第3話:ソフィアとの出会い
神殿という言葉通りに、太く大きな柱がずらりと並ぶ場所へと着いた。
石畳のそこは、真っ白な世界。
ゲームの見た目通りの、無機質な場所。
前を歩くデジーとオフィクスに追いつくように小走りでついていくけど、目に刺さるほどの白い世界に目がチカチカする。
あ、ゲームだとソフィアがレイヤにぶつかるところだ。
───が!!!!!
オフィクス、なに、ソフィア抱きとめてんだよっ!!
「貴様、レイヤに気安く近づくなっ!」
そんなセリフ言ってたの!?
あまりのオフィクスの剣幕に私は驚きながらも、冷静を装って声をかける。
「オフィクス、下がっててくれる?」
乱暴に突き離されたソフィアの格好を確かめたとき、怪我をしているところがわかる。
かわいそうに。そう思ったとき、ふと記憶の奥から回復魔法の存在を知る。
これは面白そうっ!
私はソフィアの肩を掴み、記憶の通りに呟いた。
「傷を癒せ」
見る間にソフィアの体が光に包まれていく。
お日様のような温かさが私の手から放たれている。
それと同時に彼女の擦り傷や打ち身など、見る間に消えていくのが目でもわかる。
「へぇ……魔法って便利」
私が(すげぇ!)と口の中で呟くと、ソフィアがぐいっとこちらを向いた。
お嬢様らしからぬ表情のため、すぐに顔を引き締めると、私はにこりと微笑んだ。
「あ、ごめんなさい。わたくし、レイヤと申します。乱暴して失礼したわ。もう痛いところはないかしら?」
「ありがとう、レイヤっ! あたし、ソフィアっていうの。1人でずっと心細くってっ!」
「そりゃあんなとこ、いきなり歩かされたらそうなるよね……」
設定では、村から神殿まで歩いて移動。で、夜の森には魔物がいるけど、間に合わないって感じで結局戦い、昼間になると出てくることが少なくなるのよねっていう世界観を知らしめる流れとチュートリアルタイムだったな。3回バトルして、1つスキル覚えてって感じで、いくら死なない設定でも、キャラクター1人は怖いよね……
「ほんとにありがとう、レイヤぁ!」
ソフィアは半泣きの顔で人懐っこく私の腕を組むと、ステップを踏むように歩き出した。
天真爛漫って言葉がよく似合う。
ゲームではそんな風に見えたことはなかったけど、そんなキャラクター?
でも私がレイヤなんだし、彼女ももしかして、元は女子高生とか………?
んなこと………ないよね!??
「どうかした、レイヤ?」
「……え、いや、ううん、なんでも、ない」
白い床を鳴らしながら私は歩く。
この廊下どこまで続くんだろ……
「ね、レイヤ、昨日はよく眠れた?」
「……どうでしょうね。わたくし、少し緊張していたから」
「あたしもなの。なかなか寝つけなくって。でも女王候補になるのはあたしの夢だったから、すっごく楽しみ! レイヤも優しいし」
………うーん、勘ぐってしまう。
よくあるストーリーだと、こういうフレンドリーな雰囲気を醸しだしておきながら、裏で手を引き、どんでん返し! っての、定番。ど定番。
だけど、ソフィアはそんなタイプ? どうなのかな?
斜め後ろを歩くオフィクスを何気に見ると、………睨んでる。
ものすごく、ソフィアを睨んでる。
もう一度見ても、睨んでる。
全部、様子見にしよ。