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騎士と魔女はかく語りき

 夜も深まった時刻。

 子供達が全員寝静まったのを見計らったかのように、その部屋には二つの影がひっそりとあった。


 そんな自分達の状況を客観的に見てしまい、ついリディアは苦笑を浮かべる。

 ふと脳裏を過るのは、早朝に交わしていた会話の一部だ。


「この現場を押さえられてしまったら、彼らにやっぱり怪しい関係なんじゃないかと疑われても文句は言えないな」


 戯言を転がしつつ手の中のグラスを傾ける。

 口内へと流れていくのは、喉が焼けるような液体……などであったのならばまだ格好がつくのだろうが、生憎とただの水だ。

 酒などという贅沢品を嗜むには、この村は辺境に過ぎた。


 まあそもそもの話、リディアは酒を得意とはしないのだが。


「随分とご機嫌そうに見えるのだけれど、そんなに騎士団(・・・)の居心地は悪いのかしら?」


 と、対面から届いた言葉に、リディアは苦笑を深めた。


 確かにと、いつもよりも自分の機嫌が良いことを自覚したのと、ルイーズのことを相変わらずだと思ったからだ。


「ワタシの機嫌が良いのは認めるが、それは友人と久方ぶりに再会したからだよ。壮健なのは聞き及んでいたとはいえ、何せ八年ぶりだからね」

「そう……そういえば、もうそんなに経っていたのね」

「ああ。気がつけば、もう半分を過ぎているのさ。まあ、ワタシはずっと変わらぬ生活をしていたから、正直あまり実感は湧かないのだがね。いや……湧かなかった、と言うべきかな? まさかあの赤子があそこまで大きくなり、あそこまで出来るようになっているとはね。さすがに驚いたよ」


 言いながら、自然とリディアの思考は過去に飛んでいた。

 八年前のあの日、ルイーズが赤子を手に抱いていた時。


 そういえば、あの時もこうして対面に座っていたな、と思い――


「そう……それで、具体的にはどうだったのかしら? ここのこうして集まったのはそもそもそのためだったはずだけれど」


 だがルイーズの眼差しは、あくまでも今を見ていた。


 そのことに、リディアは再度苦笑を浮かべる。

 本当に相変わらずだし、実際のところ彼女の方が正しい。


 まだ何も終わっていなければ、始まってすらもいないのだ。

 ならば過去を懐かしむなど、早すぎるだろう。


 故に、ルイーズの友人としてではなく、ルイーズの計画の賛同者であり、一人の騎士としての思考に戻す。

 その上で早朝のことを思い返しながら、口を開いた。


「そうだな……驚いたのは確かだが、まだまだ荒削りといったところか? ただ、基礎はよく出来ているとは思ったよ。さすがは君だ。正直なところ、ウチに来て新兵を鍛えて欲しいぐらいさ」

「ちょっと持ち上げすぎではないかしら? 褒めたところで水ぐらいしか出せないわよ?」

「ただの事実だよ。少なくともウチの新兵よりもよっぽど基礎は出来ているし、多分今ウチに来ても見劣りすることはないだろう。……とはいえ、それだけでもあるがね」


 最後で意図的に声を落としてみたが、ルイーズには欠片も動揺した気配はなかった。


 とはいえそれも当然かと、小さく息を吐き出す。

 あの(・・)ルイーズが、この程度のことを予測出来ないはずはないのだ。


 だから――


「まあ正直なところ、まだ早いのではないかと思ったね。あと一、二年ほど君がさらに基礎を鍛えてからでも十分間に合うだろうし、その方が後々のためになるはずだ。……と、思っていたのだがね。その直後に()と戦うまでは」


 そう、クレア(・・・)の仕上がりは、感心するところあれども予測を裏切るほどではなかった。

 八年前に立てた計画通りに進めて何の問題もないはずなのだ。


 だが、()は――カイル(・・・)は完全に予想外であった。

 まあそもそもの話、カイルは計画に(・・・)存在していなかった(・・・・・・・・・)のだから当然ではあるのだが。


「あれは正直、私も予想外だったのだけれど……手を抜いたわけではもちろんないのよね?」

「本気でなかったという意味ならばその通りではあるが、少なくとも手を抜いてはいなかったさ。最後の一瞬まで、ワタシは勝負を決めにいって勝つつもりだった。彼があんな手を使うまでは、ね」

「まさか左手を差し出そうとするなんてね。腕を斬られてしまったら、さすがに私でも治せない(・・・・・・)。だからあなたは斬撃を止めなければならなかったわけだけど……」

「彼はそこを狙ったわけだ。完璧な妙手だった。アレ以外に彼が勝つ手段は存在していなかっただろうからね」


 しかもカイルはアレを、全てを理解して行っていた節がある。


 あんなことは実戦でやったところで無意味な行為だ。

 そのまま腕ごと斬られて終わりである。

 今回は模擬戦でしかなかったために効果があったものの……だがカイルはきっと模擬戦だから行ったわけではないのだ。


 実戦ではルールも何もなく、ただ勝った者だけが偉い。

 だから実践的な思考で模擬戦を行うのであれば、同じことが言えるようになる。

 即ち、その状況で有り得るあらゆる手段を使って勝った方が偉いのだ。

 あの場面で言えば、カイルの腕を斬ってしまったらリディアの負けであったからこそ、カイルは手札としてそれを利用したのである。


 模擬戦だからそうしたのではなく、実践的に考えた結果、模擬戦であることを利用しての行為。

 結果的に考えれば同じことではあるが、その意味するところはまるで異なる。

 前者は怒るべき行為だが、後者は褒めるべき行為なのだ。


 何故ならば、いざ実戦となった場合、後者の思考はそのまま使えるからである。

 実践的に考えているからこそ模擬戦では模擬戦として有効な手段を使ったということは、実戦となれば実戦として有効な手段を使うようになるだけだ。

 実戦と模擬戦を取り違えることは、起こりえないのである。


 そしてそれは、八歳児に出来るような思考ではない。

 いや、もっとはっきりと、有り得ないと言ってしまっても過言ではないだろう。

 幾らルイーズの教育を受けているとはいえ、子供に出来るような思考ではないのだ。


 だがだからこそ、リディアは面白いと思ったのである。


「是非ともウチに連れて行きたいものだよ。単純な力で言えばクレアの方が上だが……何しろ底が知れないからね」

「底が知れない……? あなたが興味を持つのは分かるけれど、そこまで言われるような何かがあったかしら?」

「もちろんさ。まずはあの洞察力の高さ。あれだけで十分称賛するには値する。あとは冷静さもだね」


 ルイーズの言動の不自然さから、こちらの正体をそれとなく察したところまではまだいい。

 しかしそう思っていたところで、妹のように思っている少女を斬られたとなれば冷静ではいられないのが普通だ。


 なのにあの瞬間、カイルはピクリとも動くことはなかった。

 激昂するどころか、ろくに反応することすらなかったのである。


 何も感じないわけではなかったのだろうが……それでも冷静に状況を観察することを選択したのだ。

 中々出来ることではない。

 まあそれは、クレアが受けた傷がそれほどのものではないと分かっていたからなのかもしれないが。


 あの時リディアがクレアに与えた傷は、見た目は激しかったものの、それほどの傷ではなかったのだ。

 血こそ激しく出たものの、敢えてそう斬ってみせただけであり、実際の傷は致命傷には程遠いものであった。

 クレアが倒れたのは、血が激しく流れたということで傷の大きさを勘違いしたからなのだ。


 だが本人ですらそうだったというのに、離れた位置にいたカイルは、瞬時にそれに気付いたのである。

 あの反応を見る限りでは間違いなく……とはいえ、それも含めてやはり並ではない。


 それに何よりも興味深かったのは、その後の行動であり――


「あの攻撃はつたなくはあったが……いや、だからこそ余計に、驚いたものだよ。何しろワタシは、確かに最初の攻撃は受けるつもりだったが、その後は即座に攻撃に転じるつもりだったのだからね」

「その割には、あなた結構攻撃受け続けていなかったかしら?」

「だから興味深い、と言っただろう? こっちが攻撃に転じようとした瞬間、そのことごとくを上手いこと潰されたのさ」

「偶然、というわけではないのよね?」

「偶然で何度も攻撃の機会を潰されるほど柔な鍛え方はしていないつもりだし、もしそうであったのならばワタシは潔く今の地位を降りるだろうね」


 しかもさらに興味深いことに、本人はどうもそれを意図していなかった可能性がある。


 しかし偶然では考えられない以上は、無意識のうちにやっていたということだ。

 さらに言うならば、アレは確実にこちらの出だしの癖を掴んでいた動きでもあった。

 今日が初対面であるということを考えれば、カイルは直前に行われていたクレアとの戦闘を見ていただけでそれを掴んでいたということである。


 底が知れないとは、そういうことであった。


「しかもそれでつい興が乗って少しだけ本気を出してみたら、それも受け止められたからね。いや、本当に興味深い」

「悪いけれど、あの子も既にこっちのことに含んでいるからあげないわよ? まあもっとも、そもそもあなたを向こうに帰す気がないのだけれど」

「やれやれ、酷い話だ」

「そんなことは今更でしょう?」


 その通りではあったので、肩をすくめておいた。


「まあ正直に言ってしまえば、それに関しては予想外なのだけれどね」

「ほぅ……? だがワタシを呼び寄せたのは、彼が原因なのだろう?」

「それはその通りなのだけれど、あの時はそこまで考えていたわけではなかったのよ。そもそも最初の計画では私が戦闘の手ほどきをするのはクレアだけだったもの。それが二人に増えてしまったから、これ以上を教えるとなると手が足りないから、あなたを呼んでしまおう、といったところかしら。確かに私が二年ほど鍛えた方が後々のためにはなるのでしょうけれど、それをするのがあなたではいけない理由はないもの」

「まあ確かにそれはそうだし、ワタシの立場を考えてくれとか言いたいことはあるが……それにしても、君がそこまで見誤ってしまうなど珍しいものだ。というか、クレアとの模擬戦を見ているだけでもその兆候はあったのだから君なら気付きそうなものだが……」

「いくら何でも、それは私のことを買い被り過ぎというものね。何せあなたに手紙を送ったのは三週間前。二人に模擬戦を行わせるようにしたのもちょうどその頃だけれど、当初のカイルは面白いぐらい簡単にクレアにやられていたのよ? 毎日毎日宙を舞っては地べたを這いつくばって……そうね、当時の戦力差は、あなたの第一師団と他の師団の兵達との差ぐらいはあったんじゃないかしら?」

「……は? ワタシが見た限りでは、確かにクレアの方が押していたとはいえ、ギリギリながらもしっかりとカイルはクレアの攻撃を捌けていただろう?」

「ええ、だから三週間でそれが出来るようになったのよ。初めてカイルがクレアに勝ったのが一週間ほど前で、最近では五分五分から少しずつカイルの勝率が上回ってきたといったところかしらね」


 正直なところ、リディアはルイーズが冗談を言っているのだと思った。

 ルイーズはそういうことを言わないタイプではあるものの、それでも咄嗟にそう思ってしまう程度には、それは現実味の薄い言葉であったのだ。


 だがルイーズの顔をマジマジと見てみたところで、やはりそこに冗談の色はなく――


「……本当、なのか?」

「信じられないのも無理ないことだし、私もあなたと同じ立場だったら同じ事を言うでしょうけれど、生憎と本当のことよ。本人曰く、ずっとクレアと戦っていたから慣れた上に、クレアの剣筋は素直だから出来ることだ、ということらしいけれど……」


 その言葉を聞いたリディアの感想としては、馬鹿な、というものであった。


 クレアは、今の段階でも王国の中で上位の実力を持っているはずだ。

 あくまでも計画から考えれば予想の範囲を出ることはないというだけであり、ある程度の実力が既にあることは確かなのである。

 先ほどの言葉もお世辞ではなく、実際に兵になろうとするならば、将来性も鑑みて、リディアも所属している第一師団がもろ手を挙げて歓迎するだろう。


 王国でも最強の人材が揃っていると名高い、第一師団が、だ。


 それは即ち、ルイーズの先の言葉が比較対象として考えるに十分だということでもあるが、第一師団と他の師団との兵達の間には、比較することは出来ない程度には差がある。

 二週間程度でその姿を捉え、その後一週間程で追い抜きつつあるなど有り得ない、と言い切ってしまえる程度には。


 確かにあの年頃の子供は、叩けば叩くほど伸びるだろう。

 普通は幼い頃から鍛えるとは言っても限度があるし、身体が壊れてしまう可能性の方が高いからやらないが、驚く程に伸びるというのは分かる話だ。


 しかしそれでもやはり、限度というものがある。

 クレアの剣筋が素直だというのは模擬戦を見ていただけで分かっていたことではあるが、剣筋が素直だからといって剣閃が同じになるというわけではないのだ。


 一部を抜粋すれば同じと言ってもいいかもしれないし、剣筋が素直でない者と比べれば読みやすいのは事実ではある。

 だが出だしの角度や位置、放たれる速度によって異なる軌道を描く剣閃は、無数のパターンがあると言っていい。

 それは本人ですらも意識出来ないような微々たる違いではあるが、だからこそ圧倒的な力の差がある場合はそれに対応することは出来ないのだ。


 たとえどれだけその攻撃を受け続けたところで、慣れるなどということはそうそう起こらないし、ましてや対応出来るようになるなど有り得ないのである。

 ただ一つだけ、例外があると言えばあるが――


「まさか……加護、か?」


 加護というものは、使い方次第ではあるが、基本的には絶大な効果を発揮するものである。

 リディアにはそういった加護に心当たりはないが、学習能力と洞察力あたりを極限にまで高めるような効果でもあれば、あるいは有り得るのかもしれない。

 実際ルイーズから送られてきた手紙には、カイルが加護に目覚めたということも書かれてはいたのだ。


 だが。


「あら……そうなのかどうかは、あなたが一番よく分かっているんじゃないかしら?」


 その通りであった。


 リディアもまた、加護持ちである。

 ただしそれにより発現した力は、少々特殊であった。

 リディアの使用出来る力というのは、目にした相手に加護があるのか否かを判別出来るというものだったのだ。


 これはこれで有用であるし、リディアが第一師団の師団長などという立場になれたのは、半分程度はこの力のおかげでもある。

 しかし今問題となるのはそこではない。

 この力は、相手が加護の力を発動させているのか、ということも分かるのだ。


 そしてリディアの見ていた限り、カイルが加護の力を発動させたということは一度もなかった。


「まあ正直なところ、彼の加護の力によってワタシの目が誤魔化されている、と言われた方がまだ納得出来る状況だがね」

「本当にそうならば、それはそれでいいのだけれどね。あなたを呼んだのは、カイルの加護を調べるためでもあるのだから」

「ああ、そういえば手紙にも書いてあったな。あの時はワタシが行く頃にはさすがに分かっているだろうと思っていたものだが……」

「それは正直少し考えたけれど……でも結果から言ってしまえば、あなたを呼んだことはやはり正解だった、ということかしらね。……色々と当初の想定とは違ってしまっているけれど。まったく、私の目も随分と節穴だったみたいね」


 相変わらず淡々とした調子ではあるものの、そこには確かに自嘲の響きがあった。

 一見すると分かりにくいが、それなりに思うところがあるようだ。


「なに、君が分からなかったのならば、他の誰にも分からなかっただろうさ」

「あら、慰めてくれているのかしら?」

「事実を言ったまでだよ。そうだろう、王国最高の魔女?」


 そう言った瞬間、ルイーズは珍しくはっきりと顔の表情を変えた。

 心底嫌そうな顔で、こちらに視線を向けてくる。


「……その名では呼ばないでと言ったはずだけれど?」

「おや、そうだったかな? すまない、何せ八年ぶりだからね」

「そもそも、そんなのは一部の人が勝手に言っていただけでしょう? 私はあなたほど明確に何かを成し遂げたわけじゃないもの。そうでしょう、王国最強の騎士さん?」

「それを言うなら、ワタシの方こそそうさ。その称号は、偶然が重なった結果としてワタシの手元に転がり込んできただけなのだから。対して君は、今回の計画の草案作りも含めてもっと明確な……いや、これ以上はやめておくとしようか。不毛なことにしかならない」

「……そうね」


 そっちから一方的に始めてきたことではないか、とでも言いたげな視線を向けられるが、リディアは肩をすくめて返す。


 とりあえず、その反応からして何か隠し事があるわけではなさそうだということが確認出来た以上は、この話を続ける必要はないのだ。

 この友人は平気な顔して大事なことを隠したりするので、こうして確認するのが一番なのである。


 自分でも性格の悪い確認方法だとは思うが……仕方があるまい。

 そんなことを何度も自分に仕掛けてきたのはルイーズの方である。

 学習され仕返される程度のことは、自業自得と諦めてもらうしかない。


「まあ何にせよ、君も言ったように結果的にはよかったと言うべきなのだから問題はないだろう。ワタシとしては少し残念だがね」

「何がかしら?」

「君がついに親馬鹿となってワタシを呼び出すことにしたのかと思ったからね。相変わらずなようで安心半分残念半分といったところさ」

「なにを馬鹿なことを……あなたを呼ぶのが最も合理的だと判断したからそうしただけよ」

「本当に相変わらずなようで何よりだよ」


 鉄仮面やら徹底しすぎた合理主義者、などとも呼ばれていたことを思い出し、苦笑を浮かべる。

 ただ、ほんの少しだけ雰囲気が柔らかくなったようにも思えるのだが……敢えて口にすることはなかった。

 それは本人が自分で気付くべきことだろうからだ。


「ともあれ、どうやら色々と面白そうというか、やり応えはありそうな状況のようだね。君に呼び出された時にはどうしたものかと思ったが、中々どうして楽しい日々を過ごせそうだ」

「そう……それは何よりね。これで断られてしまったらどうしようかと思っていたわ」

「よく言うもんだ。そんなこと思ってもいなかったくせに」

「そんなことないわよ?」


 そんなことを言いつつも、すまし顔をしている時点で説得力は皆無である。

 もっとも、それをいつものことだで済ましてしまうあたり、もう手遅れなのだろうが。


「ただ、唯一心配なことがあるとすれば、それはカイルとクレアを除いた子供達のことかね。何やら怯えていたような気もしたのだが……」


 リディアは今後この孤児院で世話になることが決まっている。

 そのため他の子供達とも顔合わせはしたのだが、朝昼晩と共に食事をとったにも関わらず、慣れるどころか怯えられ避けられているようにしか見えなかったのだ。


 見知らぬ大人に対する子供の反応としては当たり前なのかもしれないが――


「まあ、一日程度で慣れるものではないでしょうし、気楽に気長にいけばいいのではないかしら?」

「それこそ気楽に言ってくれるものだね。まあ実際のところそれ以外にないのだろうが」


 そんなことを言いつつ、さてこれからどうなるのやらなどと思いながら、リディアはグラスの中に残った水を飲み干すのであった。

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