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第9話:ディナータイムはいずこへ?

 美味しく食べてはいるが、どう考えても親族の宴会レベルのディナーだ。


 もうすぐデザートではあるが、だんだんエスカレートするお小言、声のデカさ、そして騒ぐ2人に、私は怒りゲージが溜まってきていた。

 こんなに美味しいのに、ソフィアとは小声で話さなきゃならないし、話を聞いてなければ叱られるし!!!!


「ふたりも自由におしゃべりしていいんだぞ?」


 アリエスのこの言葉に、私の怒りゲージはフルとなった。

 目の前にあったワイングラスを引っ掴むと、一気に私はワインを飲みこむ。



 がっと熱くなる喉に、胃袋、そして、頭の中もっ!!!!



「………ちょっと、静かにしなさい、あんたたちっ!!!」

「れ、レイヤ、どうしたの?」


 おろつくソフィアを置いて、私はさらに言葉を放った。


「大人同士の食事なんでしょ? こんな親戚の集まりに来た覚えはないっ! ったく、黙って食事ができないは、グチグチ説教だわ、挙句に大酒飲んでただ笑って………そんな人が神様なの? ねぇ、神様として恥ずかしくないっ?」


 私が怒鳴ったことで、走るのをやめたジョーとミニは大人しく椅子に腰をかける。

 マナーも何もなかったタウラスは、一度座り直すと、食べ方飲み方を改めるのか、一度皿を下げさせた。

 アリエスにいたっては、言い返す言葉が見つからないのか、あわあわと口を揺らすだけ。


 そして私は………


「あたま、ぐらぐらする………」


 ばたりと床に崩れる寸前、誰かに支えられた気がする。

 薄目で見えたのは、オフィクスだ。

 オフィクスに抱きかかえられている………


「オフィクス………ごめ……」


 私の意識は、そこで途絶えた。





 クラクションと急ブレーキの音───!!!!!





 冷や汗をどっぷりかいて、私は体を飛び起こした。

 急に起きたせいで頭が痛い。


 ………すごく痛い。


「……なにこれ」


 頭を抱えて体をまるめると、そっと私の頭をなでる手がある。

 オフィクスだ。

 大きくて、暖かくて、優しい手だ。


「オフィクス……ありがと」

「よかった。目覚めが遅いから心配でたまらなかった」


 オフィクスは心配そうに目を細め、私の額に彼の額をくっつける。

 頭がもうろうとしてるため、オフィクスのまつげは黒いんだと、当たり前のことを私は眺めていた。


「レイヤ、この水を飲め。薬も溶かしたから問題ない」


 言われたとおり飲み込むんだ。

 が、苦い。とても苦い水だ。


「我慢して飲んでくれ」


 オフィクスの頼みとあらば!!!!!


 私は一気に飲み込み、ひと息つく。


「ありがと、オフィクス」


 手が伸ばされたので、そこにグラスを手渡すと、


「レイヤは感謝の言葉が多くて、俺は好きだ」


 オフィクスの声は心底幸せそうな温かな声。

 だけれど、言葉が唐突すぎて、私の心臓が止まりそうになる!


「どうした、レイヤ? 大丈夫か?」

「……な、なんとか……」


 優しく背をさする手に甘えていると、オフィクスが笑い出した。


「何、急に………?」

「さっき啖呵きっただろ。あれが面白くて」

「なんで? だいたいあんなのおかしいじゃん」

「そう、おかしい。だけど誰もおかしいとは言えないから。レイヤは自由でいい」

「みんな遠慮してるんだね」


「いいや、レイヤ、君は、本当に素晴らしいんだ……」


 オフィクスは私の頬を優しくなでる。

 赤い爪が鋭いので、それを肌に当てないように、指の背でそっと。


「さ、レイヤ、明日から個々の生活が始まる。今日はもうゆっくり眠るといい」


 優しく頭を触られて、私はわかったといえただろうか。

 薬のおかげもあってか、すんなりと夢の中へと入っていった。

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