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銃口の先に  作者: 蛍火
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あと、少し

「……」


 ずるり、と短剣を引き抜いた私は、それを軽く振るって血を飛ばした。

 飛び散るルイスの、赤。

 完全に落ちてはいなかったけれど鞘に戻し、ぐい、と頬を拭った。

 ぬるりとした感触が気持ち悪い。

 そして、ルイスの傍に落ちていたリボルバーを手に取った。近くに転がっていた弾丸も拾い、シリンダーの中に込める。

 ガチャン、と戻すと、ゆっくりと振り返った。


「たった数時間なのに、何年も会っていなかったようね」

「本当に、そうだね」


 真っ赤な血を滴らせた鎌を引き摺りながら歩いてきたフィゼルは、生きていると思ったよ、と朗らかに笑った。


「話しをしただけで強いと解った。だから、君との殺し合いを楽しみにしていたんだ」


 鎌から落ちる赤が、落ち葉を赤黒く染める。

 フィゼルはそのままの状態で、君は、と問いかけた。


「イリスは見たかい?」

「セランのこと、かしら? ええ、みたわ」


 フィゼルから視線を外さず、左手でリボルバーを撫でた。

 その感情の削ぎ落とされた声音に、何とも思わないの、とフィゼルは疑問を浮かべた。


「仲よさそうだったのに」

「そうね。フィゼルはどう思ったの?」


 それに疑問で返すと、フィゼルはどうだろう、と首を傾けた。


「残念、かな。でもセランは弱そうだったし、それほど。イリスが生きていたから、どうでもいいや」

「……そう――ルイスが言っていたのは、こういうことね」

「ん? 何か言った?」

「いいえ、特には。貴方、何人殺しました?」


 小さく首を振って会話を遮り、別の質問をする。それにフィゼルは「三人」と答えた。


「奇遇ね。私も三人、殺したわ」

「そうなんだ。その六人とセランで、七人。僕達を除くと三人だけど、生きているとは限らない」

「確かに、今生きているのはほとんどいないでしょう……これが最後の戦いかもしれない」


 撃鉄を上げ、フィゼルに向ける。

 フィゼルはにやりと口角を上げ、鎌を構えた。


「じゃあ、最後の殺し合いを始めよう!」


 振り上げられたフィゼルの鎌を最小限の動きで避ける。そのがら空きになった胴に、リボルバーを向けた。

 銃口が火を噴き、弾が撃ち出される。しかしそれは鎌の柄に弾き飛ばされた。


「残念だったね! 次はこっちの番だ!」

「ちっ……!」


 大振りな鎌を器用に操るフィゼルに舌打ちし、後ろに飛んだ。

 追撃を仕掛けてくるフィゼルから距離をとりつつ、鎌が私の目の前を通り過ぎた瞬間、地面を強く蹴ってフィゼルの面前に躍り出た。


「っ!」


 息を呑んだフィゼルの右側頭部を狙って、身体を開くように右腕を振るう。

 フィゼルが咄嗟にしゃがんだために、リボルバーは空を切ったが、その勢いを利用して左足の蹴りを繰り出した。


「ぐっ……!?」

「まだです!」


 宙に掬い上げるような蹴りは、フィゼルを地面から少し持ち上げる。フィゼルの体勢が整わないうちに一回転した私は、弾を放った。


「っ、ああ……楽しいよ……!」


 避けきれずに右腕に裂傷を作ったフィゼルは、にやあ、と嗤う。

 ゆらりと身体を揺らしたまま、痛みを感じていないかのように鎌を振り下ろした。


「僕は今まで、このリエンに血を付けなかった人を見たことがない! 逆に、僕に傷をつけるなんて! 本当にイリスは素晴らしい!」

「それしきの傷では止まりませんか……!」


 先程以上の速さで振り回された鎌を、間一髪で避けた。

 今まで戦った敵の中で一番速い。

 ぎりぎりを通り過ぎる鎌に、冷や汗が噴き出す。

 一瞬でも気を抜いたら殺される――!

 ぐっ、と今までよりも距離をつめて鎌を振るってきたフィゼルに、こうなったら、と銃口を向けた。


「しつこい男は、嫌われますよっ!」


 顔面に向けて発砲する。フィゼルが攻めから回避行動に移ったその瞬間の隙を付いて、左手で腰の後ろの短剣を引き抜き、振り下ろした。

 それを見たフィゼルは、僅かに地面を蹴って後ろに飛んだ。

 短剣が宙を切る。


「僕の勝ちだ!」


 前のめりになったせいで無防備の背中に、攻撃に転じたフィゼルが鎌が振り下ろした。

 それに見えないように、にやり、と口角を上げた。


「っ、な!」

「貴方の負けよ」


 私の背中に突き刺さると思われた鎌の切っ先は、落ち葉の溜まった地面に深く突き刺さった。

 鎌を避けるように素早く前転してフィゼルの懐に入り込んでいた私は、驚愕に目を見開いている彼にリボルバーを押し当てて、引き金を引いた。



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