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6、三女なのはいいけれど

「…………、…………」


 なにもきこえない


「…ー……、………ェ」


 なにもみえない


「アー……、…ーシ…」


 なにもかんじられない


「アーシェってば!」

「っはいっ!」

「どうしたのぉ? 急にぼーっとして」


 えーとなんで目の前にレオノーラがいるんだっけ?


「もう、いきなり何の反応もしなくなるから心配しちゃったわよ」

「えっと……ごめんなさい」


 そうだった、あまりのショックで意識が遠のいていたんだったわ。

 えーっと何だっけケッコンだったか、それの真偽を確かめねば、


「あの、お姉さま“自分で良縁を掴める最大の機会”というのはどういうことでしょうか?」

「それはねぇ、まず私達貴族の結婚は個人というより家と家の繋がりだというのは分かっているわよね?」

(8歳児に分かるものなのだろうか? まあここは返事をしないと進まないよな。)

「えっと……はい」

「長女の私と長男のシアお兄様はお父様が良縁を見つけてきてくれると思うし、次女のミフィスもだけどおそらく大丈夫だと思うわ。でも三女の貴方だとお父様でもうちの家ではちょっと難しいのよ」

(これ……結婚したくない俺はどう反応すればいいんだろうな。)

「……はい」

「でも私達貴族の結婚は親が相手を決めるのが普通だけど別に例外が無いって訳じゃないのよねぇ」

「それが学園だと?」

「そう、結婚相手が決まるのは成人して学園を卒業する時期が多いんだけど、その前に学園で自分で相手を見つけることもできるのよ。学園なら同年代の貴族が集まっているんだからここほど見つけられる可能性がある場所はないからね」

「な、なるほど」

(随分と生々しいな。8歳児に言うべきことじゃない気がするんだが。)

「勿論当人同士だけでは決められなくてお互いの当主の許可がいるけど、そこは自分の力で見つけてきたってことで尊重はされるのよ」

「へ……へぇ」

「だから今のうちに自分を磨いて良い相手を頑張って見つけるのよぉ」

「が……がんばります」


 俺はこめかみが引きつるのを感じながらもどうにか結婚しないで済む方法はないか訊いてみる。


「あの……お姉さま、もしお父様が縁談を見つけられなくて、学園でも相手が見つからなかったらどうなるのでしょうか?」

「うーん。その場合は第二夫人とか家格が下の家とか多少条件が悪いとこへお嫁に行くことになっちゃうかなぁ。成人して未婚で良い条件の人なんて殆んどいないだろうし」

「じゃあずっと一人とかは?」

「駄目よ。行かず後家なんて恥ずかしくて社交界に出られないじゃない」

(そ……そんなぁ。)

「そんなに心配しなくても卒業どころかまだ学園に入学してもいないんだから大丈夫よぉ」


 ショックを受けた顔を不安ととったらしく励ましてくれた。

 いやまあ不安は不安なんだけどね、男と結婚とか不安でたまらないんだが。

 その夜は不安で一杯だったが、やっぱり身体は8歳なのであっさり眠れた。




 翌日、眠れはしたがあまり体調は良くなかった……主に精神的な理由で。


「おはようございますお嬢様……大丈夫ですか? どこかお体の具合がよくないのでしょうか?」

「なんでもないわ。ちょっと悩みごと。それより今日の予定は?」

「とくに何もありませんが、本当に大丈夫ですか?」

「ええ」


 どうやらエナに心配される位傍から見ると悪いらしい。

 まあしょうがないよなあんな話(男と結婚)を聞かされたんだから。

 そういえば記憶にはあるけど俺自身はまだ屋敷の外には行ったことが無いな、よし気分転換に今日の予定は散歩をすることにしよう。


 玄関から庭に出るとそこには先客がいた。


「あ、ちいねえさまだ。ねーねー一緒にあそんでください」

「ええディノスいいわ遊んであげる」


 可愛い弟の為なら予定変更は止む無しだな。

 そういえば前世では下の兄弟っていなくて欲しかったんだよなぁ。

 俺は前世では叶わなかった弟との遊びに興じることにした。


 しばらくしてだんだんとディノスの顔に陰りが見え始めた。


「どうしたのディノス? おねえちゃんと遊ぶのはつまらない?」

「ちがうの、ちいねえさまなんか元気がないから」


 ああ、俺はこんな小さな弟にまで心配されるほど顔色が悪いらしい。


「大丈夫、元気よ。ただ、ちょっと悩みごとをしててね」

「どんななやみ? ぼくも力になれる?」

「将来通う学園で結婚相手を探しなさいなんて言われて不安になってしまってね」


 こんな健気な子に正直に悩みを打ち明けてしまう位俺は弱っていたらしい。


「だいじょうぶです。ちいねえさまはキレイだからきっと見つかりますよ」

「うん……ありがとう。お世辞でもうれしい」

「それに……もし見つからなくてもボクのお嫁さんにしてあげます」

「うん? そう……楽しみにしているわ」


 どうも結婚する不安を相手が見つかるかの不安と勘違いしているようだ。

 でもまあこの微笑ましさにちょっと胸のつかえが取れた気がする。

 ありがとう弟よ、ちょっと気が楽になったわ。

 よし、どうせ成人なんて大分先なんだし今から気にしても仕方ないな、いざとなったら逃げればいいしな。

 そうなっても将来困らないようにいろいろと身に着けておくか、まずは手始めに魔術の練習だな。

 目指せ大魔術師。

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