第65話 特等席
「クソ雑魚なキツネかと思ったら……なかなかやるじゃないか……あはは……今すぐぶち殺してやりたいね!!」
……奴は腕を振り上げ、こちらに攻撃を加えようとしていた。
ロープは咄嗟に足を振り上げ、奴の顔面に蹴りを加えた。
「クソ雑魚に顔を蹴られた気分はどうですか?」
ロープは倒れたタイタンに向かってそんなことを言う。
……言うようになったじゃない、ロープ。
「その意気だよ! ロープ! 早くやっちまおう!」
「はい!」
私はカードを取り出し、腕輪に翳した。
『ジョブチェンジ! 格闘!!』
私は格闘ジョブに変身し、ロープと共に構えをした。
「クソ……貴様らあああああああああ!! 進化したとしても、貴様らはぶっ殺してやるぞ!!」
……奴は完全におかしくなったのか、腕を振り回しながらこちらに突進をする。
私たちはお互いに拳を前に出し、奴を押し返した。
「とりゃああああ!!」
ロープは押し返した奴に目掛けて、蹴りを繰り返す。
私も負けじと、奴に目掛けて突進をする。
「アニマさん!」
「うん!」
ロープは両手で踏み台を作る。
私はロープの考えに共感し、その踏み台に片足を乗せ、飛び上がった。
真下には、怯みを見せているタイタンの姿があった。
「クソ……この私が……こんな奴らに……やられてしまうのか……進化していない……こんな奴らに!!」
……私は足を着きだし、奴目掛けて渾身の力を込めた。
「このまま潰れろ!!」
私の足が奴の顔面に命中し……そのままハンコが押されたかのように潰された。
そして奴は……動かなくなった。
「はぁ……はぁ……」
ついに……ついにやった……。
決着が……ついた。
「……アニマさん!」
「……ロープ!」
私は動かなくなったタイタンから離れ、ロープを思いっきり抱きしめた。
「やりましたね! アニマさん!」
「うん!」
私たちはお互いに勝利を分かち合った。
「……さ、もう行こう、こんなところに長居しても仕方がないし」
「……ですね」
私は変身を解除し、ロープと外に出ようとした……その時だった。
「ふふふふ……あはははははは!!」
……倒れたはずのタイタンが、人間の姿に戻り……笑い声を上げながら立ち上がった。
私たちは咄嗟に戦闘態勢に入った……が、奴は、攻撃するそぶりを見せず、ただただ後ろへと下がっていった。
「……私を倒したこと……後悔することになるぞ! ……人々は欲望のために争い、殺し合う……貴様らはいずれこう言うだろう……『進化した方が良かった』とね……ふふふ……」
……奴は、そのまま……バルコニーの手すりに体を乗り上げた。
「……それまでに……特等席を用意しておかないとな……」
……タイタンはそんなことを口にすると……手すりを越え……落ちて行った。
私たちはその様子を……黙って見ていた。
「……行こう、ロープ」
「……はい」
……私たちは、城を後にした。
次回、最終回です。