第35話
おれにとって高校時代最大の不幸は、ケイコとコウイチとは3年間、同じクラスだったことだ。
会うと心が乱れるので、できるだけ避けようと常に周囲に注意を払うような緊張の日々が続いた。
そんな生活が楽しいはずがない。ただただ苦痛だった。
部活も辞め、独りの時間が増えた分、勉強に費やした。遊びまくっても良かったのかもしれないが、なぜか真面目に学校へ通い、勉強しまくった。父親に付け入る隙を与えたくなかったのだと思う。
お陰で世間一般では一流と評価されている東京の私立大学に進学することができた。
大学生になってからは人並みに遊んだ。実家を出て大学近くのアパートに住んだので、自由を満喫できた。
四年の間に女とも何人か付き合った。しかし、誰とも長続きはしなかった。相手がちょっとでも我儘を言ったり、気に入らないことをすると即別れた。
あの頃のおれにとって、女はただの肉の穴、欲求のはけ口としての存在価値があるだけだった。それでも学内の女子に手を出さなかったのが幸いしたのか、平穏無事な学生生活を送ることができた。
就職したのは小さな文具メーカーだった。
他の友人達と違って、一流企業にも公務員にも興味は湧かなかった。
それ以前に、「就職」と聞いてもピンとこない、何か現実感の伴わない響きだった。とは言うものの、働かないわけにもいかず、就職難で焦っている他人を横目にのんびりと準備した。
もともと具体的な仕事の希望はない。なんとなく、あまり日常生活からかけ離れたような仕事はイメージも湧かないし、などと思いながら、ふと自分が握っているシャープペンが目にとまった。これならイメージできるかも、と思った。
下調べもせず適当に入社試験を受けたらあっけなく合格してしまった。
小さいが、この不景気にもかかわらず、近年二つほどヒット商品が出たお陰で利益が上向きの会社だった。
この会社で、ミズノハルミと出合った。
(第36話につづく)




