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蘇る記憶

 




 ああ。


 目の前には巨大な城。


「今日からここが貴女の住まう学園です」


 いくつもの城がひしめき合い、そびえ立つ。


 はじめて乗った豪奢な馬車。


 はじめて見たどこまでも続きそうなにぎやかな街。


 ああ…。


 深い深いため息を吐き、絶望する。


「来てしまった…」


 運命の歯車が回り出す。





 ーーーーー




 幼いの頃から感じていた既視感。


 ふよふよと浮かぶ光の玉。


 お父さんもお母さんも兄弟達も見えないという不思議な光の玉。


 それとお話しするのが楽しくて楽しくて仕方なかった。


 そんな代わり映えしない穏やかな日々。


 水瓶に映った顔を見て飛び上がって驚いた。


 それと同時に流れ込む記憶。


「うそでしょぉおおおおおお!!!!!」


「ついに頭がイカれたか」


 兄の失礼極まりないセリフを無視し、頭を抱えてしゃがみこむ。


「私がヒロイン!?私が精霊姫!?うそだろぉおおお!!!!」


「おい…お前の妹大丈夫か…」


「大丈夫。いつものことだから」


 記憶の中の一部。


 最後に過去最高にハマった乙女ゲーム。


 精霊姫と呼ばれる精霊に愛され、精霊と話せる特別な主人公。


 そんな主人公に比べてかなり幼いが、よく似た顔立ちの自分。


 農村出身のヒロインが貴族のヒーロー達と恋に落ちる分かりやすいシンデレラストーリーが好きだった。


「ただし2次元に限る!!私は平穏に暮らしたいんだよ!!」


「叫ぶのははじめてだろ?」


「いや、叫ぶのもひとりでぶつぶつ喋ってんのも変わんなくね?」


「おー、お前の妹また暴走してんなー」


 貴族との恋なんて、価値観も習慣も違う所に嫁ぐなど、御免被る。


「ふ、ふふ、ふぅふふ…私は農民に嫁ぐ!!!!」


「逆にどこに嫁ぐ気だったんだよ、お前の妹」


「知るか」


「木こりとか?行商?」


「いや、誰か笑い方にツッコミなよ」


 農村というだけあってこの村の9割は農民、1割が木こりや行商、牧師などを兼任した農民である。


「…っていうか、お前らさっきからうっさいわ!!」


「うっさいのはお前だ。バカ」


 バコッといい音が鳴る。


「ぶったー!お兄ちゃんがぶったー!お父さんにだって殴られたことないのにー!!」


「そりゃそうだろ。お父さんは、お前がこれ以上バカになるのを恐れてるかなら」


「なん…だと…」


「いや、知ってんだろ。昨日だって、お父さんに大人しく、お淑やかにしないって、嫁に行けなくなるからって言われてただろ」


「でも、ずっとお父さんと一緒がいいって言ったら、仕方ないなぁって言ってくれたよ!」


「やめろ。嫁行け」


「むぅ、お兄ちゃんのいじわる!」


「黙れ。小姑として居すわるな」


「くっ!いいもんね!お父さんとお母さんにお願いして、平凡で地味でそこら辺にいるモブDとお見合いして結婚するもんね!」


「理想低いな」


「今に見ていろ!平凡で地味でそこら辺にいるパッとしない特に何ができるわけでもない面白味の欠片もない男と結婚してやる!!」


「逆にお前はそれでいいのか」


 妹の謎の捨てゼリフにツッコミながら走り去る妹を見つめる。


「あれ?リサちゃんまた来てたの?」


 妹の走っていった方から来た少年が問いかければ、兄は1つ頷いた。


「ああ…」


「相変わらず、フェイのこと好きだねー」


「……」


 長男のフェイと次女のリサは年が10歳違うが、フェイのしたの姉や兄2人より、リサよりしたの妹より、フェイに一番懐いていた。


「お手伝いしてくれてたんだよ」


「いつもいつも働き者だね」


「変り者だけどいい子だよな」


「まぁ…」


 15歳のすでに成人したフェイからすれば、リサは最後に主だって面倒を見てあげた兄弟だし、一番懐かれてると嬉しいとも思う。

 口に出す気は更々ないが。


「せめて、妄言癖さえなくなればな…」


「まあ、小さい子にはあることらしいし、大きくなれば落ち着くよ」


「だといいんだけどな…」


 妹の将来を危惧し、ため息を吐いた。






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