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3、家族と対面してみたけれど

「おはようございますお嬢様、そろそろお目覚めの時間です」


 エナの声で眠け眼で目を開けると部屋はまだ薄暗く夜明け前のようだった。


『んあーまだ暗いじゃん。おやすみー』

(あっやっべ思わず日本語でしゃべっちった。)


 一気に目が覚めて恐る恐る相手の様子を伺うと、寝ぼけて寝言を言ったのだと思ったのか特に変な様子は無かった。


「おはようございます。それではこちらで顔をお濯ぎください。終わりましたらこちらをお召し替えください」

(またあの羞恥に耐えるのか……いや、もうこれは慣れるしかないか。うん自分の体なんだしそうしよう。)


 半ば自棄気味に諦めの境地に達して大人しく着替えを済ませると、


「では食堂へお連れしますね。皆様お待ちでしょうから参りましょう」

「ええ」

(そうだった。朝になったら家族と会うんだった。まずいまだ心の準備が……)


 アーシェらしく振舞えるよう脳内シミュレーションしながら食堂に着くとそこには三人の先客がいた。


「おはようございます。お父様、お母様、お兄様」

「やあおはようアーシェ具合はもう良いのかい?」

「はい、もう大丈夫です。」


 のんびりとした穏やかな表情でこちらを気づかう赤毛の30代半ばの男性が父親のフレデリック


「池で溺れたそうだけどあまり心配をかけさせないで頂戴ね」

「ご心配をおかけしました」


 優しくそう注意したのはフレデリックと似たような雰囲気と同じような年齢の母親のアマンダ。

 似た物同士なのだろうか、違うのは髪の色が金髪なのと性別だけだ。


「あのような浅い池で溺れてしかも丸一日寝込むとは少々鍛錬が足りないのではないか? 学園が休みの間は俺が鍛錬をみてやろうか?」

「……いえ、遠慮しておきますわ」

(学園ってことは学校はあるのか。それにしても8歳児相手に鍛錬とか何言ってるんだこの脳筋め。)


 8歳の子供相手に無茶なことを言っているのが長男のシアート。

 短く刈上げられた金髪、年齢以上の身長に鍛えられた肉体、外見と中身が一致した脳筋。

 記憶によると悪い人ではなく明るく優しいのだがどこまでいっても脳筋なので下手な返事をすると本当に鍛錬をさせられるのではっきりと断っておく。

 挨拶を済ませると残りの三人の家族も食堂へやってきた。


「おはようございます。あ、ちいねえさまがいる」


 まだあどけなさの残るかわいらしい声をしているのは末っ子の弟のディノス。

 少し朱が入った金髪に整った顔立ち、やや大人しめの性格もあいまってこのまま成長したらきっと美少女……じゃなくて美少年になるに違いない。

 アーシェが唯一偉ぶれる家族なのでいつも一緒にいて可愛がっているので家族で一番仲が良い相手だ。


「……おはようございます」


 小声でやや無愛想な挨拶をしているのが次女のミフィス。

 赤い髪を後ろで一括りにまとめて流し、眠そうに眼鏡の位置を戻している。

 お転婆なアーシェとは逆に本を読んだりしていることが多くあまり接点が無かった。


「おはようございますぅ。みんな早いですねぇ」


 この脱力したというか暢気な声で挨拶をしているのが長女のレオノーラ。

 ややウェーブがかかった金髪を背中まで伸ばし、大人びて発育した身体は将来が楽しみになるような美人である。

 なのだが、その言動や雰囲気から美人という印象より優しいとか陽だまりのようなとかの印象が強く、アーシェもよく甘えている。


「みんな揃ったな。では朝食を始めよう。日々の糧を得られることに王国と民に感謝を」

「「日々の糧を得られることに王国と民に感謝を」」


 祈りの仕草をしてから朝食を食べ始める。

 朝の団欒の中で俺は何か情報はないか食事をしながら聞き耳を立てる。


「そろそろ夏季休暇も終わりに近づいているがシアートとレオノーラは学園へ出立の準備はできているかい?」

「勿論」

「わたしはぁもう少しです」

(学園……学校があるのか。アーシェの記憶の中で見ない時期があったのは学園に行っているせいか。)


「来年はミフィスも学園に通うが勉強の準備はできているかい?」

「……問題ないです」

(ミフィスが来年ってことはアーシェも4,5年後には学園へ行くのか?)


 収穫があったんだかなかったんだか良く分からないうちに食事も終わろうとした時に、最後にアマンダが俺にとっては聞き捨てならない爆弾を投下してきた。


「そういえばアーシェは今日は“魔術”の授業があるけれどまた抜け出したりしてはいけませんよ。あまり先生を困らせないで頂戴ね」

(…今、なんて言った? “魔術”だとどういうことだ?)


 愕然として取り繕う余裕もなく、思わずまじまじとした目でアマンダを見ると、


「あら、まさか抜け出したことに気付かれて無いとでも思ったの? 駄目よ母にはお見通しですから」


 愕然とした表情はどうやら授業をサボったのがばれたことだと勘違いしてくれたようだ。

(勘違いしてくれたのは助かったが魔術ってのどういうことだ? そんな重要な情報はアーシェの中には無かったぞ。……あ、授業をさぼってたから無いんだわって何やってんだ俺。だがそういうことならこれまでの疑問に納得がいく。知らない言語、存在しない電化製品、魔術の存在、ここは……地球じゃないのか。)


 転生した先は性別が違うどころかどうやら世界が違ったようです。


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