第61話 慈善事業
……城の中に入ると、巨大な扉が大きな音を立て、閉じた。
……そして、私たちの目の前には。
「やぁ、待っていたよ」
「……タイタン」
ローブ姿のタイタンがいた。
「まぁ、立ち話もなんだ、食事の用意をしているんだ、きたまえ」
「……」
私たちはいつ襲われてもいいように身構えながら、彼女についていった。
……しばらく歩いていき、私たちは広めの部屋……食堂へと案内された。
中には、豪勢とは言えないが、軽めの食事が用意されていた。
「さぁ、食べよう、君たちのために用意したからね……何、毒は入れていないよ、なんなら私が毒見をしてあげてもいいけど?」
「……その必要はない」
「あはは、そうかい、では座りたまえ」
私は彼女に誘導され、椅子に腰を掛ける。
……彼女が食べ始めたのを見て、私たちもフォークを手に持ち、食事をいただいた。
……彼女の言う通り、毒は入っていなかった、味もそこまで悪くはない……が、あまりおいしく感じられなかった。
「それで……君たちの答えを聞く前に、少し話をしよう」
「……話?」
食事を食べ進めていると、タイタンが食べながら会話を進めてきた。
「我々ロードモンスターが人間を進化させ続けている理由……それは単に仲間を増やすだけではない……言わば、『慈善事業』だよ」
「……慈善事業?」
「あぁ、前にも言ったが、人は欲望のために動いている。我々ロードモンスターは……進化直後に欲望を発散させて、『ほとんど無欲』にさせるんだよ」
「ほとんど……無欲?」
「そうさ、無欲になった生き物は……言わば完全体だよ」
「……」
完全体、その言葉に、私は違和感を覚えた。
何故なら……私たちを助けてくれたムーンさんは、進化してしまった自分に不満を抱いていた。
そして……自殺願望も持ち合わせていた。
そんな人も含めて……完全体だというのだろうか?
「その顔、違和感を持っているね? そうだよね、でも、欲望なんて持っていたって仕方がないだろ? 欲望があるから犯罪は起きるし戦争も起きる、そんな哀れな存在になるくらいなら……無欲な存在の方がいい……そう思わないかい?」
……私は憤りを感じ、フォークをテーブルに叩き付けた。
「……人を襲って、無理やり進化させるのが……慈善事業だって?」
「あぁ、そうだよ」
奴は怯みを見せることなく、食事を進めていた。
「……あんたらのやっている行為は……慈善事業なんかじゃない、ただ『自分の価値観を相手に押し付けている』だけだ!!」
……私は心の中で思ったことを、大声で口にした。
……すると奴は、フォークを置き、口を拭いて、立ち上がった。