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銃口の先に  作者: 蛍火
14/15

エピローグ【Meet Again】

「さて、心の準備はどうだ?」

「緊張、しています」


 試験が終わってから数日後、様々なメンテナンスを終えた私の心臓は破裂しそうなほど拍動していた。



もうすぐ、兄さんに逢える

人を殺した私を、貴方は受け入れてくれますか?



 それがわかったのか、カインスさんは「そんなに緊張する必要はない」と私の頭を撫でた。


「試験を行う前に言っただろ? 『狂喜する』って。それに、お前は兄に匹敵するほどの最高傑作だ」

「そう、ですか……?」


 それでも兄との約束を破っている身としては嫌な想像ばかりが浮かんでしまう。

 つい短剣に触れると、カインスさんは、それ、と首を傾げた。


「お前、短剣持ってたか?」

「……リリアの、です。で、でも! これには何度も助けられましたし、大事な物ですので…えっと……」

「要するに?」

「持っていても、いいですか……?」


 鞘ごと外して抱きしめると、カインスさんは少し考えて納得したのか、いいんじゃね、と答えた。


「てか、なんで回収されるとか思ってるわけ?」

「私の武器はリボルバーですから……」

「まあ、初めは取り上げようと思ったけどな」

「っ!?」

「初めは、つったろ!? 今はそんな気は全くない」


 思わず後ずさった私に、カインスさんは焦ったように弁解した。


「確かにお前の武器はリボルバーだ。でも、接近戦もできる。それに、その短剣はリリアの物なんだろう? 形見か?」


 問いかけにこくり、と頷くと、ならなおさらだ、とカインスさんは笑った。


「お前は俺の言葉の意味を知り、人の大切さを知った。短剣はその象徴みたいなもんだ。肌身離さず持ってろ」

「っ、はい!」


 短剣を強く抱きしめて返事をするとカインスさんは苦笑して、そろそろ行ってこい、と私の肩を押した。


「そこの扉の先に、お前が追い続けた兄がいる」

「……」


 ほら、と身体の向きを変えられて、後ろから背を押された。

 私は鞘を元の場所に戻すと、扉の前で立ち止る。手を伸ばして扉に触れ、思わずカインスさんを振り返った。

 彼は優しげな表情で笑っていて、頑張れ、と口を動かしていて。

 それに勇気づけられるように頷き、扉を押す手に力を込めた。



 ○○○



 扉の先にいた男は私に背を向けていた。

 私と同じ稲穂色の髪。腰に佩いている双剣。


「予定の時間をおしている。いったい何を――」


 扉の音に文句を言いながら振り返った男は、私を視界に捉えた瞬間言葉を詰まらせた。


「兄さん」

「……」


 兄さんの大きく開かれた瞳が私を捉えたまま、動かない。


「兄さん」


 再び声をかけても兄さんは動かなくて。

 耐えられなくなった私は俯いた。



私が今までしてきたことは、なんだったの?

兄さんに逢いたいという理由だけで多くの人を殺した

追うなという言葉を、私を護りたいという兄さんの意志を、無視した

だから、相手にしてくれないの?



「わ、たし」


 身体も、声も、全てが震えだした時。


「――イリス」


 ふわり、と包み込むように抱きしめられた。


「追って、きたんだね」

「っ! ごめ、なさ……!」

「謝らないで」


 指で掬うように顔をあげられ、見上げた兄さんはとても愛おしそうに私を見つめていた。


「俺はイリスを護りたかった。だから、追ってきてほしくなかった」

「……」

「でも、ね」


 兄さんは別れの日のように、私を強く抱き込んだ。


「イリスと別れてから、毎日が狂いそうだった。何のために生きているのか、どうして人を殺しているのか、わからなくて。だから今が、夢なんじゃないか、って。これは、俺が見てる夢? ねえ、イリス。イリス、イリス、イリス……!」

「……夢じゃ、ないですよ」


 私は兄さんの背中におずおずと手を回すと、彼の胸元に顔を埋めた。


「私…兄さんに逢いたくて、逢いたくて……! それに、護られる存在じゃなくて、隣に立ちたかった。だから、頑張ったんです」

「……すごく、嬉しい」


 兄さんは私と視線を絡め、照れたように笑った。


「ありがとう、イリス。これから俺と一緒に、戦ってくれる?」

「っ、はい!」


 再び強く抱きしめてきた兄さんの暖かさに身を任せ、私はゆるりと瞳を閉じた。



これからよろしくお願いしますね、兄さん




もう一つエピローグがありますが、ハッピーエンドっぽい終わりがいい方は見ないほうがいいと思います。

友人曰く「あげて落とすところ」らしいので。



ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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