トカゲになるまで
「ね?パパ、今日遊びに行っていいでしょう?かれんちゃん家に!」
「いけません、最近は病気が流行ってるでしょう?政府も外出を控えるように言ってるでしょう?」
「せいふとか知らないもん。大丈夫なの絶対に行く。」
「パパ、まだまだ大丈夫なんじゃない?ママはお医者さんだからわかるけど、現時点で日本なら感染の心配はあまりなさそうよ。国の人は少しこわがってるだけのよ」
「ママ、ありがとう!行ってきまーす!」
ランドセルを投げ捨てて勢いよく家のドアを開けた女の子は学校では1番元気な女の子、マミちゃんです。
最近では主に海外で肌がみるみる鱗肌になり緑色になる感染症が流行っています。病気にかかると、肌が痒くなり、身体が重く動かなくなります。だけどマミちゃんのような小学生のお友達は遊びたいざかり。お友達と遊びたいからこうやってみんなお父さんとお母さんのお願いします。学校は時々しか行くことができなくなってしまいました。それでもお友達会える時が楽しみで時々の学校はみんなにとってはとても楽しい一時になりました。
「ただいまー。」
大満足で靴を脱ぎ捨ててリビングに向かうマミちゃんはパパとママのこんな会話を聞きました。
「日本上陸…ついに来てしまったわ。」
「もう、マミもお友達に会えなくなるのかな。そんなの可哀想だ。」
マミちゃんはなんとなくパパとママが悲しい顔しているのがわかりました。
「それでもまだ大丈夫なんじゃない?感染した人は隔離しているみたいだし。」
ママのその言葉を聞いてマミちゃんは安心しました。
季節が変わってだんだん寒くなってきました。それでもみんなあいかわらずお友達と遊んでいます。そんなある日いつものように皆でマミちゃんは大縄跳びをしていました。その時
「あれ?マミちゃんの肌、なんか変。お顔がカサカサしてる。」
「本当だ。あれ?緑色だ!?」
「うつってる!気持ち悪い!化け物女だ!」
「やだー、私もこんな顔になったら結婚できない!」
みんなだんだんマミちゃんから離れていきます。
「待って、みんな待って。マミは大丈夫だよ?」
「喋らないで!うつるでしょ!」
こうしてマミちゃんにとって学校やみんなと過ごす時間は楽しくないものになってしまいました。
やがてマミちゃんのように病気になった人が急激に増えてきました。お医者さんたちは手に負えなくなりました。やがて「シェルター」という隔離する場所ができました。マミちゃんはそこのお友達は優しいから喜んでいけたけどパパとママは泣いていました。そこはあまりお医者さんが来ないからです。ご飯おもちゃも少ない、パパとママにも会えません。でもお友達がいるのは嬉しかったです。
そんなある日マミちゃんと同い年ぐらいの男の子がマミちゃんに話しかけました。顔は久しぶりに見る肌色のキラキラした目の男の子でした。
「緑じゃない…。」
マミちゃんは「普通」の男の子が話しかけてくれるのが不思議でなりませんでした。
ある日マミちゃんは男の子に聞いてみました。
「ねぇ、なんで大ちゃんみたいな普通の子がマミに優しくしてくれるの?」
大ちゃんはふっと笑っていいました。
「普通?というのじゃないと思う。俺も。」
そしてお腹をめくってみせました。お腹が真緑でした。でもマミちゃんは驚きはしませんでした。
「お揃いだ。おかしいね。」
二人は笑いました。
あれからどれだけたったのか、今度は暑くなりました。
マミちゃんの肌はどんどん緑色になっていきました。
周りのお友達はだんだん静かになりました。
職員さんは寝ていました。
ある日、二人はおままごとをしていました。
ふと、マミちゃんが
「ねぇ、大ちゃん。大縄跳びしたくない?」
「二人でか?うん、そうかも。でもとべない。」
「それなら、ほら。足に巻いてあげる。」
マミちゃんは部屋の椅子の上にあったロープを自分と大ちゃんの足に巻き付けました。
「お揃い、おかしいね。」
「くすぐったいよ、おかしいよ。」
「大ちゃん、おもしろい?笑ったね。」
「うん、おかしい。ね、マミちゃんさ。俺、川遊びしたい。」
「いいね、服脱ぐの恥ずかしくて行けなかったからね。」
「じゃ、行こうか。」
「うん。」
二人は部屋から、シェルターから抜け出してシェルターの近くの川に飛び込みました。ドアが重かったけどなんとか開けて、やっと外に出ることができました。二人はだんだん自分の体が軽くなっていくのがわかりました。
「大ちゃん、パパ、ママ。大好き。」
あれから、あの川は埋められました。あの川は花がたくさん咲く沼地のようなものになりました。