからあ、興味ないって言ってんじゃん」

 少し気だるげに答えていたのは都立零英高校三年異能部(幽霊部員)の星街すいせいである。

「でももう零英高校(うち)で招待来てるの星街先輩だけでしょ?ときの先輩は結局一度も参加せずに卒業しちゃうし……星街先輩まで3年連続バックレキメたらもう優勝できる人いないですよお」

「いーじゃん別に、皆が頑張んなよ。一般参加枠あるよ」

「いやいやいやいや!!」

 後輩は畏れ多いかのように手を顔の前に何回も振る。

「ふっふっふーお困りのようだにぇ!!」

 そこの現れたのは都立零英高校三年異能部部長のさくらみこだった。

「その初優勝……このえりーと巫女がとってきてやるにぇ!!」

 その表情は自身に満ちていた。

「あ、みこ先輩おっす」

「ちいっす」

 後輩たちは軽い挨拶を済ます。

「すいちゃんとの態度の差が激しすぎんよなあ!!」

「威厳がないんだよみこちには。にゃっはろー」

 星街が煽り混じりに指摘する。

「部長やぞお……」

 自分への対応にみこちは不満そうだった。

「……って、今なんて言いました?……優勝がなんて?」

 後輩がみこちの発言に疑問を覚え問うと、みこちはポケットから何かを取り出す。

「……じゃんっ!」

「それ!……招待状ですか!?」

「そう!ついにみこも運営がほっとけないガチエリートになったわけだにぇ!これで一般参加じゃなくて推薦参加で大会にいけるの!」

 みこちは招待状を仰ぎながら誇らしげに語る。

「すご……みこ先輩強かったんだ……」

「確か戦力レートB+だよ」

「まじい!?」

 後輩はみこちの意外な実力に驚く。話を聞いていた星街は何か言いたげだった。

「でもだからって優勝は大変ですよ?」

 後輩がみこちをいじるように言う。

「舐めんなよみこをよお!おサボりなすいちゃんの分まで……すいちゃん?」

「彩美、先生に公欠手続き出すって伝えといて」

「え、」

 みこちと後輩は困惑する。

「何言って……」

「やっぱ私も出るよ」


 ――――――――――――――


 2022年10月10日 12:30


「これにて参加を締切まあーす」

 場所はバトルロイヤル型国内大会『holoRoyal』の会場及び入場口。そこには多くの参加者がおり、その中にはみこちと星街もいた。今この瞬間参加の締切のアナウンスが流れた。

「これより第10回『holoRoyal』を開催します!参加者は今一度説明書をお読みの上入場準備をしてください!」

『holoRoyal』は能力者によるバトロワ制のサバイバル大会。参加者は既定のステージ(結界内)で他の参加者を撃破し生き残ることを目的とする。結界内で『戦闘能力喪失』と判断されると失格になり結界外部へ強制転送となる。ステージ内では定期的にミッションが発生し踏波することで大会を有利に進めるアイテムを獲得できる。また、参加者にはレートが振り分けられており高レートなほどサポートが厚くなるが情報は拡散される。他参加者の撃破やミッションを達成していくほどレートが上昇する。

「……この最後のルールが重要でね、名乗り上げることによるメリットとデメリットを加味しながら大会期間を生き抜くことが大事なのさ」

「ほー」

「いや、誰お前」

 みこちと星街は面識のない人物にルールを解説してもらっていた。当然のように受け入れているみこちを横目に星街が冷静にツッコむ。

「おっと申し遅れたね。私は西(にし)麻美杏(あみあ)。『holoRoyal』の常連参加者さ、君たちは今回初参加だろう?色々教えてあげようと思ってね」

「……どう考えたって怪しいと思うけど。何が目てk……」

「えー!優しいにぇおねーさんは!」

「はっはっは、わかるかい」

「……」

 星街は西を怪しんだが、完全に信じ切るみこちを見て呆れる。

「まあまあ青髪の子、心の余裕は大事だぞ」

「そ。器まで小さくなっちまったらだめだぞ」

「『まで』って何?……じゃあさ他の参加者の情報とか無いの?」

 みこちの言葉に引っかかるも、星街は冷静に問う。

「いいとも、得意分野だ。要注意人物の戦闘準備は大事だからね。そうだなまずは……あそこ」

 西が指を指した先には刀を持った狐の耳と尻尾がある白髪の少女がいた。

「白上フブキ、前年度の優勝者だ。狐の獣人種の固有(ユニーク)スキルで刀持ち、居合勝負に持ち込むと勝ち目がない。避けることも防ぐこともできないよ。実体験だからね」

 固有(ユニーク)スキルには種類が3つあり、それぞれ「獣人種」、「自然種」、「亜人種」がある。また、獣人種や自然種は見た目がスキルに引っ張られる特徴がある。

「海原ここな、一昨年の優勝者。去年は不参加だった。水神の『幻想種』だ、見つけたら逃げたほうがいい。幻想種はこれまでの大会でも2、3人しか確認されていないからね。」

 西に紹介された女性は水の羽衣を羽織っていた。

「そしてあれが不知火フレア、去年の好成績を残した『自然種』。本人の戦闘能力もさることながら、とにかくチームアップがうまくて厄介だ」

 紹介された不知火フレアの耳はエルフのような形をしていた。一人一人の紹介を2人は真剣に聞いていた。

「他にも見覚えのある顔がいる……けど、むしろ警戒すべきは初参加の奴らだね。……正直ね、今年の大会は魔境だよ。今あげた奴らレベル、なんならそれ以上の圧力がごろごろいる。心しておくことだね」


 ――――――――――――――


 12:55

「そろそろ開始だにぇ!」

みこちたちは西に案内されていた。

「……〔開始時刻と同時に参加はいずれかのゲートからステージに参加・転送される〕〔ゲートはランダムにステージの各地に繋がっている〕……ってあるけど」

 星街が説明書について西に問う。

「読んで字の如くさ、参加者はステージの『都市』『森林』『荒野』『特殊』いずれかの戦闘地域に転送される。転送先は選べないが誰かと一緒に参加するのは容易い。同じゲートから入ればいいだけの話だからね……だがこの会場には転送場所まで固定されている隠しゲートがいくつかある。」

「……」

 星街は未だ警戒をしている。

「ここのゲートは『都市エリア高域』に固定されている。都市エリアは遮蔽物が多く、非戦闘エリアへの移動も容易だ。立地の高い場所からなら他参加者を一方的に確認できる。私はこれ以上に優れたスタート地点はないと思うよ」

 (……筋は通ってる。説明書と矛盾も無い)

 星街は説明書と西の説明を照らし合わせていた。

「……嘘の可能性は?」

「私も同時にここから参加する。それではダメかい?」 


 12:59

『それではこれよりステージ参加を開始します。……3』

 すると、開始の合図がアナウンスされる。

「さ、いよいよ開始だ。準備はいい?」

「おー!」

「うん」

『2!』

 みこちと星街は気合を入れる。

『1……開場!』

 合図と同時に参加者全員がゲートには入っていく。その瞬間みこちと星街の足元には空中が広がっていた。

「うぇ?」

「あ」

 (空……!しまった、やられた!相手が飛行系のスキルだったら地形がそのまま罠になる……!)

 そして現在に至る。

「すまない二つ言い忘れていたよ!!一つは『高所』と言っても足場がないこと!もう一つは私のような『初狩り』に気をつけるべきと言うことだ!!」

 西は計画通りと言わんばかりな表情で言葉だけの謝罪をする。後ろからは西の仲間が現れる。

 (仲間まで……!)

「……みこち!バリア張って!」

「わがった!」

 ――花月ノ夢――

神布(かむしき)

 みこちたちの足元にバリアの足元ができる。

「いてっ!」

 みこちがうまく着地できずに尻餅をつく。

 (能力で足場を!落下だけでは仕留めきれないか)

 西が冷静に状況を把握する。星街が着地すると足場は大きく傾く。

「うおっ!?……もっと静かに着地できねーの!?」

「うっさい!……換装」

 斧を手に取ると、星街の魔力が光だし高く飛び跳ね攻撃を仕掛ける。

「来ます!」

 西の仲間が自身のスキルを発動し、身を守る。

鉄の翼(アイアン・ウィング)

 無慈悲にもそのスキルは星街の攻撃を防げる代物ではなかった。すかさず、もう1人の仲間が星街に切り掛かる。しかし、星街は攻撃は華麗に避ける。

 (空中でなんて身のこなし……!)

 反撃を受けもう1人の仲間も撃破される。

「次」

 (あと1人は……)

「……!」

 西は星街が他の仲間と戦っている間にみこちの方へ向かっていた。

 (先にピンク色(足場)を獲る!)

散弾銃(パニック・ガン)!!」

 西が魔力の弾で飽和攻撃をする。その弾はみこちに直撃する。

「皆んなしてみこをよお……!」

 (バリア……は想定内、が無傷!?)

 直撃したのにも関わらず無傷なみこちを見て驚愕する。

「舐めすぎなんだよお!!飛斬(かまいたち)!」

 みこちはお祓い棒に魔力を込め斬撃を飛ばす。


 13:02

 さくらみこ、星街すいせい入場完了

 西麻美杏他2名 脱落


「みこがリーダーやったからみこの勝ちだにぇ!あと足元も出した!」

「はぁー?すいちゃんは一気に2人やったんだが?あと私だけなら無傷で着地できる」

 ほぼ同刻、上位候補として名前の上がっていた常連参加者13名が脱落する。

補足

西(にし)麻美杏(あみあ)と御一行」

大会常連参加(一般参加)の能力者。

常連の間では初心者狩りで結構悪名高い人です。飛行能力系のスキルで固めています。炎特性の魔力を扱うことができ、それをジェットとして扱うことで飛行できる様子。ただしスキルの特性として、温度や攻撃範囲はそこまででも無いので、燃費の良い扱い方を心がけています。実力は実はそこそこですが、相手が悪かったですね。

仲間(刀持ち)

亜人種。空を面として足場にするスキルを持っています。魔力をほとんど使わない身の丈に合ったスキルです。攻撃手段は剣術ですがやはり相手が悪かったですね。

仲間(翼)

鳥類の獣人種。獣人タイプは魔力が少ないので、スキルを拡張して翼を硬化させる能力を得ました。硬度は鋼そのものですが相手は星です。無駄でした。

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