【結婚の挨拶④】「最初の試練、その名は“選定”」
日曜の午後。
翔太は、緊張で汗ばんだ手のひらをぎゅっと握りしめながら、彼女の実家の居間にいた。
美咲の父、剛は無表情で正座している。 目の奥に、ただならぬ威圧感がある。
翔太「本日は、お嬢さんとの結婚のご挨拶に伺いました!」
剛「ほう……では、“試練”を与えよう」
翔太「え?」
剛がパチンと指を鳴らすと、戸棚から“謎の木箱”が運ばれてきた。どういう仕組みで出てきたんだ!?どう見ても普通の家具ではない。重厚な装飾と、無駄に豪華な金のエンブレムが施されたその箱には、異様な気配が漂っていた。
剛「この中には“真の絆”を象徴するアイテムが入っている。その中から、お前が“運命”を感じたものを選んでみせろ」
美咲「えっ、なに?お父さん急に何してるの?」
翔太(……なにこれ、やばい空気……)
剛「選べたなら、第一関門は突破としよう」
箱の蓋がゆっくりと開かれる。 中には、アニメ好きなら血が騒ぐようなレプリカグッズがずらり。 見覚えのあるものもあれば、マニアックすぎて判断に迷うものも。
だが——
翔太「……この指輪……!」
彼はひとつの指輪を手に取った。 それは、知る人ぞ知る伝説のアニメ『Celestial Saga -蒼穹の戦記-』に登場する、 主人公とヒロインを結ぶ“蒼穹の誓い”の証——限定デザインのレプリカリング。
翔太「これしかない……これが、“絆”だ」
剛「……選んだか」
翔太は正座し直して深呼吸。
翔太「俺の中の魂が叫んでるんです!“あなたの娘さんと未来を描くこと、それが俺の運命だ”って…!」
剛(ぐっ……それは第24話、雨の中でカイが言った名台詞……!)
剛「……貴様、それは“Celestial Saga”の……」
美咲「えっ?なに?いきなりどうしたの?え、プロポーズ?急にどうしたの??」
剛「……悪くない。だが、まだ足りんッ!!」
翔太「えぇぇぇぇー!」
第一の試練は突破した。 だが、剛の心はまだ完全には動いていない。
翔太は知らない——これが、数々の“アニメ的試練”のほんの始まりに過ぎないことを。
(続く)