王妃さまの断罪
別室に連れていかれて猿ぐつわを外され拘束を解かれた二人は、その途端にわめき出した。
「出せっ!俺は王太子だ!無礼だぞっ!」
「あたしは王太子妃よ。ロバーツとパーティーに戻るのよ!」
「お前たちでは話にならんっ!話ができる人間はいないのか?」
扉を背にした衛兵二人は仁王立ちしたまま身動きもしない。完全武装の逞しい兵士たちを相手にわめき疲れた頃合いに、やっとこの国の宰相が現れた。
「そろそろ落ち着かれましたかな?」
「王太子はこの俺だ!あんな平凡なリカルドじゃない!」
「そうよそうよ。ロバーツが王様であたしは王妃よ!」
ため息をついた宰相は二人に座るように促し、着席を見届けて話し出した。
「お二人はもう王子でも男爵令嬢でもありません」
「「何でっ!!」」
「王子は廃嫡。その上除籍されるでしょう」
言葉を無くし青ざめる王子から身構える男爵令嬢へと視線を移す。
「男爵はあなたを恥とされ絶縁されました」
「嘘よっ!父さんが私を棄てる訳がないわ!」
宰相は抱えていた書類を二人に配った。
「こちらをご覧ください」
「「なっ!」」
その表紙には【第一王子の桃色の日々】と書かれてあったのだ。
「こちらはお二人の出会いから今までの報告書です。いつどこで肉体関係を持ったか?サボった授業や本当のテストの成績。全ての報告があります。あなたたちにはずっと王家の影が付いてたんですよ」
((あんな事やこんな事をみんな見られていたっ!?))
ロバーツは屈辱と怒りで顔を歪め、カミラは羞恥で真っ赤になった。
「両陛下はこちらをご覧になり大層お怒りでした。大臣を含めた閣僚や上級貴族家の当主も読んでいます。一晩これを読んで明日両陛下の沙汰をお待ちください」
呆然とする二人を残し宰相は去った。
ロバーツは怒りから覚めると夜も寝ずに考えた。
(どうすれば、どうすれば逆転できる?あいつを引きずり降ろし俺が王太子になりカミラをどこかの養女に入れて娶る。どうすれば叶う?)
カミラは羞恥から覚めると心労で夜も眠れなかった。
(ずっとずっと見られてたなんて…)
質素な部屋から連れ出され顔を合わせた。互いの中に救いを求めて…自分と同じように憔悴した顔を労り力付け合った。
「カミラは俺が守る!」
「あたしだってロバーツを守るわ!」
二人は謁見の間で膝をつかされ頭を垂れて待っていた。そして国王と王妃が着席した。
(俺は王子なんだぞ。臣下じゃない。罪人でもないっ!)
国王の厳しい声が響いた。
「これから二人に沙汰を申し渡す。元第一王子ロバーツは廃嫡の上除籍し平民とする。元男爵令嬢カミラ・バートリーは男爵家よりの絶縁によりこれもまた平民となる」
「待ってください!父上っ!」
「もう父と呼ぶでない」
「ですが俺の方がっ!」
「お黙りなさい」
そこに王妃の冷たい声が響いた。普段優しい王妃だが、怒るとすさまじく恐ろしいのだ。
(王妃さまの逆鱗に触るって、何てことやらかしてくれてんの!?)
周囲が青ざめ咎めるようにロバーツを見た。
「自分はリカルドより見目が良い。自分はリカルドより才能がある。自分はリカルドより優れていて国王に相応しい。そなたの慢心は胸焼けがする。確かにお前はそこそこ器用にこなすが、続けるという努力をしない。そのくせ自分より優秀なリリアナを妬む。女に溺れて仕事を放棄する。権力で教師を脅して授業単位や成績まで改竄する。性根が腐っておるわ」
「何故それを…」
「教師を脅したその場を影が見ておった。そなたとその娘の成績は最下位。授業単位も足らぬ。卒業や進級もできず素行不良で退学処分じゃ。下半身がだらしないとな。よくもまぁ、ここまで王家に泥を塗ってくれたものよ」
もはやロバーツは拳を握りしめ項垂れることしかできない。
「リカルドは王としての資質がある。公正さがある。努力家であり、努力を止めることをしない。そなたの放り出した生徒会を運営したのはリリアナだ。それを支えたのはリカルドだ。そなたの放り出した公務を勤めたのはリカルドだ。そしてそなたよりも高い成果をあげている」
「でもあの冷血女はロバーツが振り向いてくれないからってあたしに嫌味ばかり言って、悪い噂流されてみんなから無視されて…あたし辛かった」
「可哀そうにカミラ」
「不敬じゃ。その娘の首をはねよ」
甘い雰囲気をまとおうとした二人に王妃の冷徹な声が聞こえ即座に固まる。
「身分が上の者に自分から話しかけてはならない。貶めてはならない。不敬である。牢に入れられ首をはねられても当然。一般常識すら知らぬ愚かな娘にものを教えるのを嫌味と言うか?」
「そ…そんな…」
カミラは既に顔面蒼白である。
「この国の将来を作る学生たちに、そなたたちの馬鹿が感染ると困る。接近禁止は王命よ」
崩れ落ちる二人。
「リリアナが幼い頃より好いていたのはリカルドじゃ。決してそなたではない。あの二人は良い夫婦になるであろう。そなたたちに邪魔はさせぬ。数日牢で過ごし兵士とその妻として北の国境の砦へ行け」
「あんな寒くて何も無い所へ…母上は私を叱ったことなど無かったのに急にどうしてそんな冷たいことを言うんです?」
「期待するからこそ怒りもする。妾はそなたを早くから見限っておった。それだけのこと」
静まりかえった謁見の間に王妃の冷たい声だけが響く。
「衛兵。連れて行け」
あらすじ終わりました。後は一人一人の心理描写に入ります。
お読みいただきありがとうございました。