幸せは歪み始める
椿と付き合い始めてからという物、毎日が凄く楽しかった。
始めてのデートはあまり良い物かは解らないな。
約束の2時間前に来たり、水族館で足下の浅い水槽に足を落としたり、昼食はファストフードで、遊園地のジェットコースターで死にかけたり、夜のパレードを見て、最後は閉園時間ギリギリに観覧車に乗ってキスをして帰った。
帰るのが21:30を超えていたため親に半端なく怒られた。
次の週末もまたデートに出掛けた。今回はピクニックって所か。
デカイカマキリを捕まえて見せると椿は
「ひゃあっ!!」
と叫んでしゃがみ込み、泣き出してしまった。
椿が虫嫌いだという事も意外だし、高校生にもなって公共の場で泣くなよとも思ったが、何よりも後ろから抱いたらすぐ泣き止んだ事が一番意外だった。
「赤ん坊かよ」
「だって、こー君がカマキリなんか持って来るからぁ」
「ハイハイ、悪かったよ」
その後、椿が俺の分も飯作って来てくれたのは最高に嬉しかった。
その日は夕方のまだ明るい内に帰った。
ここまでは良かったが、問題は次だった。
次の週末は二人で観たい映画を一本づつ選び、両方一緒に観た。一つの大きなカップのポップコーンを二人でつまみながらな。
昼飯はちょっとオシャレなイタリアンの店に入り、昼食は滞りなく済ませた。
午後は動物園に行った。
椿のスットンキョーな行動はいくつもあったが、一番衝撃だったのはヤギに紙を食わせようとした時だ。
飼育員の目の前で
「ホ~レご飯だよ~」
だからな。
「オイ椿!!ヤギは紙を食ったらヤバイんだぞ!?」
「ウソつけ!!」
「嘘な訳あるかぁ!!大体、動物に餌を与えるなってここに書いてあんだろうが」
「ホントだ」
ってな調子だ。
俺も怒った様に接してるが、実際には結構楽しんでるんだよな。
今日も帰りは遅くなった。
帰宅路が別れる所で
「家まで送るぜ?」
とちょっとカッコ付けて言ってみたんだが
「良いよ、もう暗いから。こー君も気を付けて帰ってね」
「おう、じゃあな」
俺の家はここからは椿の家と正反対なため、軽く手を振り背中を向けると。
後ろからキキィィィィッと大きな車のブレーキ音と、ドンッ!!と衝撃音が聞こえた。
急いで振り返ると、4~500m位先に車が停まっていて、そこから椿が走って来る。
椿はアスファルトに膝をつき、俺の腰の辺りを掴んで大声で泣き叫んでいた。
俺はしゃがみ込み、椿の頭を撫でてあやした後、何があったか聞くと、車の停まっている方向を指指して
「わだじひがえでしんじゃっだろぉ!!」
今のは泣きながらでも伝わったぞ。
私弾かれて・・・マジかよ・・・・・。
椿から告げられた衝撃の事実。
現実が受け入れられず、混乱する鋼二が取った行動は。