プロローグ~寺田舞の場合~
~寺田舞の場合~
「舞さーん、舞さーん。ちょっとお話聞いて貰えませんか~?」
胡散臭そうな軽い調子の声がする。ふわふわとした感覚に舞はここはどこだろう?と思案した。
「舞さん、舞さん。聞こえます?ここはあなたの夢の中です。」
舞の心の声に軽い調子の男が返事をする。
「聞こえてますけど、どなたですか?」
「はじめまして。僕、他の世界で神をしているものです。名前はジュノリー。僕と僕の世界の名前です。」
「それで、私になんのようでしょうか?お約束の異世界召喚でしょうか?」
舞はふわふわする頭のままで質問する。
「そうそう!それです!話が早くて助かります。
僕の世界、今、他の神から妨害を受けたせいで、魔力が不安定になってしまって困ってるんです。それで、魔力を安定させる聖女が必要なんですが、自分の世界には適正を持つものがいないので、地球の神に頼んで一人譲って貰うことになったんですよ。
舞さんが一番適正が強いので、もし良ければ僕と一緒に来て貰えませんか?」
これは断ってもいいのだろうか?でも、異世界とかちょっと惹かれるよね。
「魔力を安定させるって、どんなことをするんですか?」
「魔力が増えすぎて、異常気象が起こったり、変な魔物が沸いたりしているので、その場所にいって増えた魔力を吸い上げて魔石に変えるのがお仕事になります。」
「危険じゃないですか?」
「舞さんが安心してお仕事出きるように、勇者をお付けいたします。」
「うーん。急に居なくなるとお母さんも心配するし、ニュースになっちゃうでしょう?」
「そこは問題ありません。舞さんのコピーを代わりに置いていきますので。こちらの世界には魔力が無いから、コピーでも生活には困らないでしょう?コピーはスペックを5割増にしておきましょう。lack値も2倍にしておきます。これで舞さんの人生も心配ありません。」
どうでしょう?
とジュノリーは得意そうだ。
「うーん。私一人で世界を救うんですか?」
誰も知り合いがいないのも不安だよね。
「そこも問題ありません。勇者は舞さんのお知り合いでもいいですよ。勇者ならとりあえず魔力さえ多めにしておけば大体いけるので、舞さんの理想の人物を作って一緒に送ります。どうですか?」
「それって、コピーを作って連れていくってことですか?」
「そうです。あんまりこちらにコピーを置いていくと地球の神に怒られるかもしれないので、連れていくのはコピーになります。だから、多少は男前にしたり、運動神経を良くしたりも可能ですよ?記憶はそのままコピーしますからあんまり違和感はないはずです。どんな方がいいですか?」
舞は迷わず即答した。
「もちろん、化学の宮下先生でしょ!真面目で理屈っぽくて、ちょっと頼りないところが最高!」
「わかりました。じゃあ、彼のコピー、3割増しで男前にして一緒に送りますので頑張って世界を救ってくださいね。」
そう言って景色がぼんやり変わり始める。
「えっ?待って。男前にしちゃダメじゃん。そのままの先生をコピーしてくれなきゃ…」
舞はあわてて返事をしたがジュノリーには届いたのかどうかわからなかった。
寺田舞、高校1年生16歳。
舞は“先生と一緒”に釣られて異世界行きに同意してしまったため、異世界を救うため聖女になったのだった。