第10話 超越の体感
「じゃあ次はシャッフルしてチームを決めよう。」
リカさんから突拍子もない提案が出てきた。
先輩たちは久々のバスケで楽しかったんだろう。次は教える目的より自分たちが楽しむ目的で始めた。
センターサークルを囲むようにみんながそれぞれが思うところに並び、均等の人数に別れるように、1〜4の番号を時計回りに言ってチームを決めた。
みんなが言い終えるや否やすぐにリカさんが言う。
「よし、これで決まり。じゃあ1番と2番のチームから始めよう。」
「ちょっと待って、リカのチーム強くない?」
他チームの先輩が指摘する。
確かに1番である私たちのメンバーを見てみると、私、アイナ、ミズキちゃん、リカさん、ユウコさんで組んでいた。
「しょうがないだろ、ランダムで決まったんだから。時間もないし、やろうやろう!」
納得行かない様子の先輩だったが、リカさんはお構いなしにセンターサークル内でジャンパーとして構え始めた。
「PGはお任せするね。」
ミズキちゃんは私の目を真っ直ぐに見て言ってきた。
「…え、…うん、わかった。」
このメンバーだと、てっきりミズキちゃんがPGをするものだと思っていたが、託されたからにはしっかりやろうと思った。
ティップオフはチームでナンバーワンの高さを誇るリカさんがしっかり勝ち、ミズキちゃんは拾ったボールをすぐに私へパスした。
私は胸を借りようと思いながらセンターサークルまでボールを運び、フロントコートを見渡す。
左右のポストの位置にはリカさんとアイナが、コーナーにはミズキちゃんとユウコさんがポジションについている。
4人それぞれへパスを渡した後の動きをイメージをすると、誰に渡しても点が入るまでのイメージが湧き、私は内心びっくりしていた。
こんなにも選択肢が多く感じたのは初めてだった。
私のマークをしてきた相手がボールをスティールしようと右手を出してくる。
そこを逆手にとり、ボールが自分の体の後ろを通るようにして、反対側の手に切り替え、相手の右側を抜き去った。
そのままゴールへ向い、ペイントエリアに侵入しようとするところで、ミズキちゃんのマークをしていたディフェンダーが私に近づいてくる。
私はゴール下で構えるリカさんにパスしようとした。
すかさず、相手ディフェンダーはブロックしようと手を出すが、これはフェイクだ。
ひっかかった相手の動きに合わせて、ミズキちゃんはフリーでパスがもらえる位置に走り、私はすかさずパスをした。
そして難なくミドルシュートを決めてくれた。
「ナイス、ヒカリちゃん!」
ディフェンスで戻っている中、笑顔で親指を立てて称えてくれた。
次の攻撃も、また次の攻撃も、最初にパスした時と同様に一人一人の動きとパスのタイミングがバッチリ合う。
タイミングが合うことで、綺麗にパスが通り、相手がディフェンスに寄せ切れていない状態でシュートを打てている。
もちろん外れることもあるが、リカさんやアイナがリバウンドをとってくれる。
(このチームすごい…。ものすごく一緒にプレイしていて心地良い…。)
私の心は踊りながらも、みんなの輪の中に深く包まれているような暖かい心地良さを感じる。
アイナの顔をチラッと覗くと、アイナも今までバスケしていた中で、いちばんにこやかな表情をしているが同時に興奮している様子も見て取れる。
きっと同じように感じているだろう。
チームみんなのバスケの巧さが安心感を与えているのだろうか、いつもディフェンスで貢献しようと考えているアイナも積極的にシュートを打っており、決定率もいつもより高い。
シュートを決め「やったぁ!」と右手をあげながらも、すぐに自陣に振り向き、喜びながら走って自陣に戻る。
その後のディフェンスでもシュートブロックを決め、オフェンスがノったことで、ディフェンスもノッていた。
きっとゾーンに入っていたのだろう。
この試合だけでもアイナのレベルアップがわかる。
終了のブザーが聞こえた時には、(もう、終わり!?)と思ってしまうほど、このチームでのプレイに心酔していた。
「イエーイ、まずは1勝!最下位チームは優勝チームにジュースおごりね。」
「リカ、今そんなの決めるのずるいよ!」
相手チームの先輩は負けてしまったが、和気あいあいとやりとりしている。
そんなやりとりを見ていると私は自然と笑顔になった。
そして、心の中では早く次の試合が来ないかとワクワクしながら待っていた。
◇
全ての試合が終わり、今日の練習はこれで終了となった。
私たち現役チームは先輩たちの前に一列に並び対面し、「ありがとうございました!」と深々と頭をさげながら言った。
「ミズキちゃん、ありがとう。こんな機会を作ってくれて。」
「ううん、いいの。私たちは私たちで楽しかったからね。最後のシャッフルした試合なんてリカが勝手に決めてるしね。…みんな勉強ばっかりでストレス溜まってるから、単に自分たちが楽しみたかったんだよ。」
最後は苦笑いが混じった声で話ていたが、声のトーンは高く、ミズキちゃんは満足した表情をしていた。
「そうそう、マジで久々バスケできて気持ちよかったー。」
「リカさん、受験勉強頑張ってくださいね!」
私はにこっとした顔で意地悪っぽい声で言ってみた。
「勉強のことを思い出させるなよ。あー、帰ったら勉強するのかったりー。」
リカさんは冗談めかして睨みながらも、最後は笑顔で返してきた。
「お前らも新人戦頑張れよ!」
その瞬間ゴクッと唾を飲み込んだ。
やらねばと思ったが、全国大会出場チームとの実力の差を目の当たりにし、不安と不甲斐なさでいっぱいだった。




