表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/68

第53話 迷い

 宿に戻り、体を清めるため、大きめのタライと布を調達した。

 タライに水を入れ、部屋に持ち込む。

 浴場は先ほどの騒動で閉まっており、街も後片付けに追われていた。


「……じゃ、体……洗おう、ロープ」

「……はい」


 お互いに服を脱ぎ、まずはロープの番。

 ロープを床に座らせ、私は布を濡らし、彼女の背中を吹く。


「いっ……」

「あ、ごめん……」

「だ、大丈夫です……」


 ロープの体は……傷だらけだった。

 ……私が守り切れなかったばっかりに……ロープは傷だらけだ。


「ごめん、ロープ……」

「何故謝るんです?」

「いや、私がしっかりしていれば、ロープが傷だらけになることはなかったし……」

「……アニマさんのせいじゃありませんよ」


 ロープは私を擁護してくれるが……彼女の体が、私の不甲斐なさを物語っている。

 もっと……頑張らなきゃ。


「……アニマさん、それより、タイタンさん……あのロードモンスターの……要求ですが……」

「……」


 あちら側に入るか否か……か。


「ロープは、どうしたい?」

「もちろん……入りたくなんかないです」

「……だよね」


 ロープならそう答えると思っていた。


「聞くまででもないと思いますけど……アニマさんは?」

「……」


 聞くまででもない……か。

 ロープには私の答えが分かっているかのように聞き返す。

 「もちろん、ロープと同じ答えだよ」……そう言いたいのに、私は……迷っている。


「……アニマさん?」


 ロープは返答のない私に対し、疑問の声を上げた。

 ……私は背中を吹き終え、ロープの正面を吹き始めながら……こんなこんなことを問いかけた。


「ねぇ……ロープ……あいつの言ってたこと……あながち間違いじゃないと……私は思ってしまってる……って言ったら、どうする?」


 ……私の質問に対し……ロープは驚愕の表情を浮かべていた。

 まぁ……当然か。


「……ごめん、今の質問、聞かなかったことにして……それじゃ、私の体……拭いてくれる?」

「……はい」


 私が床に座り、布を差し出すと、ロープはそれを受け取った。

 ……ロープの手は震えていた。

 怒りなのか……悲しみなのか……そこまでは分からなかったが、何とも言えない気持ちなのは分かった。


 ロープは早速、私の背中を拭き始める。

 ロープはまるで小動物を撫でるように、私の背中を磨いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ