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11、学園生活が始まったのはいいけれど

「本日より新しくこの学園に通う新入生の皆さん…………」


 学園長と紹介された初老の人物の長々とした祝辞を俺は会場の最前列で顔だけは真面目に聞き流していた。

 今日は学園の入学式で、これから延々と壇上の人物達の演説をこうしてすることもなく聞いていくことを考えると、とても面倒だが顔に出してはいけない。

 学園長が言っている学園の主旨は要約すると、「学園の外の身分に囚われず共に切磋琢磨するように」という建前らしいが、姉のレオノーラから聞いた話では本音は、「あまり身分差をひけらかすと空気も読めない馬鹿と周りから思われるから自重するように」ということと、「空気を読んで上の者の意見に無闇に逆らって波風を起こさないように」だそうだ。

 やれやれ貴族ってのは日本人もびっくりする程本音と建前を使い分けているらしい、面倒極まりないことだ。


(あー早く終わらないかねぇ。そういえば今は春らしいけど春といえば花見だよな。花見といえば桜ってこっちにはあるんだろうか? あったらいいなぁ、桜といったら俺は昼の桜より夜中暗い中に白く浮かび上がる夜桜の方が好きなんだよなぁ。あとは満開の桜より散り際の桜吹雪も好きだな。あー団子食べたい。炭酸飲料飲みたい。)


 などと益体も無いことをつらつらと考えていると、


「つづきまして、答辞として新入生代表のヴァナード・ドゥ・ウル・ラグドネア殿下のお言葉を賜りたくお願い致します」

「麗かな日差しの今日この日に学園の新たなる仲間として先達に迎えられることを大変喜ばしく思う。…………」


 壇上に立った緋色の髪の少年の言葉をきっかけにややだれていた空気がにわかに引き締まったのを感じた。

 流石は王族、カリスマでもあるのかなぁなどとのんびりと考えていたが、だんだんと周りの空気の意味が違うことに気付いた。

 それは引き締められた緊張感というより、引き絞られた狩人の弓というか虎視眈々と狙う猛獣の空気が密かにしかし確実に自分の周囲の女子から醸し出されているのだ。


(怖っ、というかこれって……王子の玉の輿狙いってことなのかな。怖いわーとばっちりとかに遭わないように関わらないようにしよう。)


 王子と関わらないように改めて心に決めてから容姿を覚えようと王子の方に意識を向けると、挨拶が終わったのか壇上から降りようとする第一王子と一瞬目が合った気がした。


(ん? 今目が合わなかったか? まあ気のせいだよなそんな理由もないし。そういえば式の後はクラスへ移動だっけ一緒のクラスじゃないといいな。)


 などと考えている内に入学式はつつがなく終了し俺は自分のクラスへと案内された。



 教室に入るとそこには見知った顔がいた。


「アーシェ、一緒のクラスになれてうれしいわ。一年間よろしくお願いしますね」

「わたしこそよろしくねユフィ」


 知っている顔のユフィを見つけ一安心していると、


「アーシェ様、一緒のクラスになれて光栄です。これから一年よろしくお願いします」

「あ、フラメルも一緒だったんだ。こっちこそよろしく」

「アーシェこちらの方は?」

「ああユフィ紹介するね。フラメルだ。うちの領の出身者だよ」

「まあユフィーリア・ドゥ・ネル・アーヴィンよ。アーシェとは同室なの」

「フラメルと申します。以後お見知りおき下さいませ」


 挨拶をすませ控えめながらも3人でかしましく話していると、


「ふむ、ここか」


 その一言で教室の騒がしい空気が一瞬で変わった。


(この空気はついさっき覚えがあるぞ。これは……まさか。)


 恐る恐る教室の出入り口の方へ視線を向けるとそこにはさきほどの入学式で新入生代表の挨拶をしていた第一王子の姿があった。

 今一番関わりたくない相手と今後1年間関わる可能性が上がったことについて溜め息を漏らすのを我慢していると、


「これはヴァナード殿下、お初にお目にかかります。わたくしめはヴェネシア公爵家が三女のヴァネッサと申します。以後お見知りおきを」

「わたくしは…………」

「お初に…………」


 少しでも覚えめでたくしようとクラスメイトの殆んどが、貴族らしく礼儀ただしく静かにだが砂糖に群がる蟻のようにワラワラと第一王子の下に挨拶に集まってきた。

 そんな様子を俺達3人は興味なさげに遠巻きに眺めていると、


「あら、そんなところにいて殿下に挨拶に向かわないなんて臣下として礼儀がなってないのではなくて?」


 真っ先に第一王子に挨拶をした……確かヴァネッサとかいう女子生徒が何が気に食わないのか知らないがこっちに難癖をつけてきた。

 やれやれこっちとしては関わりたくないからわざわざ挨拶に行かなかったんだがそんなことをおくびにも出さず、


「そのようなつもりはございません。ただ、殿下も他の方からの挨拶に応じて忙しそうだったので、お手を煩わせないように後でご挨拶に伺うつもりでした」

「公爵家のわたくしの言う事に意見する気かしら。まったくどこの家の者かしら」

「これは挨拶が遅れて失礼を、アルシェイル・ドゥ・エラ・ヴィクトワールにございます」

「ふうん、伯爵家の者がわたくしに対してそんな口の聞き方をしていいのかしら?」

「滅相もございません。ただ、ここは学園ですので」

「まあ」


 向こうの方が爵位が高いので、一応下手にまわりながら言質が取られないように学園の建前で受け流しているとますますヒートアップするヴァネッサ、さてどうやって矛を収めたらいいか考えていると、


「何をそんなに騒いでいるのだヴァネッサ? む、其の方は?」

「お初にお目にかかりますヴァナード殿下、ヴィクトワール伯爵家が三女アルシェイルにございます」


 第一王子にも目をつけられたらたまったものではないのでおれは殊勝な態度で挨拶をする。


「ふむ、それでどうしたというのだヴァネッサ?」

「殿下に挨拶にも行かない無礼者に注意をしていたところです」

「と言っているが?」

「そのようなつもりはございません。ただ、殿下のお手を煩わせないように後でご挨拶に伺うつもりでした」

「だそうだヴァネッサ。もうじき教師もくるしここはそれで良いのではないか?」

「……殿下がそう仰るのなら」

「ありがとうございます。お手を煩わせて申し訳ありません」


 ヴァナード殿下の取り成しでなんとか穏便に矛を収められ、俺はほっと息をついた。

 ……と言いたいところだけどヴァネッサはまだ不満らしい、そことなく険のある視線を感じる……簡便してほしい。



 今日の授業は初日ということもありどの教科もざっくりとした説明が主だった。

 俺が気になったのは当然魔術の応用の授業だ。

 俺がこれまで学んだのは基礎だけだったので、今日教わった各属性の魔術の特徴と応用でこれからさらに色々なことが出来るとあってとても興味深かった。

 各属性の魔術の特徴と応用はこんな感じだった。

 木属性は植物のイメージだったがもっと範囲が広く生命全般の属性らしい、回復系統はこの属性だそうだ。

 火属性はほぼイメージ通りの炎を操る術がメインで、サブ的な特徴として精神を昂揚させて身体能力を上げる魔術がある。

 金属性は若干イメージが違っていて、金属は勿論のこと無機物を司る属性らしく石系統の魔術はなんと土じゃなくてこちらだそうだ。

 水属性はほぼイメージ通りの水を操る術がメインで、サブ的な特徴として浄化したり精神を沈静する魔術がある。

 風属性もほぼイメージ通りの大気を操る術がメインで、サブ的な特徴として探索系統の魔術がある。

 俺の唯一の得意属性である土属性は土を操る術がメインでなんというか地味でぱっとしない物ばかりだったが、サブ的な特徴として他の属性のように他人にはかけることができないが自分に大地のマナを利用して強化魔術をかけることができるそうだ。

 強化魔術は持続型なのでかなり高い適正と修練が必要になるそうだが適正に関しては俺は問題ないはずだからあとは修練あるのみだな。

 俺は早速今日の午後から魔術の修練を始めようと思い計画を立てていると、またしても一番上の姉のレオノーラからの呼び出しが入った。


 折角魔術の修練をしようと思ったのに嫌だなぁ。

 レオノーラからの呼び出し……無視するわけにはいかないし、面倒ごとの予感しかしないなぁ。




本編が始まったのでジャンルをハイファンタジーから異世界(恋愛)に変えてみました

ただ……未だにどっちの方がジャンルとして合っているのか作者として悩んでいます(え゛っ?)

あとどんなキーワードつけたらいいかも悩んでいます


……でも一番の悩みはキャラの名前づけだったりします

なんていうかこう見たことある名前をつけるっていうのに抵抗があったり

でもオリジナルを考えていいのが思いつかなかったりという

みなさんは名前ってどういう風に考えているんでしょうか


はい、愚痴っぽくなってすみません

これからも読んで楽しんでもらえるようにがんばります。

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