契約に至るまで
――世の中には悪魔がいると貴方は思いますか?
私たちが住むこの世界は見えないところで悪魔が蔓延っているのです…
ただ見えないだけであって……。
俺の名前は、神村 守。〇〇県〇〇市、宮間高校の一年生だ。成績は中の下・運動が少し得意なその辺によくいる子供だ。
…ただ一つのことを除いては…
その一つとはズバり、悪魔が見えるという有り得ないことだった。代々続く神社を家にもち、お祓いで有名な所であったため人に見えざるものが見えるのは必然だったのかもしれない。
幼少のころお祓いに来た一人の女性を見て異変に気づいたのがきっかけだった。
「あ、あのぉ神主様…私は何かに取り憑かれているのですか?」
恐る恐る神主である守の父に聞いていた。
「大丈夫ですよ。お祓いいたしますので安心してください。」
と父は女性に告げていた。
しかし守には女性の背中に何かが憑いているのがぼんやり見えるのを感じていた。
気のせいだと思っていたが、何回かお祓いに来るいろいろな人を見るうちにぼんやりしていたものが鮮明に見える様になっていた。
核心を持ったのが父が病気で倒れたときだった。
「父さん…父さっ。 ひぐっ。ぐすっ。」
病院のベットで横になっている父を見ている時だった。
たまたま一人で看病しているときに、ふと
「この者は、私が連れていく…ヒヒッ。
」
と、小さく聞こえた。
「だ、誰っ?」
守は怯えながら周りを見渡したが人がいる気配がない…
さらに、
「この者は、私が連れていく…ヒヒッ。」とまた同じ言葉が聞こえた。「だ、誰かいるんでしょっ?で、出てきてよ。」と守が声をだした。
さらに、
「父さんを連てかないで。お願い…」と告げた。すると
「小僧、貴様は私の声が聞こえるのか?」と何かが告げた。
守が恐る恐る声を震わせて、
「き、聞こえるょ」と言った。
すると守の背中に悪寒が走った。
泣きそうな顔をして振り向くと、大きな鎌をもち顔や身体が一切黒い何かで覆われた人が立っていた。
「ぅっ…、~~~~~~~~~~~~っ」
叫び声をあげているつもりが声がでない。その様子を見て黒い何かは、
「ホゥ、姿形まで見えるとは…ヒヒッ。」と言いさらに、
「この者はもうどうにもならぬ。ゆえに私が連れていく。」と告げた。「なんでっ?治らないの?」と守は泣きながら尋ねた。
「この者は今日死ぬことが決まっている。変更されることはない。」と淡々と告げる。さらに、
「私の姿を見たからにはおぬしの命もどうなるか…」と話しスゥっと消えていった。黒い何かが消えると守の意識も落ちていった。
「うぅん…」
目が覚めるとそこはいつもの見慣れた景色。
「また、あの日の夢か…」
そうつぶやき起き上がる。最近は同じ夢をよくみる…。最悪の気分だ。
…父は黒い何かに出会った時に確かに死んでしまった。
母が言うには、父が亡くなったときからしばらくの間、原因は不明だがずっと意識がもどらず俺は入院していたらしい。
退院してからというもの何事も無かったかのように生活を送っていった。
普通に学校行って帰ってくるそんな日々を送っていた。
父の死から6年後の命日の日、その日はこれまでの日常を変えていく運命の日になるとは思いもしなかった。
命日の日、父の法要をしませ、床についた……
「ヒヒッ、〇〇〇を頂きに参りました。」急に聞こえた声はどこかで聞いたことがある。そう、あの黒い何かである。
守は起き上がり黒い何かに尋ねた。
「何を取りに来たんだ?」と、
「以外ですね、驚かないのですか?ヒヒッ」と黒い何かが尋ねてきた。
「毎日夢で見てたからな。慣れたよ。」
と守は答えた。
すると黒い何かはニヤリとして、
「今回は、貴方の命をいただきに参りました。」
と答えた。さらに、
「前回貴方は私の存在を知り、尚且つ私と会話をしてしまいましたので…特殊な件ですが命を頂きにまいりました。」
と告げる。
「見知らぬ人に話かけられて命をもっていかれるなんてまっぴら御免だね。」と守が言うと、黒い何かは鎌を首元まで持ってきた。
「私は死神です。あなたたち下賎な人間とは異なり死という文字が入っていても神なのです。」
と怒りを露にして言っている。
さらに死神は続けた。
「貴方にはもう2つの選択肢しかありません。」
「このまま死ぬか、悪魔に魂を売ってでも生き残るか、二つに一つしか無いのです。」「えっ?」
守はその言葉しかでてこなかった。
死神は黙ってしまった。
長い沈黙のすえ守が選択したのは、悪魔に魂を売ってでも生き残るだった。
「悪魔に魂を売ってでも生きてやる。このまま何もせずに死ぬなんてまっぴら御免だ!」と声を張り上げて言った。
その瞬間死神はニヤリと笑い手に持っていた鎌を振り下ろした……。
気がつくと見慣れない風景というか、見たことも無い禍禍しい景色が目の前に現れた。そして守の前で死神と物凄い邪気を発している者が話をしている。
死神が、
「この方は悪魔の王であらせられる、サタン様である。貴方の命はこの方に委ね、私は次の仕事に向かいます。では…。ヒヒッ」と告げ去っていった。
「我がサタンである。おぬしか?悪魔に魂を売ってでも生きたいというやつは?」
サタンのあまりの迫力に守は、
「はっはいっ」としか言えなかった。
サタンは、
「我が配下の者と契約を結ぶが良い。さすれば、おぬしは生きることができよう。」
「ただし、おぬしが現世でもう一度死ねばおぬしの魂は契約した悪魔の物となる。そのかわり現世で生きている間は契約した悪魔の力を使うことが許される。」
と告げた。
他にも、
「配下は、より取り見取りだかランクが高いほど寿命が縮まるぞ。ガハッハッハッ。」と高笑いをして目の前から消えた。
「えっ?ちょっちょっと待ってくださぃ。」
と焦りながら守は言ったがすでにサタンの姿はなかった…。
「どうやって選べばいいんだよぉ~。」
守は嘆きながら悪魔を選ぶことになった。
サタンがいた場所には一冊の本があった。
「ここから選べってことか。でも辞書ぐらい分厚いやろ。」
文句をいいながらも自分の一生がかかっているため真剣に選ぶ守であった。
守が選ぶ悪魔は……?