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銃口の先に  作者: 蛍火
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エピローグ【Another Side】



 とある部屋にて、記者とルエスタ・カインスの対話





 ――忙しい時に取材を受けていただき、ありがとうございます。


 いえ、やるべきことは終わりましたので大丈夫です。ですが『イリス』の記録も取りたいので、早速取材を始めていただいてもいいでしょうか?


 ――はい、わかりました。ではまず、今回発表された『イリス・フルーミル』について、簡単に教えてください。


 十八歳の少女で、二丁拳銃使いです。六発入りのリボルバー。


 ――六発のリボルバー、ですか? それだと、すぐに弾切れしそうな気がするのですが……


 そのために体術も覚えさせています。というより、体術を覚えさせたためにリボルバーとなったわけですが。


 ――……申し訳ありません。よくわかりません。


 『イリス』が対峙するのは、ほとんどが鋭い刃物です。そのため、直接的な攻撃及び防御には、主に銃本体を使用することになります。リボルバーは他の銃に比べて構造が単純で、強い衝撃を与えても歪みが生じにくいという利点があります。歪んだ銃は暴発するなどの危険性がありますので、そのことを考慮したら必然的にリボルバーになりました。


 ――そういうことですか。それはやはり、『ロゼッタ・フルーミル』に関係していますよね?


 一応は。彼の武器は双剣ですから、完全な近距離とはいいがたい。それを補うためです。ですが、候補の一つ、といった扱いでした。


 ――他の武器はどのような物があったのですか?具体的に教えてください。


 同じ双剣使いというのも案の一つでしたね。他には、力を補うための両手剣、遠距離から補佐する洋弓、素早さを生かした細剣、見た目重視の鎌というのもありました。


 ――本当に様々ですね。


 『イリス』のほかに可能性があったのは『セラン』です。見た目からは推測できないほどの糸使いでした。


 ――糸使い、とは? 容姿もお願いします。


 物を釣り上げるときに滑車を使うと楽ですよね? そんな感じで、縦横無尽に糸を張り巡らせる戦い方です。少しの力で、最大の力を得る。物理の応用版と思っていただければ。武器の形状から、八歳の少女を起用しました。幼い身体ということで、かなりの身体能力や強度、自己修復能力をもたせましたね。


 ――八歳! ということは、『ロゼッタ・フルーミル』との関係性は『父親』でしょうか?


 はい。ですが、その設定と異常なほどの回復力の所為で、かなり捻じ曲がった性格になってしまいました。停止寸前まで自分の身体を痛めつける子なんて、初めてで。感情も片寄ってしまい……


 ――感情、というと。やはり気になるのは『イリス』の感情です。


 その点については文句なしです。『イリス』は『ロゼッタ・フルーミル』に勝るとも劣らない作品となっており、仇討ちや形見を身につけるなど、彼も起こさなかった行動が見られています。


 ――それは期待できますね。


 はい、本当に。『イリス』ができたのは、素晴らしい偶然が積み重なった結果です。


 ――具体的にどういったものですか?


 『イリス』の友人として配置していた『リリア』という少女ですが、選別試験の数日前に『背徳感』を与えてみました。なんとなしに行った実験だったのですが、そうしたら、今まで植えつけていた記憶が全部飛んでしまった上に、『殺人行為』まで拒否するようになってしまって。今までの苦労が全て水の泡となりました。


 ――それはなんというか……大変でしたね。


 ですが、『イリス』に植えつける前でよかったですよ。『イリス』は、今までの中で最も可能性のあった個体でしたから。そのかわり、『イリス』には『ロゼッタ・フルーミル』との記憶を植えつけることができましたし、『イリス』の行った仇討ちと形見の両方に、『リリア』が関与しています。


 ――だから偶然、ですか。


 それと、勝利のために自傷行為も厭わない『セラン』。この子の疑似死体が、求めていた『イリス』の感情を誘発させ、『ルイス』との邂逅によって補完されました。まさか、ここで『ルイス』が役に立つとは思っていませんでしたよ。


 ――『ルイス』はどのような役割を果たしたのですか? 『ルイス』についても軽くお願いします。


 『ルイス』は洋弓使いです。『ロゼッタ・フルーミル』の兄という設定で、二十八歳を目標に作られました。遠距離支援型の観点から、『セラン』と同じく強力な自己修復能力と、『殺人に関して生じるべき感情の知識』。要するに、『リリア』に与えた『背徳感』に関する知識ですね。これをプログラムしました。


 ――『リリア』と同じようなことは起きなかったのですか?


 私自身、不思議に思っています。『感情』としてプログラムした『リリア』は失敗し、『知識』としてプログラムした『ルイス』は正常でした。これは個体差の所為かと思っているのですが……。ですが今は、『セラン』の疑似死体をみた直後の動揺している『イリス』とエンカウントし、『知識』を伝えきるまで機能停止しなかった『ルイス』に喝采したい気分ですよ。


 ――お話を聴くと、本当に偶然が重なった結果です。


 戦闘能力としては、鎌使いの『フィゼル』も評価していたんですけどね。彼は完全なる戦闘狂で、今回のコンセプトとしては不一致でした。そのかわり、『ルイス』が補完した『イリス』の感情を安定させる役割を果たしてくれました。


 ――では、最後に。今の世界について、どう思いますか?


 んー……別にいいと思いますよ。私は趣味の研究を行えますし、世界では増加傾向にあった争いが減少に転じています。このままいけば、争いのない世界も夢じゃないかもしれないですね。


 ――以上で終了です。ありがとうございました。



 ○○○



 ――今回取材させていただいたルエスタ・カインスは世界でも指折りの機械工学者で、『戦闘用アンドロイド同士の戦闘を観戦することによって生じる、人間の闘争本能の減少について』という研究テーマを掲げています。



 ――古代ローマにコロシアムがあったように、他者同士の殺戮を見ることで生物の闘争本能を抑えられるのではないか、という考えのもと、戦争根絶にも繋がるのではという意向から、国家主導でこのプロジェクトが取り組まれました。



 ――当時現存していた技術によって人間に近いアンドロイドの製作はほぼ完成していたのですが、ここで問題になったのが『感情』でした。『人間に近い感情』を与えた場合、戦闘自体を放棄するか、逆に強度の戦闘狂になってしまうアンドロイドが多発してしまったからです。



 ――それを解決したのも、ルエスタ・カインスでした。彼は数十のアンドロイドを製作し、それぞれに別の自我を形成させました。そして人間を育てるように、彼らを同じ空間で生活させたのです。これにより、各アンドロイドは組み込まれた『成長プログラム』に従って独自に『感情』を形成していきました。この『感情』は、人為的にプログラムした場合よりも安定性が高く、より人間に近い『感情』であることが判明しました。



 ――とはいえ、形成される『感情』の多くは目的であったものとはかけ離れていました。そんな中、偶然生まれた個体が『ロゼッタ・フルーミル』でした。



 ――『ロゼッタ・フルーミル』は、多くの戦闘経験を蓄積することで敵の行動パターンを予測するという特殊能力を持つ双剣使いとして作られました。彼は、日に日に強さを増していきましたが、ルエスタ・カインスによると、廃棄についても検討していたようです。というのも、彼の能力は他の個体と一線を課していましたが、肝心の『感情』がとても乏しかったからです。



 ――しかし、彼は最後の選抜を行うための試験である『殺し合い』に臨み、そこで『悲しみ』『苦しみ』という感情を生み出しました。それはルエスタ・カインスの望んだものでありましたが、僅かながらにプログラムされている『殺人行動』に対する拒否反応が見受けられました。けれど数分後、『ロゼッタ・フルーミル』は偶然与えられていた『家族』という疑似記憶により、さらに『葛藤』という感情を生み出すことに成功。その上で『殺人行動』を継続しました。



 ――すでに『戦闘用アンドロイド同士の戦闘』は一般開放されており、そこに登場した『ロゼッタ・フルーミル』の名前は、瞬く間に広がりました。



 ――強く、優しく、殺したくないと叫びながら、それでも剣を振るう姿に多くの観衆が目を奪われました。そして、『彼の家族を作って欲しい』という声が上がるのは、必然だったのでしょう。



 ――そして、ルエスタ・カインスによって新たに作られた約百体のアンドロイドを殺し合わせ、生き残ったのが今回初出場となる『イリス・フルーミル』。二丁拳銃使いである彼女は『ロゼッタ・フルーミル』の妹として製作されました。彼女も兄と同じ道を通り、彼以上に素晴らしい『感情』を作り出したようです。



 ――さて、そろそろ『戦闘』の開始時刻となります。ルエスタ・カインスに最高傑作とよばれた『イリス・フルーミル』の実力はいかに! そして初の、兄と妹による共闘試合も見どころです! さあ、本日も存分に殺し合ってください――!




これにて『銃口の先に』完結です。



人間だと思い込んでいるアンドロイドのお話、といったところでしょうか。

私が一番好きなのは『セラン』です。なんとなく書きやすい子で、初めはただ殺されるだけだったのにいつの間にか重要人物にまで出世していました。

『セラン』を好きになってくれる人がいれば嬉しいなあ……



本当に最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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