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第40話 「もうやりたくない」

「……朝か」


 気が付くと、光が差し込んでいた。

 どうやら、あのまま寝てしまったようだ。

 ベッドを見ると、ロープの姿は……無かった。

 どうやら、私を置いて、冒険者の仕事に出かけたようだ。

 ……無理も無いか、役立たずな私を置いていった方が、今は最善だ。


「……着替えるか」


 立ち上がり、服を着替えようとした……その時。


「アニマさん! 大変です!」


 部屋のドアが思いっきり開き、ロープが出てきた。


「……ロープ」


 ロープは驚愕の表情をしている。


「街でドラゴンが暴れているって! 早く行きましょう!」

「……」


 ドラゴン……あの時の奴だろうか?

 早く行く……か。


『殺人ねぇ……でも、君たちは進化したばかりのロードモンスターを殺してきたじゃないか』


 ……嫌だ。

 私は……もう……殺したくない、やりたくない……。


「……アニマさん?」


 私は殺人鬼だ、殺し屋だ。


『へへ! これで報酬ゲットだ! おらぁ!!』


 カロン……あいつは楽しみながら殺していた。

 私も根本ではあいつと同じだ。

 きっと力に溺れて……殺しを楽しんでいたんだ。


「……アニマさん!」

「……ロープ?」


 ロープは私の名前を叫び、体を揺さぶった。


「早く行かないと……犠牲になる人が沢山出てしまいます!」

「犠牲……」


 犠牲になる人……でも、それを止めるには殺さなきゃ……。


「もう……嫌だ」

「……アニマさん?」

「もう……やりたくない……殺したくない!!」


 私はロープを吹っ飛ばし、その場でしゃがんだ。


「もう嫌……この力も……なにもかも……もう嫌なの!!」


 私は今の思いを枯れるような声で叫んだ。

 もう殺したくないし、傷つけたくない。

 ……そうだ、最初から何もしなければいい、何もしなければ、誰かを傷つけることも無い……。


「……アニマさん」

「もう、私の事なんか放っておいて……放っておいてよ!!」

「……」


 私は耳を抑え、無になろうとした。

 これでいい、こうすればよかったんだ。

 もう……変身することも、戦う事も……。


「……ごめんなさい、アニマさん」


 ロープの声が聞こえた気がするが、何を言っているのかわからなかった。

 だが、何を言いたかったのか、すぐに分かった……塞いだ耳が剥され、服の襟を掴まれたからだ。

 そして……私の頬に熱を帯びたロープの手のひらが当たった。

 部屋の中に、空気が破裂したような音が響き渡り、私の頬は、鉄板のように熱くなった。

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