17話「共鳴する鼓動」
共鳴する鼓動
不知火フレアの能力『不知火』は中世の異能時代に存在した不知火宗家を中心とした炎特性の魔力を用いる一族相伝の能力だった。
当時木造建築が主流だった日本で中・遠距離の長期戦を制した。一族としての括りが無くなった現在でもその血筋に能力が受け継がれている
炎の特性と出力、才能に恵まれた不知火フレアはこの能力に異を唱える。
現代異能のセオリーは能力の強さ=『才能』×『発想』が5割と5割
あくあが傷を回復させながら向かってくるフレアに構える。フレアが蹴りかかるとあくあが水で防御する。しかしフレアの足かた水蒸気が発生している。
(打撃に纏った炎で水が蒸発してる!削られる!!!)
フレアの自己流は『不知火』の得意である遠距離を捨てた技。
『不知火・刀厨』
射程を身体の届く範囲にまで絞り高密度の炎を纏う『攻防一体灼熱の鎧』
『不知火・血厨』
ジェット噴射の要領で推進力を確保し確保し機動力と打撃力を爆発的に向上させる。
『不知火・灼厨』
射程を中距離に限定することで鞭のような操作性と出力を確保した。
そして『不知火・三厨』は上記三つの技術を同時に行使することでそれぞれの速度・出力・範囲を補強し合う。
不知火フレア全力の戦闘形態である。
あくあが圧縮した水で攻撃するもフレアはジェット噴射を利用し避けつつ背後に回る。
あくあが振り向く間もなく広範囲高火力の火柱を立てる。火柱が消えると水を纏ったあくあが立っていた。
(耐えた……?いや……残りの魔力で身体強化と併用したのか。よく反応する……これじゃ三厨の速度にもすぐ適応されるかも)
「怖いなぁ」
あくあは酷く消耗しており、回復もままならない状態だった。
(……けど、今のでエネルギー切れでもう決着はついた。あとは……)
「………………来たな」
そこに現れたのは紫咲シオンだ。
「あくあちゃん!!!」
シオンの高火力の砲撃がフレアを襲う。フレアは避けるもあくあから離される。シオンがあくあの手を取る。
「逃すかぁい!!!!!」
そこにポルカが飛び蹴りで突っ込む。衝撃であくあとシオンが吹き飛ばされる。
「ナイスポルカ!!!」
(あとは救援諸共狩るだけ!!これで…………)
――――『写仮面・天花詞経』――――
挟み撃ちだ!!!!!
――――『不知火』――――
フレアとポルカの攻撃がシオンとあくあを包むように衝突する。
「……これであとはノエルの相手と、そんで1番の問題はあの鬼かぁ……どうするかな。おーいポル………え?まさか…………」
――――『調律共鳴――――
シオンとあくあは渦を巻いた水に囲まれ身を守っていた。反撃の広範囲魔力放出にフレアは後ろに下がらざるおえなかった。
「フレア!」
「ポルカ!無事か!?」
フレアとポルカが合流する。
「おるよ!…………状況!さっきも言ったけど紫咲シオンは魔力を消耗してない!だいぶ削って体力も消耗してるんだけど、魔力だけは健在なんだよね」
「……魔法か、何か知らないカラクリがあるんだろうね。湊あくあは体力をかなり削りつつ魔力は枯渇させた。……はずなんだけど今水の攻撃してきたね」
「多分『共鳴』だ、2人分のエネルギーを同調させて増幅させる高等技術。能力と並行して『共鳴』を扱える技量があるんでしょ」
「並行して!?嘘だぁ!?」
「聞いたことない話じゃねーよぉ?すごいけど」
ポルカはシオン達が猫又おかゆと戌神ころねの野生共鳴と同じような技量があると考える。
「……でもそれなら『共鳴』によるエネルギーの増加は乗算で2倍だ。つまり枯渇した状態で使っても一時凌ぎにしかならない、回復技なんてまずできないよ。ただ湊あくあは場にある水も回収できるから注意ね。水に変質した魔力は物質として安定してる。あたしたちの魔力放出がボールを投げてるようなものだとしたら、彼女のは手が増えたようなものなんだよ多分」
「水を回収ね……亜人種の魔力量不足を補ってるわけだ。なる……」
(まさか……!)
ポルカが何かに気付くと一気に焦り始める。
「フレ……」
「来るよ!!!」
シオンとあくあが降りてくるとフレアがあることに気付く。
(あれ………?傷が……治ってる……?)
マーリン14番『海想列車』転法
――――『妖王の孤島』――――
フレア達の目の前に一瞬水族館のような情景が溢れかえると水の壁に囲まれる。
(退路が!コレは……閉じ込められた……!!!)
ポルカが見渡すと外の状態が水によりわからなかった。
(これだけの量の水『共鳴』で増えたんじゃない、やっぱり回復したんだ!)
「どうやって……」
フレアが冷や汗をかいているとシオンが呆れた表情を見せる。
「ちょっと『湊あくあすごい』とか思ってない?開府してあげたのシオンだからね?」
「まさか……魔法の技術は回復技まであんの……?」
ポルカが聞くとシオンが手本のようなドヤ顔を見せる。
「そうあるよ。まぁ……」
「でも!水特性の魔力を持ってないと使えないけどね!」
するとあくあが食い気味に説明する。その説明にポルカはピンときていない様子にフレアが捕捉する。
「つまりシオンちゃんは魔法を知ってるけど水特性が無くてあくあちゃんは魔法を知らないけど水特性がある。……でもそれを今シオンちゃんが使ったってことは……今はシオンちゃんも水特性を持ってる……?」
「……!共鳴の副次効果か……!」
『共鳴の副次効果』
本来『共鳴』で発生する効果はエネルギーの倍化のみだが、特に相性のいい者同士で行うとそれ以外の効果が発生する。
猫又おかゆと戌神ころねは身体能力の倍化と五感の共有。今回の場合はお互い魔力倍化と、魔力の特性が共有される。
「その通り!だからあてぃしのおかげ!」
「いや、普段は使えない魔法まで覚えてるシオンがすごいんですけど!今回復してあげたのはシオンでしょ!」
「はー⁉︎あてぃしは自分で回復できますぅ!」
「今できてなかったじゃん!」
シオンとあくあが子供喧嘩のように言い合う。
「……『特に相性のいい人同士』か……?」
「いやあれは最高にいいね、てぇてぇ。」
何故かポルカは腕を組んで熟練のような反応をする。
「とりあえず今はこの壁を……」
フレアが蒸発させようとするとそれに気づいたあくあが全方向からフレアに攻撃をする。
「フレア無事か!」
「なんとか!」
「さっきみたいに蒸発させて出れない……?」
「無理そうだよ。2人でやってるからか知らないけど出力も総量も跳ね上がってて、海を干上がらせるようなもん!」
するとまたポルカ達に水の攻撃が迫る。
「どわっ!」
(囲まれた全方位から攻撃が飛んでくる!とても捌き切れない!かといってこれ以上の『写仮面』使用は逆に動きが落ちて命取りだ。それで脱出も無理か、どうする……!)
――――『不知火・刀厨』――――
フレアが炎を纏うも高出力な攻撃にフレアが圧倒される。
「フレア!!!」
フレアは静かに驚愕していた。
(完全に押し負けた……!ここまでやるか……共鳴と能力の併用……!)