第15話 駆け上がるステップ
入学して1ヶ月後、インターハイの地区予選が始まった。
私とアイナは1年生ながらベンチメンバーに入ることができていた。
リカさんだけがスタメンで、ユウコさん、アイナと4人で同時に試合に出ることはなかったが、久々に一緒にプレイすることができて、プレイする喜びを噛み締める。
チームは残念ながら、5回戦でシード高と対戦し敗退した。
リカさんは、1年生からずっとスタメンで、3年生からの信頼は厚く、次のキャプテンとして事前に任命されていた。
3年生たちに混じって、今回の成績に涙ながらに称えあっていたが、リカさんだけは次を見据えた眼光をしていて頼もしかった。
◇
3年生が引退し、新しい代でのチームがスタートした。
初日の練習からキャプテンであるリカさんは気合十分だった。
部員全員が着替え終わり、各々がコートサイドで靴紐を結んだり、シュートをしている中、部室の扉をバタンと勢いよく開け登場したリカさんが声を張り上げて言った。
「お前ら!もう先輩たちはいないからな!私たちがしっかりして強くなって来年のインターハイで全国に行こう!」
体育館に一歩踏み入れ、右腕はピンとして拳を高らかと掲げている。
すると、リカさんの背後の扉からユウコさんが出てきて言った。
「リカ、シャツを表裏逆にして着ているよ。」
お母さんみたいに優しい口調で指摘する。
「え、え?」
リカさんは服をチラチラ見ながら、確認しており、その様子を見ていた周りは大笑いしていた。
「…ち、違っ、違うんだ!わざとだよ、わざと!場の雰囲気を和ませるボケだよ!」
赤面しながら、慌てた様子でこの場で服を脱ごうとしていたが、隣のコートでは男子部員もいたため、先輩たちが必死に止めて部室に連行した。
リカさんの天然ボケに終始アイナと笑い転げていた。
しかし、こんなリカさんでもインターハイでの迫力のあるポストプレイには目を見張るものがあった。
高校でも少しだけ身長が伸びたようで178cmの高身長と、さらに、筋トレもしている様子から、中学生の当時と比べて体に厚みが増し、ガッチリした体型になっていた。
パワーだけでなく、スピード、ジャンプ力もあり、他校の選手を寄せ付けない体の強さがあった。
このフィジカルを駆使し、ゴール下で良いポジションを確保してリングアタックすることで高確率で点を決めてくれる。
誰が見てもウチのエースだ。
リカさんのインサイドを相手が潰そうとすると、次に待ち構えているのは、ユウコさんだった。
中学校の頃に比べて、体幹が強くなっているようで、ミドルシュート、3Pシュートの確率が上がっており、インサイドがダメでもアウトサイドでシュートを沈める。
この二人が相乗効果となって良い攻撃パターンができている。
2年生は間違いなくこの二人が中心だ。
「アイナ、私たちも早くレギュラー取ろうね!一緒に試合出て強くなりたい。」
「うん、このチームでプレイするのすごく楽しみ!がんばらなきゃ。」
私たちは気合い十分であった。
胸元で握っていた拳にふと意識が向き、指の力をゆっくり解いて手のひらを開いた。
手のひらを見つめると温かみを感じた。
(ありがとうハヤトくん。今はバスケやるだけでも十分楽しいよ。)
ブランクさえ取り戻せば自信はあった。
何せ私には中学生のときにミズキちゃんから教わっていた日々が土台にあったからだ。
あとは、高校バスケの展開の早さや、戦術の細かさへの対応、そして、スタミナさえつけば、PGとしてスタメンは取れると思っていた。
案の定、夏休み前にはこれらが身についてきて、夏季大会からはスタメンを勝ち取ることができていた。
アイナも175cmと身長の高さを生かしたプレイに磨きをかけていた。
リカさんが剛であれば、アイナは柔といったところか。
細身であり、当たり負けすることは計算の上で、できるだけ相手との接触を避けるようなプレイを身に付けていた。
その代表的なプレイとして、スカイフック(腕をまっすぐ上空に伸ばし、非常に高い打点から放つシュート)の習得に力を入れていた。
「あーもう、またそのシュートかよ。」
リカさんから逃げるようにステップを踏み、高い身長と長い腕によるスカイフックで放たれたボールは、相手のシュートをいとも簡単に止めてしまうリカさんの高らかなブロックすらひょいっとかわしリングに向かった。
しかし、ボールは何度かリングでバウンドしながら、最後は嫌われて地面にボールは落ちた。
「うーん、もう少し決定力上げたいな…。」
そう呟くアイナだったが、意気込みは十分だ。
「まだ練習に付き合ってくれますか?」
「いいよ、そのシュート身に付けようぜ。」
アイナのスカイフックの精度が上がると攻撃の幅が広がるとリカさんも思っていただろう。
とことん練習に付き合っていた。
夏季大会の頃には、アイナもスタメンを勝ち取っていた。
これでやっと、リカさん、ユウコさんとともに、念願の4人でスタメンで試合に出ることができた。
それぞれの持ち前の武器を発揮したこと、そして私たちの息のあったプレイは、ミズキちゃんがいないにしても、当時とは桁違いの凄みがあり、1回戦は95対50という大差で勝つことができた。
そこから確実に調子づいていた。
例年ウィンターカップに出場する全国レベルの強豪校に当たると負けてしまうが、大敗というような点差ではなかった。
努力すれば超えられるハードルかもしれないという期待が持てるような点差、内容であるため、負けても尚、チームとして自信がついていた。




