小説はマンガの劣化ですか?
題名のようにきかれたとき、あなたはどのように答えますか?
漫画の面白さはなんとなく理解できますが、小説の面白さを言葉で伝えるのは難しいですよね。小説の面白さを きかれた時に、それは何なのか? また、どうやって魅力を伝えていくのかを考えていったエッセイです。
これを読んでいるあなたは、きっと本を読むことが好きな人だと思います。そんなあなたは「なんで小説が好きなの?」と言われたことがありますか? その時に、どう答えたでしょうか?
物語が好きだと答えるかもしれません。でも、物語をエンターテイメントで取り扱っているものはたくさんあります。例えば、漫画が有名ですよね。漫画の面白さはなんとなく理解できますが、小説の面白さは伝わりにくいです。物語が楽しいとか、わくわくするとか、それは漫画でも楽しめる要素です。
なので、物語としての楽しさを主張しても「なんだ漫画と同じじゃないか」とか言われるかもしれません。付け加えて言うと「漫画と面白さが同じなら漫画の方が売れてるから小説の方が劣化なんだろ」と言う人もいるかもしれません。また、答え方次第では最悪の場合、「小難しいの読んで気取ってるみたい」と揶揄されるリスクもあります。
大好きな物を貶されると嫌な気分になるのは、どんな人間でも共通です。そのような意味では、小説好きは常に貶されるリスクがあるかもしれません。もちろん図星という意味ではなくて、純粋に好きだからこそ貶されたくないのです。
本好きの人の精神衛生上のために、どうにかして小説の楽しさを伝える必要があります。
小説の楽しさを分かってもらいたい時は、「読めばわかるからとりあえず読め!」が一番シンプルで伝わりやすそうですよね。
とは言っても小説を読むのはハードルが高いのも事実です。
なので、「じゃあ何か薦めようか?」と言っても、「あんまり読まないから、面倒くさい」と言われることもあるかもしれません。もしくは、薦めたものを読んでもらえても反応が薄かったり「やっぱり分からないや」と言われるかもしれません。
先程にも言いましたが、小説を読むことはハードルが高いためそもそも読んでもらえなかったり、また 真剣に読んでもらえる機会も少ないです。なので、薦めるなどの行動の前に、小説の面白さをちゃんと理解しやすい言葉で伝える必要性があります。
それでは小説の面白さとは何でしょうか。表現媒体が違うならば、きっと楽しみ方にも違いがあるかもしれません。
小説は娯楽であり面白さの派生ですからカッコよく言うと、芸術性というものがあるはずです。いわゆる文芸ってやつです。文と言うからには、「文字」がキーワードのはず。そこに注目しながら考えてみましょう。
ここで少し話題が飛びますが、みなさんは「読書感想文」というものを書いたことがあるでしょうか。私が通っていた小学校では「読んだ本に感想を書いて、お友達に薦めてみよう!」というイベントをやっていました。
私は「○○なシーンが感動した」と感想に書いたのですが、友達の感想では「××が感動した」と書いてありました。
これはどちらが正しい意見でしょうか。おそらく「みんな正しい」と学校の先生は言うと思います。
私は本を読んで満足したし、友達も本を読んで満足しました。感じ方は違うはずなのに、一冊の本が私と友達の両方を満足させました。
同じものを見ているのに感じ方が違っていて、にもかかわらず どららも正しいなんて、よく考えてみれば不思議な状況ですよね。
どうしてこの現象が起こったのかというと、小説は行間を読むことが求められるからです。感想がバラバラになったのは、行間から読み取った 個人の想像の違いによるものだと思います。
この想像というものですが、たとえばこんなことを感じたことはありませんか?
読んでいた漫画がアニメ化したり、小説がドラマ化したとき、「声が想像と違う~」とか、「え~! この役者じゃあ似合わないよ!」と思ったことはないでしょうか?
この気持ちはあなたの想像の世界と、アニメやドラマが違っていたから感じることができた感情です。最適なイメージに浸っていたのをぶち壊されて変な気持ちになったということですね。あなたが気付かない間に、あなたにとっての最適な音声や映像を想像して作り上げていたということです。
小説は漫画のような絵もなければ、声もありません。文字という無機質な表現しかありません。なので、全部を想像しなければいけません。キャラクターの容姿や、声だったり、外の風景だったり、表現されているもの全てが想像によって最適な世界感で繰り広げられます。想像の世界ですから、すべてにおいてフリーなイメージで楽しむことができるのです。
想像特有の、あなたにとってピッタリで最適な世界を楽しむことができること。これが文芸である小説の面白さであり、最大の魅力なのではないでしょうか。
よって、小説は漫画の劣化ではありません。想像の幅を考えると、小説の方が広く楽しむことができるでしょう。
ちなみに、それなら漫画は絵があるせいでキャラクターの人相が強制的に決まってしまうわけで、想像の幅が狭くなるということだから漫画は面白くないの?となってしまいますが、漫画にもちゃんと利点があります。
それは「絵があれば絶対に誰でもわかる」という点です。もっと分かりやすく言うと「分からないものを表現する」ことに非常に優れています。なぜならば、小説は あくまで想像の世界なので、あなたの知識にあるものしか想像することができないからです。
具体例があった方が分かりやすいと思います。ファンタジーの炎の魔法を例にしてみましょう。
本文に、『炎が炸裂した』と文字で表現されていたなら、私達はイメージできるでしょうか。私達の知識には『炎』の映像があって、『炸裂』は打ち上げ花火みたいな感じになるのかなあ、となんとなくイメージできると思います。
しかし、『炎』や『花火』を見たことがない人は『炎が炸裂した』を連想できるでしょうか。ベースになるイメージが存在しないので想像しにくそうですよね。『炎』か『花火』のどちらかの知識があったとしても、片方だけでは理解できない文章になってしまうと思います。更に 知識として『炎』と『花火』があったとしても、お互いのイメージを結びつける想像力がないと何が起こっているのかすら理解できないでしょう。
しかし、漫画のように絵で表現されていたら、少なくとも100パーセント分からない状態ではないですよね。あなたが人生において初めて見る物体でも「こういうモノなんだなあ」と感覚的に理解できます。
このように知っているモノでないと、小説はイメージしにくいようです。文字を通して物語がイメージできないなら「つまらない」になってしまいますよね。
そういえば最初の方に『薦めたものを読んでもらえても「やっぱり分からないや」 』と言われたことを述べましたよね。もしかしたら、あなたが想像するのに慣れている作品が、他の人にとっては想像するのが大変で 素直に物語を楽しめてなかったからの発言かもしれません。
あと、「読めばわかるからとりあえず読め!」に、「面倒くさい」と言う人もいましたよね。これは、容姿や声、背景など全部を想像するのが大変なので 直感的に面倒くさい作業だと感じているのかもしれません。つまり、小説を読むこと自体に慣れていないせいで、小説の楽しみ方が分かっていないだけなのかもしれませんね。
例えばスポーツの楽しみ方は、ルールをだいたい覚えて、プレイもそこそこできるようになってから戦略を考えられる次元になると面白さが ぐっと感じやすくなります。
これは小説も同じではないでしょうか。面白さ理解してほしいなら、面白い小説を何度か見せてあげて、小説の楽しみ方を覚えて、小説に慣れてもらえれば良いかもしれません。そして、読み手自身の心を揺らしにかかるジャンル(戦略)を探していくレベルになれば、ぐっと小説の楽しさを理解してもらえると思います。
つまり、小説の楽しさを理解させてあげたい時は、小説をいかに薦めるかにかかっていると言っても過言ではないかもしれません。
しかし!
理解させたい時に注意しなければいけないことが一個だけあります!
それは、あなたにとって面白い作品は勧めてはいけないことです!!
なんで!?と反論する前に、よ~く考えてみてください。
自分が大好きなのを深めていくのがマニアな趣味なわけで、小説は自分の好みな物語をふか~く探していくマニアックな趣味なわけで、結果 自分の大好きが煮詰まったモノの塊なので、あなたにとって面白いというのは、他人からは理解されにくい可能性があります。自分の中は普通だと思っていても、客観的に見ると煮詰まりすぎていて引いてしまうレベルかもしれません。
だから、あなたが大好きな小説というものを勧めないであげてください。代わりにバランスのとれているタイプの王道でおもしろい小説を薦めてあげてください。
こうして小説の面白さをわかってもらえる手助けをしていけば、小説の魅力の理解が少しずつ広がっていくと思います。