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油断





夕暮れに村を出て森へ入る。


夜の森は危険だが、人に見られる訳にはいかない。


森をひと気のない方へ、ない方へと歩く。


そして、村からも離れ、周りに人がいないことを確認した。


「ねえ、次の雨はいつくるの?」


普通の人からすれば、ひとり言を問いかけるように言う頭のおかしい娘だと思われた事だろう。


『次の雨?』


『次の雨はひと月後だよ』


「ひと月!?」


それは、のほほんと日照り続きの日々にも気付かず狩りに勤しんでいたってリサにだって不味いことくらい分かる。


「ひと月も雨が降らなければ、農作物も枯れ果てるし、人も動物も沢山死んじゃう!」


『そうかもね!』


悲痛な声を上げようともお構い無しにあっけらかんと言う精霊に唖然とする。


「ど、どうにか出来ないの!?」


だが思い返せば、精霊とは気まぐれでその強すぎる力から、程度の差はあれど思いやる心が希薄だと思い当たる。


『どうにか?』


『どうにか?』


『できるよー!』


『リサが望むなら!』


だが、精霊にも心がある。


気に入った人、特に幼い子などは精霊が見える事もあり、気まぐれに願いを叶えたり、助けたりすることがある。


そんな精霊全てに愛される存在。


それが精霊姫。リサである。


「それなら雨を降らせて!作物が育ち、人や獣が生きられるくらい!必要最低限の手助けでいいから!」


彼女は少し自覚が足りなかったのだろう。


どれほど自分が希有な存在か…。


思い出した当初は鮮明に覚えていた自分の奇特性。


だが、紙が高価な世界で記録することも出来ず、記憶とともに薄れる感覚。


だって幼子は見れているし、稀だが話す子も居る。


獣達にだって見えてる。


気まぐれに気に入った人を手助けすることもある。


手助けされた側が気付いてるかは別として。


そう、リサは完全に自分の奇特性を軽視していた。


と、同時に精霊に願うことに慣れすぎていた。


少しづつその願いが大きくなっていることに気付けないくらい…。





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