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初任務

頻繁にシステムの再起動を行ったせいで、整備班から幾度となく問い合わせが来た。勿論、操作に成れるために行っているだけで、問題もないし順調だと答えた。砲塔類の格納や展開もスムーズに行えるようになったが、こちらは指令所の許可を貰ってから行い始めたので問い合わせは来ていない。もっとも、最初はドック内で稼働確認を行うのは非常識だと言われた。それでも『外に出てから不調が見つかるより良いはずだ』と喰い下がって許可を得たのだが、他の艦も真似して砲塔類を動かし始めたのには驚かされた。なにしろ、格納機構を持つのは【夕張】だけなのだ。


「システム、全て異常なし」

「物資の補給、100%完了しています」

「管制より出航の許可出ました」

「了解。ドックとの全ての接続を解除」

「解除完了を確認。問題ありません」

「最微速前進。機関系システムを注視。大気層を抜けたところで転進しつつ微速に移る」

「あと10秒で大気層を抜けます。……、5、4、3、2、1、抜けます」

「転進、仰角13度、面舵21度。微速前進に移行。目標、ジャンプポイントのホールニー」

「機関、全て問題無し」

「当て舵。進路確認」

「転進問題無し。進路上の障害物、有りません」

「砲塔類の安全装置を解除。チャージ50%」

「主砲安全装置解除。副砲安全装置解除。全て問題無し。余剰出力をバイパス。各砲へのチャージ開始。……、50%チャージ完了。問題なし。炉も主機も安定しています」

「原速に移行」


端から順になのか、当艦から発進することになって最初に飛び出した。少しするとレーダー上には僚艦の位置が識別付きで表示されはじめ、順次発進しているのが見て取れた。


「強速に移行」

「進路、ズレ無し」

「機関、問題無し」


この速度で3日進めば最初のジャンプポイントに到達する。進路が銀河の中心方向のため、太陽系が勝手に離れて行き重力場の影響が少し早く抑えられるし、ポイントの方が寄って来てくれるので日数が短くなる。

問題の発生が無いので、当直体制に移行する事にした。


「事前に話した通り、直11時間の当直シフトに移行する。先ずは僕と小峰さんだ。小峰さんは3時間で休息に、4時間後には菅沢さんが当直に入ってくれ。兵頭さんは12時間後からになって僕とは時間が被らないが、何かあれば声をかけてくれて構わない」

「「「了解です」」」


悩んだ結果、1シフト11時間として5時間後に1時間の休憩を挟むことにした。次番は4時間後からスタートするので、休憩等で1時間の一人対応が発生するが基本は2名体制となる。人が少ないのでシフトを組むのが難しいが、娯楽が有るわけでもないので当面はこれで動いてもらうことになっている。ちなみに、僕が居ない間はサポートロボが操縦することになっている。なにしろ、操縦士の資格を僕以外が持ってはいないのだから。


当直と言っても今はレーダーを菅沢さんが見てくれているので手持無沙汰だ。相方が小峰さんに代わったとしてもレーダーはサポートロボが担当するので、やっぱりトラブルが起きなければ手持無沙汰だ。

タブレットを取り出して眺めていると、菅沢さんが声をかけてきた。


「艦長、サボりですか?」

「まだまだ運用面などで覚えきれていないのでね、こうして時間のある時にマニュアルや資料を読み込ませてもらっている」

「艦長に成れたって事は成績が優秀だったんですよね」

「僕自身の順位は知らされていないので分からない。たまたま、操縦の成績優良者の中で艦長の任を熟せるのが僕だっただけかもしれないし。3課程以上取っている者の中で2課程及第点が取れたので任命されたのかもしれない。もっとも国が拉致まがいの方法で攫ってきた適合者だかが100人いたとして、その中で成績が優秀だったとしても異星人が望む水準に到達しているかは分からない。不安なので出来る限りのことはしたい。これでも君らの命を預かる立場だから」

「あんまり頑張りすぎても続きませんよ。今回のテスト航行だって、短いようで結構な日数がかかりますからね」

「理解はしている。だが、ただモニターを見ていても不安や焦りを感じてしまうのでね」


艦の操縦にいたっては水に浮かんでいるわけでもないのだから、動かし方は宇宙船独自のものがあるはずだ。船体の彼方此方に姿勢制御用や逆噴射用のノズルがあるのだから、その場で180度ターンや船体を滑らせるように上下左右にスライドさせる事だって可能なはずだ。どちらかと言えば潜水艦の動きが参考になるかもしれない。


レーダーだって、現状はお任せでフィルターを掛けているから見易いが、それでは()()()()()()いても()()いない物ができてしまう。それが戦闘時の脅威になるのであれば、そのフィルターを細かく設定する事で脅威を減らす事ができるかもしれない。そもそも窓が無く、有視界航行なんて不可能な速度で飛ぶのだ、レーダー頼りで飛ぶ以上は障害となるものをすべて把握しておきたい。その為にはより多くの知識を蓄えておかないと。そして危機に直面した時に取れる手段を増やし、即時に判断をし、誰一人欠けることなく帰らなければならないと思っている。


何事もなく3時間が経って菅沢さんは部屋に戻った。1時間ほど1人になるのでレーダーを正面スクリーンに映して監視に当たるが、問題があればサポートロボの方が先に気付くだろう。


「当直に入ります」

「了解」


小峰さんが入って来て席に着いた。

正面スクリーンの端に機関系のイベントログが流れる。注意や警告の赤文字は無いので問題は無かったのだろう。サポートロボからも何もアクションが無かったので、問題無いものと認識していたが、こうしてログを流しておく必要もあるのかもしれない。


「炉も安定していますし主機も異常がないようですね。艦長は何をして暇潰しを?」

「マニュアルを読み、理解を深めている。同時に吹かせられるかノズルの数と、効率の良い制御についても知っておきたい」

「方向転換、ですか?」

「そうだ。ラム戦で狙い通りの場所に当たるためには、急旋回も含めて常識外の動きもしなければならないはずだ。当然『砲撃を受けながら』となるだろうから、最低限の進路補正で砲撃を躱しながらだ。相手の予測を裏切る動きができなければ良い的だろう」

「転換炉だけでなく、主機や補機にも負担がかかりますね」

「だからこそ、何処まで無理ができ、無理を通すための空白を作れるかを考えておく必要がある」

「そう言う事であれば、私も全力で捻出しますよ。その空白ってやつを」

「ありがとう。無いに越したことは無いが、よろしく頼む」

「はい」


1時間の休憩後に5時間の当直をし、最初の11時間シフトを終えた。次のシフトに入るまで13時間あるので、部屋に戻って航行日誌を付けよう。その後はシャワーを浴びて食事をとり、早めに就寝する事にした。かなり疲れが溜まっているようで、爆睡の予感がする。



私が当直に向かうと、機関士席の小峰が鼻歌交じりに数字の羅列を大量生産していた。


「おはよう、何かいい事でもあったの?」

「おはよう。彼、面白いね。私たちに無い発想がとっても面白い。兵頭さんが少し可哀そうに思うよ。だって、彼と2人で会話するチャンスが無いんだから」

「そんなことは無いわよ。ココだとソレに監視されているだろうし、起きている時間に部屋に押しかければ良いのだから」

「それはそうだけど。部屋に押しかけて痛い目を見ないようにね」

「大丈夫。そういった関係になっても痛い目とは思わないから」

「あれ? これは予想外のライバル出現かな?」

「予想外って、なぜ?」

「だって、彼の方が年下でしょ? この中で兵頭さんが歳も位も一番上なんだから」

「歳はそうだけど少しよ。こっちの配属になって階級は彼が一番上でしょ」

「確かに、そうかも……。ところで、分け合うつもりはある? やっぱり独り占めしたい?」

「そうね。公平に分け敢えて、彼が平等に扱ってくれるのであれば、構わないと思うわ」

「なら、そういう関係で居られるようにしましょうよ。美咲ちゃんも加わるか聞いておいて欲しいな」

「そうね。了解したわ。では、真面目に仕事をしましょう」

「了解」


何事もなく3時間が過ぎて小峰が部屋に戻り、1時間して菅沢が当直に現れた。


「おはよう」

「おはようございます。問題ありませんか?」

「そうね。船に関しては順調よ」

「えっと。艦長と何かありました?」

「無いわよ。これから有るって言った方が良いかもね」


小峰との会話を話して聞かす。勿論、彼女から聞いた艦長との会話も含めてだ。


「で、美咲はどうする?」

「大胆な事を考えるんですね。で、誰が一番に襲うんですか?」

「私は纏めてでもいいと思っているけど。どのみち艦内では無理でしょ。するならステーションか基地の部屋になるだろうし、連泊できないなら一晩でって事になるだろうし」

「私、部屋のカメラは潰してありますよ」

「私達もそうよ。でも、艦長は潰していないでしょう。艦長がどこにも映っていなければ、私たちの部屋にいることになるわ。艦長が押し入ったと見られるのは嫌なのよね。だから艦内はダメかなって」

「はぁ。あ! 勿論、私も混ぜさせていただきます。艦長って変わった人ですよね」


そう言って、菅沢は当直最初の3時間にあった会話を教えてくれた。自身の順位を知らされていない事や、全て一般から集められていると思っていることなど、真実を知ったら発狂するのではと心配になったほどだ。

それにしても規格外だ。更に知識を得て、奇策が打てないか思考し、いかに危機を潜り抜けて無事に生還するかを最優先にしている。得難い人に拾ってもらったことを神に感謝したい。

やはり皆で愛を育むべき相手で、運命の人なのだと確信した。


『兵頭さんも変わった人だよね。みんなで艦長のセフレになろうなんて。でも、言ってることは艦長のハーレムを作ろうって感じなんだよね。一夫一婦制の日本では無理なんだけど、宇宙に上がれば、帝国のルールでは一夫多妻も認められるのかな? 調べてみて、当直が艦長に代わったら「彼女が居る?」かと聞いてみよう』


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