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第15話 ピサーロの考察

この世界に神は存在すると思うか?


そう質問した時に“存在する”と答えた人は、実に世界人口の7割に達したという。


この世界には宗教は1つしかない。


普通長い時を経て、いくつもの国が興ったり滅びたりすれば、色々な宗教や宗派が生まれそうなものなのだが皆が感じる神の存在というのは、いつの時代を経ても同一のものであるという証左しょうさではないだろうか…。


その唯一の宗教というのはオリナス教だ。


オリナスとは神の御名みなではなく、初めて神と対話した男の名前、後の始祖となったオリナス・ダブスから取った教団名だ。


世界各地、大きな都市から地方の小さな村々にもオリナス教会はある。


そこには神の偶像などは存在しない。教祖であるオリナスの像があるのみだ。しかし信者は教会のお祈り時にはオリナスの像を拝んでいるのではなく、オリナスの像を通して神に対して祈りを捧げているのだ。


教祖であるオリナス・ダブスは神の偶像崇拝を禁止した。


神は人間が想像出来る範囲外の別次元の存在であり、我々が神のお姿を人間の常識の姿形に似せて創造するなど烏滸おこがましいという理念によるものだ。


しかし人間というものは目で見えるものしか信じない、弱くも愚かしい生き物であるので、オリナスの像を作り、像を通して神に祈り、自分自身と向き合いなさいという教義だ。


このオリナス教も全国どこにでも津々浦々ある巨大な組織ではあるが、あくまでも神を信じる者同士の助け合いの組織、互助機関のようなもので教団の幹部が権力を傘に私腹を増やしたり、教団を意のままに操ったり出来るようなものではない。


信者たちも神の存在を身近に感じているからこそ神を崇拝しているわけで、決して教会に依存しているわけではないのである。


教団の教義も戒律のような厳しいものはなく、どちらかといえば神という偉大な存在に感謝しつつ日々の生活を穏やかに過ごすといったものだ。


苦難にあった時に救いを求める存在などではなく、いついかなる時にも優しく見守っていただいている事に感謝するといった精神的な象徴に近いものだ。



話を元に戻そう。“存在する”と答えた人は世界人口の7割に達すると言ったが、そのほとんどが階位を得た者達だ。


リフランと呼ばれる魔物がこの世界には蔓延している。その生態は長年謎で、どこから現れるのか、そして消えたらどこへいくのか未だに分からないままだ。


人間にとっては脅威でしかないこの魔物達は、我々人間が倒すことにより“階位”という人間の「存在」と言ったらよいのか、「格」と呼んだらよいのか…とにかく我々人間を上位の存在へと引き上げてくれるのだ。


この“階位”というのは、誰もが得られるものでもない。上位の存在になるための素養が自分自身に無ければ、どれだけ魔物を倒そうが“階位”は上がらないのである。


素養というのも曖昧な定義であって詳しいことは何も分からない。


その“階位”を授かった時に多くの人が神の存在を感じたと答えた。それは一階位上がった時の人もいれば、三階位に上がった時の人もいる。感じる時期はマチマチらしいのだが、神の存在を信じる一つの切っ掛けになっていると言ってもよいのであろう。


階位を上げる前から神の存在を信じているから存在を感じるのか、階位が上がって神の存在を感じたから信じるのか…それは人それぞれである。


一説によればこの“階位”というのは“神に至るための階段ではないか?”と言われている。


“階位”を上げれば上げるほど神に近づく、もしくは神自身になれるという説だと思うのは、我々人間の愚かしさだろうか? それとも傲慢なのだろうか?


しかし、かつて500年前に人類最強と言われた“十階位”到達者であるゴルダン・スファル様のお言葉が書き写されていた書物には…


「“十階位”などでは、未だ到達点などではない。人類歴代最強と言わしめた我でさえ神の御御足おみあしにさえ届かぬ矮小な存在なり! 無念」


との記憶が残っている。その後この世界には“十階位”は存在していない。今現在は最近“神殺し”を経て最上階位に就かれたファミル・シエル様の“八階位”だ。


ファミル・シエル様は“神殺し”を体験した時に

「私は白い空間で神と対話した。」


と証言されている。その対話の内容は明らかにされてはいないが、いずれ皆にも分かる日がくるだろうと意味深な言葉を残して、所属する国によって秘されている。


果たしてこの“階位”の謎が解かれる日が来るのだろうか。その時我々人類にはどんな変化が訪れるのだろうか?


最後に、願わくば伝承の“セイントフォー”に私の命があるうちに是非ともお目にかかりたいものだと記して終わる。

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