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第9話 村人達の狩り

 転生物あるある言いたいシリーズ その3


 だいたいその辺の森に入るとバンバン伝説級の魔物が懐いてくる&仲間になる&怪我とかしちゃってる。ドラゴンだとかフェンリルだとかスライムだとか。魔物に人の心ありすぎ! 獣なんだから人間のことわりとは違う生き物なんだから!などと真面目に突っ込んではいけません。作者が日本人だから伝説級の魔物なのにやけに日本人くさい思考などとは思ってもいけません。


 これは転生物の中でもハーレムに次ぐ懸念事項ですよね。強い魔物をテイムするとブランドと一緒で相手にマウントとれますから。「あなたとは人間ランクが違うのだ!」と実にわかりやすく自尊心を満足させてくれるもんね。自分もだいぶ満足させてもらいました(はーと)。


 というわけで僕もちょっと森の奥に入ってきました。もちろんそんなに簡単に魔物や獣は人間に懐いてくれません。懐くどころかものすごい警戒&攻撃性をもって接してきます。こちらがなんとか懐柔しようと、素手なんか差し出したら食いちぎられること間違い無しですよ。


 これがリアルです。


 森の奥深くは魔素が濃くなっているので、奥に入れば入るほど魔物は強くなる。魔物ではない獣もいるが、やはり魔物との遭遇率のほうが高くなる。


 第一魔物発見。オオカミのリフランだ。


 すでに遠くから匂いを嗅ぎつけたのか、こちらに向かって走ってきており後10秒で合流という感じかな。あのするどい牙で僕の喉元を初撃で食いちぎる気まんまんなのだろう。


 もうすぐ目の前に…だが安心だ。すでに処置は終わっている。


 ガイーーーーン

 「キャン」


 オオカミの目の前の何も無い空間に出鼻を弾かれて(物理的に)、悲鳴をあげたオオカミが横に倒れ崩れる。すかさず手に持った木の剣で上から叩きつけて、弱って伏せている所を心臓めがけて一気に突き刺す。


「キャッギギギ」


 オオカミはしばらく痙攣をし、ぐったりと息絶えた後、まるで吸い込まれるように地面へと消えていった。その場に残された小さなキューブを拾い袋にしまう。今のところ何に使えるわからないが、一応秘密基地に貯めておくのだ。


その後もオオカミ2匹、猿の魔物を倒して今日は戻る。いずれも一階位のリフランだった。初めは1匹でも手こずったのだが、今では一階位程度なら2〜3匹までなら同時に相手に出来るようになった。これならもうちょっと奥までいけるかな…行ってみようかな。


 秘密基地に戻る道中、小腹が空いたので動物を狩ってさばいて焼いて食べて、くつろいでいると眠気が襲ってきた。は〜なんか疲れたな。


 このままここで寝たい欲求を押さえ、ふらふらとした足取りでゆっくりと村へと帰る。寝床に着いたら秒で寝た。




 「セイ、お前もイノシシ狩りについてくるか?」

 「えっいいの?」


 そう声をかけてくれたのは村人のタナンさん。22歳ぐらいのいつも面倒見の良い兄のような存在だ。村人の中では強いと思う。多分一階位ぐらいはあるんじゃないかな。


 「興味あるなら俺たちが獲るところを見学にくるか?」

 「うん、行く行く。」


 僕は喜び勇んで付いて行った。だって初めて誘ってくれたのもあるが、他の人がどうやって獣を狩るのかを見たかったからだ。ぶっちゃけ僕もイノシシを狩ってる。鹿とかも。


 でもだいたい“命素”のごり押しで獲ってるので正規の狩りの仕方を見ておきたかったのだ。


 「うし、じゃあ今からすぐに行くから付いて来いよ。」


 そう言ってタナンさんとその他大人2人の後ろに付いて、僕を含めて計4人で森の中に入った。その他扱いしたけど、もちろん大人2人も昔から知っている人だ。タナンさんの腰巾着だ。強いものに巻かれまくっている子分みたいなような人達だ。でも子供には優しいんだよ。


 「タナンさんイノシシってどうやって獲るんんですか?」

 「罠だな。」


 「罠?」

 「ああ、穴を掘ってそこにイノシシを落として上から多勢に無勢で仕留めるって方法だ。」


 胸を張って答えたタナンさん…なんか思ってたのと違う。もっとこう、荒ぶる男たちがイノシシと鬼気迫る死闘なんかを…


 「クククッなんだセイ、なんか思ってたのと違うって顔してるな。まぁ聞くとそう思うかもしれないわな。まぁ見てろって。」


 他の二人も苦笑いだ。まぁ確かに穴に落としてボコスって聞いたらしょぼく感じるかもしれないけど…ここは黙って見ておこう。


 「もうすぐ1個目の罠だ。かかっているか見てくるから、お前らはここで待機してろ。」


 そう言ってタナンは走っていって、すぐに戻ってきた。


 「ダメだ、近寄った形跡もなかったから次の罠に行こう。」

 

 また次の罠まで4人固まって森の中を歩く。この辺りはまだ魔物が出るような深さではないが油断は出来ない。無駄口をたたかずに進む。結局その後の2つの罠もスルーだったようで、最後の罠に向かう。


 「最後の最後でイノシシがかかっていた。お前ら準備しろ。」

 

 罠にかかったイノシシを確認したダナンが指示を出す。僕は危ないので木の上に登って上からその様子を眺める。なんか見下ろすと偉そうだな僕…。


 上から見ると状況がよくわかる。結構深い穴に体調2m〜3mぐらいのなかなか大きい丸々としたイノシシが落ちていた。タナンさん達人間を見た途端にあばれだした。イノシシはあの牙が危険だ。油断すると大怪我を負う事になる。結構命がけなのだ。


 穴の上から3人が同時に長い槍で突き刺す。しかしこれは本気の突き刺しではなく正面のタナンの方へ向けるための軽いジャブのようなものだ。暴れたイノシシが大きく顔をあげのけぞった瞬間を見逃さず、タナンは首元に槍を突きつけた。


ブシューーー


と音が聞こえそうなぐらいに血が噴き出した。それを確認したタナンたちはイノシシが弱りきるまで状況を見守り、しばらくしてぐったりと地に伏したところを確認してからそっと穴に降り、とどめを刺した。


 その後みんなで穴からイノシシを持ち上げて血抜きをして、水場で洗い流す。そしてその場で肉を切り分けて解体した。なかなか大きいイノシシだったようで、僕も肉の入った大きな荷物を担いで帰った。


 「どうだった? 地味だったか?」

 「ううん、そんな事無い。みんなすごいよ、あんな大きなイノシシを! 一人一人の役割、チームワークが大切なんだなって思った。」


 「ああ、それに獲ることも大事なんだが、罠を仕掛けるのも大変なんだぞ。イノシシが通りそうな道を探したり餌でおびき寄せたり、本当に地味な積み重ねでやっと狩る事ができるんだ。」

 

 タナンの子分たちも誇らしげだ。イノシシの肉はとても重かったが、帰ってきたと同時に村で僕たちの出迎えがあった。そして仕留めた大量のイノシシ肉のお土産に歓声があがった。今日は久しぶりに肉入りの夕飯だ! まぁ僕は昨日も食べてますけどね。


 みんながこんなに喜んでくれるなら僕が狩った動物も村に渡そうかな…でもやっぱり僕がもうちょっと大きくなってからにしよう。

 

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