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捜索

 




「変わり者の娘、ですかぁ…」


「ああ、この村には変わり者の娘が居ると聞いた」


 高圧的な騎士に村の人々は困惑していた。

 代表として出た村長も騎士など生まれてこの方一度も目にしたことがなかったのだ。


 変わり者の娘。

 そう言って思い浮かぶのは、女でありながら男以上の狩りの腕前を持つ少女、リサ。

 だがそれを正直に話していいものかと皆首を傾げる。

 確かにリサは変わり者だ。

 だが、村人達からすれば可愛い村の娘の一人。

 変わり者過ぎて嫁の貰い手がないのは有名な話だが、それでもこの高圧的な騎士に無体を強いられるかもしれないと思うと知らんぷりしてしまおうかと悩む。


「変わり者ならリサだよ!」


 だが、そんな大人の配慮を知らない子供は元気よく答えた。


「みんな言ってるもん!リサは変わり者だって!」


「女なのに文字を読んで」


「狩りをして」


「魚取りをする」


 子供達の主張に騎士達はどう判断すべきか頭を悩ます。

 騎士達が探しているのは、精霊と話す変わり者の娘であって、罷り間違ってもそんな可愛いげの欠片も無さそうな男のような娘ではない。

 だが、旱魃などの影響が少ない地域の中心はこの辺りで、これより前の村には精霊姫らしき娘は居らず、この先にも村はない。

 ここがハズレなら一から探し直しである。

 そんな騎士達の悩みも騎士の手前今更止めに入れない村人達の焦りも知らない子供達はさらに言葉を紡ぐ。


「それにリサの天気予報はよく当たるんだ!」


「晴れてたのにリサが雨が降るって言ったら雨が降るんだ」


「川で流された新しい草履がリサに言われて次の日に川辺に行ったら見つかったし!」


「小さい子が何もないところに話しかけてると精霊様とお話してるって言うし」


 どんどん怪しくなっていった流れはついに確信へと変わる。

 そのリサという娘が精霊姫なのだろう。と。

 そんな騎士達の様子を感じ取った村人達もざわめき出す。


「そのリサという娘はどこにいる」


 高圧的な騎士の言葉に村人達は顔を見合せどうするべきかと頭を悩ます。

 もしかすると時間を稼いでリサを逃がすべきかもしれないと。


 そんな村人達の戸惑う様子にイライラし始める高圧的な騎士の前に一人の青年が人をかき分け表れた。


「待って下さい!騎士様!リサが!リサを!どうするおつもりですか!」


「…フェイ」


 誰かが青年、リサの兄フェイの名を呟いた。

 フェイの顔はすでに白に近いほど青ざめている。


「誰だお前は」


「リサの兄でございます!」


 不愉快げに眉間にシワを寄せた高圧的な騎士に物怖じすることなく、フェイは自らを名乗った。


「なるほど…」


 目の前に表れた青年が探してる娘の身内だというのならば、高圧的な騎士もその質問を無下には出来ない。


「…スウェルブ学園に通ってもらうためだ」


「…へ?」


 だが、高圧的な騎士は、その態度に反してただの子爵の四男坊。

 王命により、精霊と会話する娘が居るはずだからその娘を見つけてくるようにとしか知らない。

 なぜ、貴族の子供達が通う国一番の学園に変わり者の娘を入れるかなど彼には到底理解できなかった。


 そしてその返答にフェイは、間抜けな声をだした。

 学園とは、確か貴族の通うものではなかったかと首を傾げる。


「何でも良いだろう!さっさとリサという娘を出せ!」


 詳細を知らないことを誤魔化すために高圧的な騎士は、声高だかに命令する。


「はぁ、とは言われますしても、妹は今は森に狩りに出かけておりまして、いつ戻ってくるのやら…」


 最近では、村の男衆も恐ろしくて入れない森の奥深くまで入り込む妹を思いフェイは思わず遠い目をする。


「呼び戻せばよいだよう」


「あんな森の奥深くまで入ってさ迷わない者などこの村にはおりません」


「では待たせてもらう」


「それは構いませんが、1週間は覚悟しておいてください」


 なんていうのは大袈裟で、長くても2、3日も経てば帰ってくるが、ちょっと盛れば騎士達も帰ってくれるんじゃないかとフェイは期待する。


「長くはないか…」


「森の奥深くまで行くので」


 話を盛ってるからな。


「連絡が取れなくて不安にはならないのか?」


「いえ全く。そういう娘なので」


 高圧的な騎士が探りを入れるも、フェイはすげなく否定する。

 そういう娘なのは事実だが、家を空けるときは事前に申告してくるし、毎日夕方にその日に狩られた肉がリサに懐いてる鳥によって運ばれてくるので、生存確認に困ったことはない。

 わざわざ伝える気はさらさらないが。


「…その娘はいつ頃出発したのか伺っても?」


「え、ああ、今朝方に出発しました」


 どう質問するべきか困っている高圧的な騎士の後ろで声を発したのは、黒髪に黒目の男らしい少し野生的なイケメン。

 高圧的な騎士よりも随分としっかりしているようだが、歳は妹と変わらなそうだと観察する。


「なるほど。テスカ様。では、我々が森に娘を探しに入りましょう」


「ふむ、確かにそれが早いか」


 そういうやいなや、高圧的な騎士は部下の騎士達に指示を出す。


「行くぞ、ギルゲイン」


 騎士達は馬に乗り、森へ駆けていった。





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