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VRMMO

無名ゲーマーの小さな挑戦

作者: 黒田明人

 

VRMMOがどういう意味とか、今更だから説明しないぞ。

知りたきゃ自分で調べてくれ。


それはともかく、今オレはあるゲームの取り扱い説明書を熟読している。

さっきまで情報掲示板の情報を見ていたところだ。

それはβの情報が満載になっていて、殆ど全ての職業の取得条件が載っていた。

後はNPCショップの価格表なんかもあって、ありとあらゆるアイテムの価格が載っていた。

そうしてオレの目指す職業がおぼろげに見えてきた。


中盤以降最強のひとつになる職。


こいつを序盤から獲得しようという試みだ。

可能性はある、だが誰もそれを試してないんだ。

だからもしかすると無理かも知れないが、挑戦してみたいと思ったんだ。


たださ、こんな職業ってさ、ファンタジーじゃないと思うんだけどな。


開き直ってアバターは和風テイストにしてみました。

だって洋風じゃ合わない職なんだし。

そしてスキルを10個選び、とりあえずログインした。


あのさ、初期資金ってさ、もう少し多いもんじゃないのかな。

普通はさ、初心者の武器・防具ぐらいはあるもんだろ?

無ければ初期資金を多めにして、プレイヤーに買わせるべきだろ。

後、凄く言いたい事があるんだけどな。


チュートリアル無いの?


まあ、説明書から公式から情報掲示板から、ありとあらゆる情報を得たから何とかやれそうだけど、普通はチュートリアルってあるよね。

まあいいや、とにかく買物に出かけるか。


「木刀? 800デニールでさぁ」

「何、500しかない? おととい来やがれ」


酷いよなこれ。


初心者だったらそのままリタイアしそうな対応だぞ。

てかさ、初期所持金500で何しろと言うんだよ。

防具だって一番安いのでも1500デニールだよ。

だからそこいらの奴らは手ぶらでうろうろしてたんだな。

となると今頃、フィールドではモンスター相手にステゴロで……ああ、何と言うゲームだ、これは。


となるとますます挑戦するしかなくなったな。


雑貨屋でアイテムをつらつらと見ていく……

草刈鎌300デニール。

ペットの鎖150デニール。

紐50デニール。


「合計500デニールになります」

「はい、これ」

「毎度ありがとうございます」


毎度ってアンタ、初めてだぞ。


町の外れに座り込み、そこいらから石を拾って製作開始だ。

草刈鎌にペットの鎖を接続し、反対側に石を紐で括り付ける。

実に簡単な工作完了だ。


アイテム名 鎖鎌もどき 鎌攻撃力+5・錘攻撃力MAX+50


もどきってのが気に入らないが、一応目標の武器が完成した。

このMAXの付く攻撃力ってのは、分かり易く言うと、巧く当たればって意味な。

クリティカルとは意味合いが違うんだけど、まあ、似たような感覚だ。

ああ、そう言えばスキル10個の内訳言ってなかったな。


≪鎌術≫ 鎌の扱いにプラス(大)補正

≪木工≫ 木に関する生産に必要なスキル

≪鉄工≫ 金属に関する生産に必要なスキル

≪雑貨作成≫ 雑貨に関する生産に必要なスキル

≪創意工夫≫ オリジナル生産にプラス(大)補正

≪発明≫ 生産スキルにプラス(小)補正。オリジナル生産にプラス(中)補正

≪才覚≫ 全てのスキルにプラス(小)補正。生産スキルにプラス(中)補正

≪器用≫ 全ての行動的スキルにプラス(中)補正・AGI+20


ここまでで8個しか無いじゃんって思ったろうけど、スキルは行動で増えるんだ。

だから増えると期待してポイントを温存したって訳。

もちろん、他の生産系を取るって方法もありはしたし、剣術や盾術を取る手もあった。

だけどオレは剣術の上位派生職である、鎖鎌が序盤に出せないかってのを試したかったんだ。


普通は鎖鎌は最初の町では手に入らない。


鍛冶のレシピでもかなり先の武器なので、そうそう簡単に手に入るものじゃない。

となると自作に頼るしかない。

なので木工に鉄工に雑貨であらゆる基礎生産を可能にし、創意工夫でアレンジを可能にし、後は可能な限りのプラス補正を足して、それで初っ端からもどきが付いたけど、普通じゃ手に入らない武器が手に入ったと。


御託はここまでだ。


さて、狩りに出てみるか。

伊達に時代劇オタクじゃないって、なんか情けないオタクだなぁ。

まあ、中身おっさんで悪かったなってやつさ。

角の生えたウサギを見つけ、鎖をヒュンヒュンと……ええいっ……スカッ……あううっ。

外れてもアクティブになるようで、ウサギは突進してくる。


バカめ、まだ鎌があるんだぞ。


自慢じゃないが避けるのは得意なんだ。

半歩横にずれて鎌でザクリと斬り付ける。

さすがは農具、ダメージが少ないぞ。


仕方が無いから鎖でウサギの首をしめて殺した。

はふうっ、これ、使い方が違うっっ。

よし、飛ばすのはもっと慣れてからにするか。

次なる獲物に対し、回転の勢いのままに錘を叩き付けた。


即死でした。


これ、いけるかも。

何度もやっていると紐が緩み、石が勝手に飛んで行くのには参ったが、レベルも何度か上がっているうちに、使い方にも少しずつ慣れてきた。

たださ、そこらの奴らが奇異な目で見て通るんだよな。


何やってんの、こいつ。


そう瞳が言っているのがよく分かるぞ。

ウサギのドロップも順調に集まった頃、遂に鎌の寿命が来ちまった。

串肉屋にウサギの肉を売り、裁縫屋にウサギの皮を売る。

角は確か冒険者ギルドでの討伐証明部位だったな。

まあ、βと変わってなければの話だけど。


冒険者ギルドに登録し、ウサギの討伐ってのを3回やったって事で報酬をもらった。

10匹討伐で80デニールってのを3回な。

まあ、安いんだけど、肉とか毛皮が売れるからまだましだろう。


雑貨屋に赴き、草刈鎌の替刃を購入した。

普通に売っている草刈鎌の刃はノーマルタイプらしく、ちょっと丈夫な替刃があったから購入したんだけど、1枚350デニールだった。

刃の交換をすると攻撃力が上がりました。


アイテム名 鎖鎌もどき+1 鎌攻撃力+27・錘攻撃力MAX+50


よしよし、鎌の攻撃力が上がったな。


鎖鎌も慣れたら使い易く感じるな。

リアルで庭で紐の先に釣りの錘を付けて回して当てる練習はやったんだ。

ただ、ターゲットを植木鉢にしたもんだから、爺さんに殴られたけどな。


いや、植木鉢が割れるのはまだ良かったんだ。

爺さんが怒ったのは、盆栽を粉砕しちまったからだ。

うちの爺さん、怒ったら身近な物を何でも投げる癖があってよ、オレは速攻で逃げたんだけど、後で殴られたんだ。


まだ良かったよ。


あれ、逃げなかったら使用済みの大人用紙おむつ投げられていたよ、絶対。

だから殴られてもまだましだと思えたんだ。

ふうっ、雑談をしながらでも狩りはやれるようだな。

リアルで練習した甲斐があったってものだけど、だーれも使っていない武器なんだよな。

それそれぇ……よーし、命中、即死ご苦労様。


いや、良いね、この武器。


もどきだけど錘のほうは関係無いからよ。

獲物満載になったから、今度は錘のカスタマイズになる。

色々あちこちに売った後、釣り道具の中の鉛の錘、その中で一番重いのを購入する。

ペット用のチェーンも頑丈な物を購入し、草刈鎌を新たに購入して替刃も購入。


またしても町の片隅でコツコツと……


アイテム名 鎖鎌もどき・ツインブレード 鎌攻撃力+27×2・錘攻撃力MAX+125


おおお、派手な威力になったけど、相変わらずもどきなのね。

それでも使えれば良いのさ。

そうして派手に狩りを再開する。

錘が重くなったのと、鎖が重くなったのと、鎌がダブルになったので慣れるのに時間が掛かったが、狩りの途中でいきなりスムーズに身体が動くようになる。


これはもしかして来たかな?


≪鎌術≫ 鎌の扱いにプラス(大)補正

≪鎖鎌≫ 剣術の上位派生職

≪二刀流≫ 両手に武器を持っての攻撃にプラス(大)補正

≪木工≫ 木に関する生産に必要なスキル

≪鉄工≫ 金属に関する生産に必要なスキル

≪雑貨作成≫ 雑貨に関する生産に必要なスキル

≪創意工夫≫ オリジナル生産にプラス(大)補正

≪発明≫ 生産スキルにプラス(小)補正。オリジナル生産にプラス(中)補正

≪才覚≫ 全てのスキルにプラス(小)補正。生産スキルにプラス(中)補正

≪器用≫ 全ての行動的スキルにプラス(中)補正・AGI+20


よしよし、よーし。


オレの作戦は成功し、序盤から上級派生職に就く事が出来た。

その後の活躍に付いては言及しないが、習得条件の予想とスキル構成と、もどきのレシピを情報掲示板に載せておいた。

ちょうど、トップ連中に混ざってエリアボスレイドに参加していた頃、奇特な鍛冶屋と共に拵えた、鎖鎌風武器で戦っていた頃の話である。


もどきは消えたけど、風ってのが少し残念な武器だった。


その頃には上級派生職間近のトッブ連中も居て、オレの武器を見て転職の参考にしたいとか言っていた。

それから後輩君もいくらか出て、鎖鎌職も増えたんだけど、もどき使っている奴は誰も居なかった。


でも、チャレンジした頃のレシピは今でも取ってある。

 

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