アホのご主人様
「今.....何て言った?」
佐藤は青ざめた顔で聞いてくる。
無理も無い。いきなり目の前に居る人間は幽霊です!!何て言われて、平然としていられる物か。
俺は、佐藤に椿が幽霊である事を話した。どうやら、コイツには椿が見えるらしい。
「なぁ夏野、お前本当に幽霊になっちまったのか?」
「ふぇ!?....うん....」
「コラ佐藤!!椿は人見知り激しいんだ。滅多に関わった事ねぇテメェが勝手に話掛けんな!!」
案の定、椿は縮こまって俺の背中に隠れていた。子供か?
「ま、とりあえず、コイツは幽霊になっちまった。」
「だから?」
「へ?」
思わず間抜けな声出しちまった。まぁ、椿とハモったのは少し嬉しいが、なんで佐藤はこんなノーテンキなんだ?
「幽霊になって誰にも見えねぇのは解ったがよ、何か不都合か?鋼二のアホには見えんだから、問題ねぇだろ。鋼二も、こう見えて根はしっかりしてて良い奴だかんな♪アホだけど。」
褒めるかけなすかどっちかにしろ。
「ハイッ!!」
オイ椿!!素直に笑顔で返事すんな!!アホじゃ無いとか言えぇ!!
チクショウ、良い事言って締めやがって。
その後、授業も終わり、帰宅した。
その日は何故かずっと椿が上機嫌だった。良い事なのに何か腹立つ。
そして、俺は風呂に入った。
「ふぅ~、生き返る。そういや、あの事故以来風呂入って無かったな。よく洗わなきゃな」
そう言って水道の前に座ると、
「お背中をお流ししましょうか?」
「あぁ、頼.....うおぉっ!!」
倒れたシャンプー等の容器を頭に受けながら、俺は流しの隅に張り付いていた。
「何で入って来やがった!!」
「だから~、背中流そうとおもったの♡」
「思ったの♡じゃ無くて!!入ってくんな!!」
「何でさ~」
「まず、服着たまま風呂入るかっ!!」
何言ってやがんだ俺!!死ねっ!!!
「そっか~。こー君は私の裸見たいんだ?」
コノヤロ~、見たいに決まってんだろうがクソ野郎!!
「そうじゃ無くて!!あーもう、とにかく出てけ!!」
「あ~、生き返る~♪」
いつの間にか椿は裸で浴槽に居た
「出てけっつってんだろうが!!」
「体洗おっと♪」
椿は立ち上がった。ちょっと待て!!
「待て椿!!早まるな!!」
「こー君、私を見て?」
見れる訳ねぇだろ
「駄目だっ!!やめろぉ!!!」
と言いながら見てしまった俺を一瞬悔いたが、椿は水着姿だった。
「えへへ~♪」
「ったく.....このバカ...」
「背中流すよ~♪」
「わーったよ」
渋々、俺は鏡に向かって座った。とは言えない。結構嬉しかった。
力加減はどうですか?ご主人様」
誰がご主人様だ。
「まぁ、良いんじゃねぇか?」
「良かった、アホのご主人様♪」
「この野郎、佐藤に影響されやがって!!」
俺はとっさに椿の方を向いてしまった。急所は勿論タオルで隠れてる。
一度椿を抱き寄せ、
「アホとか言った罰だ。今日は背中流させてやらん。」
そう言って、頭から一度お湯を被り風呂場を跡にした。
部屋に戻った後、TVゲームを10分程プレイして、すぐに寝た。
この日は、椿は俺の部屋には来なかった。
夜、椿は鋼二の部屋には来なかった。
一体何処で何をしているのか、椿は今後どうなるのか。