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リミットブレイカーズ  作者: money
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リミットブレイカーズ

 街外れの森の中にある古臭い木造建築、普段人など寄り付かずポツリと取り残されたその建物に、今日だけは多くの若者が集まっていた。

若者たちは机と椅子が並べられた室内に押し込まれ、「始めっ!」の合図とともに一斉にペンを取り、みな用紙に回答を書き始める。

張り詰めた雰囲気の中、カツカツという音だけが部屋を支配する。

しかしながらこれに囚われないものが一人、私の隣にいた。そいつはぶつぶつと何かを言っているようだ。


「なんだよこれ、ペンなんて持ってきてねーよ。どうすっかな」


どうやら筆記用具を忘れたようだ。わざわざ試験を受けに来てペンを忘れるなど余程のバカなのか、

何はともあれこのまま隣でぶつぶつと独り言を言われればこっちの集中も途切れる。私はペンを隣へと転がす。コロコロと転がったペンはそいつの手に当たり止まった。それに気づいたそいつはじーっと私の方見た後、ニカッと笑い手で合図をする。私は横目でそれを見ながらようやく自分の問題に取り掛かった。

大分時間はロスしたけど大丈夫でしょ、筆記試験とは云うけれど常識問題ばかりのようだから。


問.LBとはなんの略称か?またそれが何か説明せよ

解.リミットブレイクウイルス

リミットブレイクウイルスとは突如地球全体を襲ったウイルスである。そのウイルスには生物の限界を破壊する性質がある。


そうこのLBウイルスのせいで私たちの世界は変わってしまった。かつて人類はその知能と数で他の種族を圧倒していたという。しかしこのウイルスが蔓延してから生物の進化は歯止めが効かなくなり、巨大化した動物たちが暴れまわったり、大増殖した虫たちに土地を支配されたり、ついには人類と同等の知能を持った生物まで現れ出した。当然世界中で大混乱が起こり、人類は大激減し、衰退していった。


問.リミットブレイカーズとはどういう組織か?

解.暴走した生物に対抗すべく、人類が立ち上げた傭兵組織


もちろん人類はただ衰退していったわけではない。ウイルスで進化したのは人間も例外ではなかった。その人間離れした力を持った者たちは人類を守るため結束し組織を創った、それが「リミットブレイカーズ」である。

なーんだけっこう簡単なのね、LBsライセンスの試験というからどんな難しい問題が出るのかと思ったけど身構えて損したわ。少女はその後もスラスラと問題を解いていく。そして最終問題。


問.今最も強いと考える種族を理由もつけて答えなさい。


むむっ!ちょっと難しいわね、統率力でいったら犬人族だし、海の中なら魚人族、それに最近大幅に勢力を拡大していっている猫人族も捨てきれない。まあ少し前だったら魔族が圧倒的だったでしょうけど。回答に少し苦戦しているとまた隣から声が聴こえてくる。


「おっ簡単じゃん。今まで全部分かんなかったけどこれなら答えられるな~」


           □□□


 試験は終了し、少女はふうっと息をつく。さっきの張り詰めた空気は解放されざわざわと皆席を立ち始めた。


「さっきはありがとな!」


声とともにペンが目の前に差し出される。スッと顔をあげるとそこにはさっきの男が立っていた。


「たいしたことじゃないわよ、気にしないで。」


私はペンを受け取り、立ち上がる。男は綺麗な白髪をしていた。青い瞳に中性的な顔立ち、美形といった方がいいだろうか。さらに男は黒い帽子に黒いマントを羽織っていてそれが余計に髪の白さを際立たせる。少し間見惚れていると、男は不思議そうに首を傾げる。私は我に返り、首を横に振る。


「それにしても筆記用具を忘れるなんて相当なドジなのね。」

「こんなムズかしいテストがあるなんて知らなかったよ。強さだけじゃダメなんだな。」


「難しい・・・まああんた終始頭抱えてたみたいだしね、でもあんなテスト皆出来て当然だから実技試験の方が実質本番みたいなもんよ。」


そういいながら次の実技試験の会場へと足を進める。


「そう言えばあなた名前は?」

「俺の名前はサクア。お前は何て言うんだ。」

「私はアンナ。よろしくね。」


もちろんこの男もLBsライセンスを取る上でライバルに違いはないが、不思議とこいつに対してはそういう気分にはならなかった。サクアの呆気ら感とした雰囲気がそうさせるのか。


「あっ」


ふと試験の最中のことを思い出す。


「そういえばあんた、最後のあの問題!簡単だーなんて言っていたけどなんて書いたのよ。」

「最後って一番強い種族はなんだーってやつか?」

「そうよ、やっぱり犬人族?それとも魔族?」


私は少し食いぎみに聞いた。するとサクアは両手を頭の後ろに組み恥ずかしげもなく言い放った。


「そんなの人間に決まってるだろ。」


人類が進化した動物たちに強いたげられ続けて何十年、かつての栄華は失われ、誰がこんなこと言えただろうか。私は声が出なかった、呆れすぎてなのか分からないが、不思議と悪い気分ではなかった。



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