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2、状況把握をしてみたけれど

 とりあえず状況を整理しよう。

 さっき思い出した記憶から察するに(土井宗太)は死んで、生まれ変わってこの子(アルシェイル)になったと。

 ここまではおk

 俺としての意識はさっきまで無かったってことは何かしらのきっかけで思い出したってことだろう。

 とすると……やっぱアレ(溺れて死にかけた)か。

 前世での死因と同じようなことが起きたショックで俺としての記憶が蘇ったってわけか。

 問題はここからだ。

 出来る限りの情報を思い出して現在の状況を把握すること、そしてこの子(アルシェイル)の意識はどこにいっているのかということだ。

 とりあえず思い出せる情報から並べてみよう。


 本名アルシェイル・ドゥ・エラ・ヴィクトワール、愛称はアーシェ、家族構成は両親と兄が一人、姉が二人、弟が一人いるようだ。

 さっきのエナは使用人で他にも何人もいるようだが彼女はアーシェの世話係のようで彼女の記憶だけかなり多い。

 彼女の行動範囲はこの屋敷の敷地内だけで敷地外の記憶は殆んど無かった。

 何か意味のある情報はないかと色々と思い出してみたが、駄目だった。

 まだ8歳で幼いためか、屋敷外の情報は教えられておらず遊んでいる記憶しかなかった。

 ただ敷地自体かなり広いようで色んな場所で遊んでいるようだ。

 随分とお転婆なお嬢様なのかもしれない。

 いくつかの習い事を始めたようだが、行方を眩まして逃げることがあるようだ。

 これはお転婆なお嬢様確定だな。

 一番欲しかったここがどこなのかということに関する手がかりは無かった。

 言語もそれまで聞いたことも無いものだったしここは一体どこなんだ?

 まあ言語なんて俺が知ってる言語のが少ないんだけどな。

 まあ8歳児程度の知っている情報なんて自分の周りだけなもんだし仕方ないか。

 とりあえず怪しまれないように記憶を頼りにアーシェらしく振舞っていくか。

 それにしても随分と長い名前だ、それに屋敷や敷地の広さを思うとどうやらいいとこのお嬢様のようだ。


 さてもう一つの問題、アーシェの意識はどこにいったのかだ。

 1、俺の意識が主導権を握ったことで一時的に眠っている

 2、俺の意識が覚醒したことで上書きされ消えてしまった

 3、前世の記憶を思い出したことで、一時的に前世の人格のように振舞っているだけで俺とアーシェは元から同じ意識

 考えられる可能性としてはこんなもんだが一体どれだろうか?

 1は今のところそんな気配は感じられない。

 2はそうだったとしても最早どうしようもない。

 3はさっきの自分の振る舞いを思い出すと違和感や拒否感があまり感じられなかった。

 そういえばこのお転婆なところももしかしたら前世のワンゲル活動の影響なのかもしれない、が、まだ1の可能性を捨てきれないな。

 これ以上は考えても埒があきそうにないし止めておくか。


 いろいろと考えている内にそれなりの時間が過ぎていたらしい。

 ドアの向こうからノックの音と共にエナの声が聞こえた。


「お嬢様、そろそろ夕食の時間ですがいかがいたしましょう?」


 そう聞かれ返答を考えているとアーシェの記憶から、この家は事情がない限り食事は家族揃って摂ることになっているのを思い出した。

 今回は一応事情(溺れた)もあるので自室で摂っても問題ないのでどうするのか訊いてきたようだ。

(うーん。まだ家族に会うにはちょっと心の準備が足りないな。夕食は一人で食べて明日の朝に会うほうが良さそうだ。もしかしたらこれが全部夢だったり、アーシェの意識が戻るかもしれないしな。)


「今日はちょっと疲れたからお部屋で食べることにするわ」

「かしこまりました」


 エナが離れていく気配を感じながら明日のことをどう対応するか考えていると、

(夕食の時間ってもうそんな時間が経ってたっけ?まあ確かにちょっと暗いなライトのスイッチはどこだろう……?)

 部屋を見回して探しているととある事実に気付く。

 この部屋はライトではなくランプのようなものが明かりを灯していたのだ。

 そしてそれは身の周りにあるはずの物が無いことにも気付いた。

(それどころじゃなかったから今まで気付かなかったけど、よく見たら家電製品が一つも無いな。そういえばアーシェの記憶の中にもそういった類のものは見あたらなかった。これだけの屋敷で家電が一つも無いってのはおかしいはずだが……。)


 食事が終わりそれとなくエナに尋ねてみようとして気付く、

(こっちの言葉に家電の類に該当する言葉が……無い。どうしようテレビ……いやラジオなら英語でもニュアンスあまり変わらないから伝わるか?)


「ねえエナ、『radio』とかはどこにあるのかしら?」

「?申し訳ありません『radio』というのはどういうものでしょうか?」

「えっ? (ラジオが無い……どういうことだ?概念自体存在しないようだけどとりあえず誤魔化しておくか)ああごめんなさい勘違いだったわ気にしないで」

「そうですか。ではお休みになられる前にお召し物を寝巻きに替えましょう」

(え゛っ?いや、ちょっとそれはあかんて、子供いうても女の子で俺は男だし)


 思わずおかしな関西弁で心の中でツッコミながら固まっている俺にエナが再度問いかけてくる


「……お嬢様?」

「……そうするわ」


 いい言い訳が思いつくわけもなく、両方の意味での羞恥に耐え、必死になんでもないような風を装いながら粛々と着替えが終わった。


「ではお嬢様お休みなさいませ」

「ええ」


 一人部屋のベッドで横たわりながら混乱と羞恥からの興奮ではたして今日は眠れるのだろうかと考える。


 ……しかし体はまだ発育途上の8歳児、わりとあっさり眠れてしまった。

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