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第38話 殺人鬼

「この愚か者!!」

「も、申し訳ございません!!」


 とある場所、カーリナはローブの女に詰められていた。


「覚醒者が出たのはいい……だが、その者が瞬く間に殺され、その上に謎の力を持つ者に敗北して戻ってくるとは……お前はロードモンスターの恥さらしだ!!」

「申し訳ございません! 申し訳ございません!!」


 カーリナは自分の罪を認め、床に頭をこすりつけるも、ローブの女はそれを許さなかった。


「……次の失敗は認められん、勝つまで戻ってくるな!!」

「……はい、仰せのままに!」


 カーリナはドラゴンに変身し……外へと飛び出した。


「……冒険者め」


 ……ローブの女は、天井を見上げ、そんなことを呟いた。



 オーガのロードモンスターが倒された後、私たちはまっすぐ宿に戻った。

 その前までお風呂に入りたいとか、何か食べたいとか、欲望があったはずなのに……完全にそぎ落とされたような感覚だ。

 何もしたくない……何も考えたくない……。

 私は部屋の隅でただ座っていた。


「……アニマさん、そろそろ寝ませんか?」


 ……ロープは下着姿で、そんなことを言ってきた。


「ごめん、ロープ……先に寝てて」

「……はい」


 ……ロープの声は暖かく聞こえたけど……今の私は冷たく冷え切っている。

 私は……何のために戦っていたんだ?


『殺人ねぇ……でも、君たちは進化したばかりのロードモンスターを殺してきたじゃないか』

『ぐはぁ……はぁ……はぁ……俺は……もっともっと食べたいんだぁ……』

『お水……水……水飲みたい……喉乾いた……お水が……お水が欲しいのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

『ねぇ……アタシを愛してよぉ……カロン……』


 ……ふと、過去に倒したロードモンスターの言葉を思い返す。

 ……あのドラゴンの言っていた通り、私は殺しをやってきた。

 みんなを守るために戦っていたと……そう思っていたのに、私がやっていた行為は……ただの殺人だ。

 端から見れば、殺人鬼と変わりない。

 私に戦う価値なんてあるのだろうか?


「……あの、アニマさん」

「……なに? ロープ」


 ベッドに潜ろうとしていたロープが、私に声を掛ける。

 ……考え事をしていた私はかなり愛想悪く返事をしてしまった。


「その……あんまり思いつめないでくださいね」

「……ありがとう、ごめんね……」


 ……ロープは私を励まして……ベッドに潜った。

 こんな状況でも、ロープは逞しく思えた。

 何を言われようとも、前向きで戦うロープ……それに引き換え私は、ショックから立ち直れないでいる。

 ……いつしか彼女は言っていた、私こそが勇者様だと。

 でも、私はそうじゃない、ただ偶然力を手に入れただけの、殺人鬼だ。

 そんな私に……勇者様なんて大層な名前を名乗る権利なんてない。

 私は……カロン達の言う通り、動物に成るしか能のない女なのかもしれない……。


「ねぇ……お母様……私……どうすればいいの?」


 星空を見ながら、そんなことを呟いた。

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