カツ丼とは何か
カツ丼とは何だろうか。
カツ丼なのかかつ丼なのか定かではない、永遠の表記ゆれに悩まされる丼。揚げたてを使うのは親切なのか余ったものを使うのが正式なのか、ソースだとかたれだとか、卵は半熟だとかどうとか、最早定義と言うものは怪しい。
だが、カツ丼がある。
恐ろしいことに、だいたいどこのコンビニには売っている。地方のスーパーにも売ってる。だいたいどこの和食屋に言ってもある。もはや日本はカツ丼大国、カツ丼がありとあらゆる場所に跋扈している。カツ丼は最早薬草とかポーションより安易に手に入る回復アイテムである。もしも東京都内でファイナルファイトが始まるなら、回復アイテムはカツ丼にするべきである。
牛丼より、プレミア感がある。
牛丼の工程を考えて欲しい。まぁ肉と玉葱と調味料を一つの鍋で煮込んでご飯に乗せて終わりである。僕は長ネギのほうがうまいと思うし豆腐とたけのこもいれてすき焼き風のほうが美味しいと思うが、コストがかかる。だがカツ丼はどうだろう、豚肉に衣をつけて油であげてからの玉ねぎに軽く火を通しつゆで煮込んで卵で閉じる。もはやCVTとマニュアルミッションぐらいの差がある。最近の子はカツ丼すらとなるのも時間の問題だ。
だが、とにかく家で作らない。
家でカツ丼を作る人がいるなら、ぜひ手を上げて欲しい。もちろん惣菜コーナーからとんかつを買ってくるような輩は回れ右だ。カツ丼のためだけに油を固めるアレを使うものがいるだろうか、いやいない。そう、家でやる場合は必然的にとんかつ定食にシフトするのだ。晩御飯がとんかつだからといってカツ丼用のとんかつを用意する日本人が果たしてどれだけいるのだろうか。だいたい作り置きのとんかつがある前提で作られる料理なのだ。あるかそんなもん、この飽食の時代に。
つまり、カツ丼とは何か。
外食特化型料理である。原価、人件費、製造コストなど、ありとあらゆる面でコスパ厨を黙らせる最強の料理だ。何、外食先で原価が気になる? だったら食えよカツ丼をそれだけが俺達の正義だと信じて欲しい。そうメガネを掛けたカス人間がいるなら言うべきだ。
ああ愛しきカツ丼よ。
決して家庭的ではないけれど、日本中どこにでも手に入る不思議な料理。それがカツ丼。だから若人よ、外食先に困った時はぜひ注文して欲しい。油と卵のタブルパンチが厳しくなる老人たちには、もう過ぎ去りし青春なのだから。