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民の望んだ皇妃  作者: 界軌
本編
24/85

24.奸計

 暗闇の中に黄色い光が揺らぎ、書斎のように本棚に囲まれた部屋を照らす。


 同じ闇でも、皇帝ノールディンの寝室に広がるそれの印象が冷厳だとしたら、ここに広がるそれは泥濘だった。原因は、葉巻の煙が作る大気の澱みか、それとも集った者たちの腹の内の為なのかは知れない。


 一人掛けのソファに深く腰掛けた男が最初に口を開いた。


「皇帝陛下が城を出られたそうだ」


「また御公務で?」


「そうではない。皇妃、いや、元皇妃のフェリシエ殿を追われたとか……」


 騒ぎだすような真似こそしないが、集った者たちに動揺が走ったのは確かだった。


「あの、英明なる陛下もあの女のことではよくよく目が曇るようですな……」


 しゃがれた声が忌々しそうにそう言う。


「いっその事、…………」


 誰かが低く言った。


 すべての人間が彼の言いたい事を理解した。幾度この会合で話題に出ただろうか。個人で実行に移そうと思った者もいるだろう。


「けれど」


 そう、けれど、必ず誰かが反意を示すのだ。


「あの者は…………」


「そう、そうしてしまう訳にはいかない」


 重々しく、苦々しく、断定される。


「なれば」


 比較的若い声が言った。


「なれば、本当に消えてもらえば宜しいのでは?」


「消えてもらう?」


「城を出て、何処へ行こうとも、我らの知りうる話ではありません。どこに『雲隠れ』しようとも」


「……生かしながら、消してしまう。否、消えてもらう、か」


「それも、よかろう」


 初めの声がそう言って、それはこの会合の総意となった。










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