第60話 城
「アニマさん! そろそろですよ!」
「そうみたいだね!」
教会を出発し、しばらく走っていると、辺りは雪で覆われ始めた。
……標高が高くなってきたのか、息苦しくも感じる。
それでも私は、足を止めなかった。
理由は勿論……答えを伝えに行くためだ。
「アニマさん! 城が見えてきました!」
ロープがそんなことを言ってきたので、ふと頭を上げると、黒い外壁が目立つ城が確かにそこに建っていた。
遠目であの大きさ……周りは同じ背丈の木々で埋め尽くされていて、確かにこれだとふもとからでは気づかない。
「……いよいよ来ちゃったね」
「……はい」
ここまで来てしまった以上、もう後戻りはできない……それはロープもわかっている……と思う。
「それじゃ、ここからは歩いていこうか」
「はい!」
ロープが私から降りたのを確認し、人間の姿に戻った。
……改めて城を見ると、私の目には、巨大な怪物のように見えた。
その怪物に……私たちは向かおうとしている……。
「……ロープ、正直に言っていい?」
「……なんですか?」
「……ものすごく……怖い」
……私はロープに率直な感想を述べた。
答えを伝えに行くだけなのだが、きっと簡単には帰してくれないだろう。
どんなことをされてしまうのか……私たちは無事に帰ることができるのか……ロープがロードモンスターになってしまったら……。
色んな考えが脳内に再生されている。
「……アニマさん」
「……何?」
「実は……私も怖いです。アニマさんがロードモンスターになってしまったら……どうすればいいのかなと」
「……私の心配?」
……すると、ロープは私の手を掴み、跪いた。
と、突然どうしたのこの子!?
「……アニマさん」
「な、何? ロープ」
「私……その……アニマさんの事が……」
「わ、私の事が?」
な、なんなの? これって……もしかして……そういう事?
いやいやいや、ないないない、だって私たちは同じパーティーの仲間ってだけでそれ以上は……ってそういう考えはどうなんだ。
私たちは確かに信頼し合ってるけど……別に……。
「あ、あのさ、ロープ……」
「……なんですか?」
「その……その話は、城から出てふもとに戻ったらにしようよ……ね?」
……私は理にかなってはいるが、事を先送りにするようなことを言ってしまった。
……正直、私にはよくわからない、だから……ふもとに戻るまで、少し考えさせてほしい……かな?
「……そうですね、今は答えを伝えるのが先ですよね」
ロープは私の言葉に納得し、手を掴んだまま立ち上がった。
「……では……答えは……ふもとで」
「……うん! ……それじゃ、行こうか」
「……はい!」
私たちは手をつなぎながら、城へと歩き出した。