18話「大きな存在」
カッコいい私は好き。カッコ悪い私は嫌い。
カッコ悪いを見られるのはもっと嫌い。
だから仲間とかチームとか……なんか
避けてた
星街が自身の能力の反動で体力が尽きてしまい戦闘不能になり、百鬼あやめの相手をみこち1人が引き受けていた。
あやめが斬撃を飛ばすとみこちがバリアを展開する。しかしすぐにバリアは切られてしまう。
(『神布』が斬られた!じゃあこれは……)
みこちはその場で動かずにいると斬撃がみこちをする抜け通り過ぎていく。
(みこ自身は斬られない……!でもやっぱ怖ぇ!!わかってても超怖ぇ〜!!!)
みこちは恐怖心から心臓の鼓動が大きくなる。
(見切られたな……この子も斬撃に慣れてきてる。でもまぁ、もう一対一になったし……二本目も使……)
「……あれ?」
(2本目が抜けない……)
あやめは2本目の刀を使おうとするも鞘から抜く事ができなかった。あやめが目を向けると星街が立ちあがろうとしていた。
(あー青い子がまだ戦う気あるんだ。魔力切れしてるのに元気だなぁ。でもそれだと余が二刀流できないし……先に退場してもらお)
あやめが斬撃を飛ばすと星街が間一髪のとこで避ける。しかし星街はその場で倒れてしまう。
(あー…………無理なやつだ)
懐かしいな、そらちゃんの代が卒業してからなかった感覚だ。
いや……公式戦とか試合に限ったらどうだろ。
もうずっと無かったかも。
いつぶり?それこそ中学生とか?
小さい頃はボロボロだった。
固有スキルが身体に合わなくて
周りからはやめた方がいいって言われた。
強くなる前は楽しかった。
できると楽しい。できないと悔しい。
多分負けず嫌いだった。
だからやりたいことは大体できるようになった。
天才って言われるようになった。
悪い気はしない「天才」は悪口じゃないし。
ただ相変わらず負けず嫌いだった。
悔しいし弱いところを見られたく無かった。
追い込まれる事は良くても負けるのはやっぱり嫌。
カッコ悪いところを見られるのが嫌。
心配されるのが嫌。
大丈夫?って言葉がなんか……嫌。
だから仲間とかチームとか……なんか
ずっと避けてた。
カッコ悪い自分を見られるのは、嫌。
星街は向かってくる斬撃になす術なく呆然としていた。
「ふんっ!!!」
するとみこちが滑り込むようにバリアを貼り星街を守る。
「みこち……」
直前で攻撃を防がれたあやめはムッとする。
「ぼさっとしてんじゃねーほしまち!!!みこ1人で勝てるわけねーだろ!!!!!」
こんなことをこいつに前にも言われた。
大丈夫?は嫌。だけど
これは悪くないかもって思った。
「………あはっ!何そのカッコ悪い応援」
「あんだお!」
カッコ悪い自分を見られた。
それはまぁ変わんない。
けど
そんなことどうでもよくなるくらい
――――こいつはムカつく!――――
「余計なお世話!あほみこち!!!」
星街の目に再び光が戻る。みこちと星街が再び肩を並べる。
(気力で持ち直した……いいコンビ。煽り煽られうちの人達みたい)
あやめが2人を見てあくあとシオンを重ねる。
「みこち……ちょっと聞いて」
星街がある作戦を提案する。
あやめが斬撃を飛ばし始めるとみこちがバリアを展開しながら特攻する。
(ピンクの子はガード頼り。青い子は気力こそ取り戻したけど魔力切れは変わらない。ならこっちも単純に押す!!)
あやめが魔力を込めて強い一太刀浴びせる。みこちはバリアでガードするも、斬撃の威力に押し飛ばされる。
(攻撃強い!止められない……は仕方ない!すぐ立て!)
みこちがすぐ立て直しガードを再展開するとあやめが素早く指を振り一度に複数の斬撃を繰り出す。
みこちが再び押し飛ばされるも勢いを落とさずあやめに向かって走り出す。
(ガード硬い。破れない…………けど押し切れる。このままで行ける。青い子は……今は放置!)
……って思ってる頃だろ!!!
みこちの背後から星街が現れる。
星街すいせいの能力の系統は『超越者』、常闇トワや天音かなたと同様に外部から魔力を補充する。
よって理論上その魔力が尽きる事はない。
だたし、外部の魔力は人体に大きな負担をかけるため常闇トワをはじめとする幻想種は自らの膨大な魔力で外部の魔力を御していた。
星街すいせいは幻想種ではなく亜人種である。亜人種の魔力量では外部の魔力を御する事はできず能力で身体に負担をかけてしまう。
裏を返せばそれは、幻想種のように外部の魔力を扱うために自身の魔力を消費する必要がないということ。
幻想種がデメリットを帳消しにするために消耗する魔力を、デメリットを享受することによって温存できていたことになる。
すなわち
星街すいせいは身体の負担で戦闘困難になり能力の使用もできなくなったが、本来持っている魔力はまだ尽きていない。
星のエネルギーを利用した攻撃と比較すれば矮小なものではあるが
(こういう操作は得意じゃないんだけど……即興、あくたんのアレ風……!)
星街があくあの技を想像し指先に、魔力を込める。
星街すいせいの能力を知らず、魔力切れと断じていた百鬼あやめにとっては
「……………………銃」
――――痛恨の一撃――――
星街が放った魔力の弾があやめに命中しあやめが転げ倒れる。
「よっし!」
2人は作戦が成功し歓喜の声を上げる。
(やっぱり!どんなに強くても自然種だ。攻撃をいなすのが上手かったけど、ちゃんと当たれば耐久は脆い!)
「みこち!」
「わーかってる!!!」
(花月ノ夢……)
「そこまぁぁぁあああああでぇぇぇぇぇええ!!!!!!!!!!!」
みこちが槍を生成を作り出しトドメを刺そうとしたその時だった。
その場に耳が痛くなるほどの大声が響く。
「双方!そこまで!!」
その場に現れたのは大空スバルだった。
「スバル……!」
あやめがスバルの顔を見ると安堵した様子を見せる。
「今こっちのメンバーがお目当てのミッションを完了した!今後も大会のためお互い仲間を失うことは得策ではない、そのため報酬ボーナスアイテムを二分して山分けすることを条件に互いにこの場から退却すること!……だってさ」
スバルが携帯機のメッセージを見せながら読み上げる。その画面には大神ミオと表示されていた。
――――――――――――――――
「フレア無事か!」
「…………ぶじ」
「無事じゃないな!」
ポルカがフレアを担ぎながらあくあとシオンの攻撃終われていた。
(まじでやばいな……どうする?これだけの量、フレアの炎でも無理だ。ノエルの位置から離れてるし助けは期待できない。…………うーん、やっぱりやるしかないか)
ほんと、損な役回りだよ
「フレア、この場はポルカが納めてあげるから」
「ポルカ……?」
ポルカが何か覚悟を決めるとフレアをその場に降ろす。
「『あの約束』頼んだよ」
「待っ……」
「ポルカの能力は!対象の姿と能力を模倣する『写仮面』!模倣する対象に制限はない!自前の魔力で再現できない要素は体力で代用することで模倣可能になる!……だからあまりに自分と違う存在は模倣できても数秒でこっちがダウンする。でも逆に捨て身なら人智を超えた存在でも模倣できるんだ」
(まさか!!)
ポルカの説明を聞いたシオンが察すると酷く焦り出す。
「あくあちゃ……」
「それが幻想種の模倣でもな!!!!!!!」
――――『写仮面』――――
「『魔乃……!!!!!」
ポルカが変身しようとしたその時だった。その場に大きなアラーム音が鳴る。その音に全員が注目する。
「これは……」
(付近での大規模ミッション終了の合図……?まさか第三者に漁夫られた……!?)
するとシオンの通信イヤホンが受信する。
「シオンちゃん、終わったよ。そこの2人と話したいから開けてくれる?」
「……はーい。開けるよ、あくあちゃん」
「えっ?うん」
すると水の壁が門のように開く。
「また会ったねピエロの子。ウチの能力はうまく使ってる?」
「大神ミオ……!?」
「……で、ちょっと話が」