同室
学園へ着いてしまった…。
リサはこれからの3年間を思い絶望しそうな心を奮い立たせ決心する。
恋愛フラグを叩きおってやる!と。
「はじめまして!私、ルーリア・メルセイ。よろしくね!」
王都にある学園は全寮制で、2人一部屋となる。
そして、この黒髪のボブカットの少女、ルーリア・メルセイは…。
(サポートキャラ!)
明るく情報通の彼女は、時として攻略キャラと私を引き合わせ、悩める私を支えてくれる心強いキャラ。
だが、私としては攻略キャラと引き合わされるのは困る。
「はじめまして…。リサ・フェルトです」
だが、敵になられても困る。
私にとって厄介でしかない人物といえる。
さて、どうやってやんわりと攻略キャラに引き合わせられないように言おうか…。
流石に「私、王族や高位貴族と仲良くしたくないです」なんて初対面で言えば、頭のおかしい子扱いは必然。
なるべく会いたくはないが、攻略キャラ2、3人と接触したのちに言うのが自然だろう。
「リサね!よろしく!」
そう裏表を感じさせない笑顔で笑う姿にホッとする。
ルーリアのことをゲームで知っていたとはいえ、この世界に転生し、王都に出てきて、ゲームでは深く語られなかった身分差別というものをありありと感じさせられていた。
だからこそ、この裕福でないとはいえ歴史古き貴族の少女が平民で田舎者のリサに微笑む姿がどれほど奇特で尊いことなのか理解することができる。
きっとゲームの中の私も攻略キャラ関係なく、日々日常からルーリアの存在に支えられていたのだろう。
「よろしくお願いします。ルーリア様」
「もー、そういうのいいよー。折角のルームメイトなんだから仲良くしよ!」
「…うん!」
気さくなルーリアがそう言うのは知っていたので抵抗もなく頷けば、ルーリアは少し驚いたように目を見張った。
その姿にリサは思わずビクリと体が固まる。
何か不況でも買っただろうか?もう少し粘るべきだった?
「え…」
混乱し次々色んな可能性が掠めては消えるリサの頭の中とは逆に、リサの口から出たのはその一言だった。
「あ、ああ!ゴメン!こんなにすんなり受け入れてもらえるなんて思わなくて!」
「ええ…」
「他の子に言ったときにもっと粘られたから、それが普通だと思ってたの!」
「ほか…?」
「そう!ウチの近所の領民とか!通いの使用人とか!」
ルーリアの気さくを知っているとはいえ、こちらで15年生きたリサは、そのおおらかさに唖然とした。
「それは確かに難しいかな」
「そう?でもリサはあっさりそうしてくれたじゃん!」
「それは良い意味で私とルーリアが無関係だから」
「良い意味で無関係?」
「そう、ルーリアは私の村の領主の家でも私の雇主の家族でもないでしょ?主従関係にないから遠慮なくいけるの」
「そういうもの?」
「そういうもの」
「ふ~ん。まあ、リサと仲良くなれるんならいいや!」
そうあっさりとルーリアは笑う。
そのさっぱりとした性格でルーリアは、女性からの人気が高かった。
「それじゃ、リサ。学園生活先輩の私が、学園を案内しよう!」
そういってルーリアは、芝居かかった様子で扉を開けた。